データ資本主義とは?貨幣と企業の役割が激変するストーリーを読み解く

ポスト資本主義とはどんな世界であるべきか

こんにちは!Jimmyです。

資本主義の限界が叫ばれるようになり、至るところでポスト資本主義の世界について議論がなされるようになりました。

 

現在の資本主義社会の問題は

貧富の格差拡大と、分配の不平等、そして拝金主義による持たざる者への疎外です。

 

ポスト資本主義を議論するにあたっては、この問題を解決(改善)でき得るという前提で進められる必要があります。

 

一部では、社会主義を見直したり支持し直したりする層も出てきています。

2016年のアメリカ大統領選挙の時、民主党候補の中でもバーニー・サンダース氏の存在感が世間を驚かせることになりましたが、2020年に入りさらに勢いが増しています。

世界の秩序が危ぶまれるような過激な思想や、テロ組織なども、資本主義社会に対する不満とは切り離せない問題です。

 

様々な考え方がある中で、上記のような問題を解決しつつ、より良い社会システムを作り上げるには、どうしても「市場」という概念は欠かせないのではないかと思います。

多くの議論では市場は不可欠なものとして考えられています。

 

そんな中で、データ資本主義という考え方が、ある程度現実味のある世界となりつつあります。

市場の役割強化、そして現在の資本主義の象徴とも言うべき貨幣中心の価値体系からの変革をもたらすものです。

そこで、今回は、データ資本主義という考え方について焦点を当てていきます。

現行の資本主義体制を根こそぎ覆すようなものではありませんが、貨幣と企業の役割に変革をもたらすという意味では、大きなインパクトがあるのではないかと思います。

データ資本主義とは?

データ資本主義とは、その名の通り、データを資本として価値と利益を生み出す経済システムです。

従来、そして現在でも、当たり前のように資本といえばお金(貨幣)のことを指します。

貨幣に代わってデータが価値の中心になるという考え方です。

今回は、『データ資本主義』という著書の内容を参考にします。

 

著書:データ資本主義 (ビッグデータがもたらす新しい経済)

著者:ビクターマイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ

 

最初に言ってしまいますが、依然として本書の考察をもってしても、貨幣に”完全に”代わり得るような価値体系について明確に示されているわけではありません。

しかし、現在のビッグデータや、AI技術などの進化の状況を踏まえると、データの重要性が飛躍的に高まっていることは事実です。

 

そういう意味では、従来よりも、貨幣の果たす役割が縮小するということは十分に考えられることであり、現に進みつつあることです。

一つの考えられるストーリーとして、データ資本主義について認識しておくのは今後の可能性を考える上でも大変役に立つと思われます。

 

データ資本主義で起こる大きな変化

データ資本主義

本書にならい、「データリッチ市場」という言葉を使います。

データが豊富にあり、有効に利用できる状態にある市場、データ資本主義を成立させる前提となる市場のことです。

データリッチ市場では、貨幣の役割が縮小し、企業のあり方も変わることが予想されています。

そうすれば、分配のあり方、ひいては貧富の格差拡大といった問題への取り組み方も変わる可能性があります。

以下に詳しく見ていきます。

 

貨幣の役割が縮小する世界

価格に全ての情報を押し込むことの限界

人は、市場でモノやサービスを売買しています。

買うべきか(売るべきか)は、”情報”を各人が判断して意思決定する必要があります。

しかし、判断に必要な情報を全て手に入れることは難しいと言えます。

商品(サービス)の数も、特徴も、山ほどある中で、何かの基準をもとに判断することになりますが、全てを把握してから購入するわけではありません。

 

そこで、当たり前のように尺度となっているのが価格です。

多くの場合、価格を見て価値を考えるはずです。

色々な情報を見て考える中で、価格という一つの軸に圧縮して考えると判断しやすくなります。

こんな機能があって、これくらいの大きさで、こんないいことがありそうだ、、、

それを踏まえて例えば3000円なら妥当か、買うべきかどうか、となるわけです。

 

しかし実際には、数え切れないほどの情報を価格に凝縮してしまっているため、判断を誤ること、買って後悔するということも頻繁に発生します。

全ての情報を価格に圧縮するという方法は不完全と言えます。

多くの詳細な情報が抜け落ちていることがほとんどだからです。

 

買う側の好みや置かれている背景、売る側の品揃えの情報などは、お互い細部までは伝わりません。

価格には詳細情報は盛り込めないのです。

また、1000円と980円では心理的な印象が違いますが、960円と980円はほぼ同じに見えるものです。

売る側がわざと価格を最初に吊り上げておくことで、正常な価格判断ができないという事態もあり得ます。

 

売買をするときの情報不足と判断の誤りという観点で、もっと大きい話をしてしまえば、株価や金融危機などにも繋がります。

リーマンショックの原因となった、サブプライムローン問題などもそうです。

格付け機関ですら、細かい契約の中身などを見逃してしまったため、信用力の極めて低いローンが組み入れられた債券に高格付が付与されてしまいました。

当然、多くの投資家は中身をしっかり確認することなく、格付けを頼りに価格(ここでは利回りなど)を見て購入を決定し、危険性を誤認したまま損失を被ることになりました。

 

この情報の不正確さと、価格への圧縮というやり方を変えるのがデータ資本主義の世界です。

豊富なデータが市場を駆け巡る状況では、アルゴリズムを組み合わせれば、随時、最適な取引相手、条件を見つけることが可能になります。

 

個人の買い物で言えば、AIシステムが過去のデータをもとに学習を繰り返します。

興味がありそうな商品(サービスの相手方)を探し出し、環境まで配慮してくれる、

売り手と自動的に交渉し決済条件を指定して、割引などの条件まで引っ張り出してくれる、

しかも、自分で検索するより多くの条件を考慮してくれて、心理的な判断ミスも排除できる、スピードも速い。

 

これがデータリッチ市場になると実現できるということです。

 

小売りや旅行、金融投資などで、データを利用したマッチングシステムが期待されます。

誤解や誤判断も減ることが予想されます。

また、エネルギー分野も物流も、教育でさえ、データ主導で最適なマッチングができるようになるでしょう。

すでにいくつかのスタートアップが、様々な分野で、マッチングシステムの開発に成功して企業などへの導入も進んでいます。

婚活マッチングアプリなどもかなり進化しているようです。

 

データで支払うという可能性

将来的には、取引の支払いに貨幣ではなくデータが使われる可能性もあると言えます。

(もちろん、多くの人にとって価値があるデータであること、交換コストも低いことが前提。)

 

想像が難しいかもしれませんが、実際、今でもGoogleを価格的にはタダ(無料)で利用しているように感じていますが、考え方によっては、Googleの各種サービスを利用するのに、個人情報で支払っているようなものです。

事実、膨大な個人のプライバシー、行動に関するデータを集め、それが更なる利益をあげるための企業活動に反映されています。

 

なおデータは、特性上、塩や金貨と同様に、交換を促進するものではありません。

そのため、貨幣は引き続き、交換促進という意味で役割を担い続けることは変わりなさそうです。

 

データを集めて、機械学習させることにより、より精度を上げるという循環を考えれば、膨大なデータを持っている企業が有利になります。

 

これは著者の独自の発想だと思いますが、集めたデータで支払うということも考えられます。

後で、独占対策でも触れますが、自治体や誰もがアクセスできるところに、集めたデータを公開する(もちろんプライベートな関連付けができないようにしてから)という価値の移転の方法もあり得ると本書では指摘されています。

 

企業のあり方が変わる

データ資本主義

企業の市場化

企業と市場で決定的に違うところは情報の流れ方と意思決定のプロセスです。

市場は、誰もが参加可能でアクセス可能、そして意思決定はそれぞれの買い手(売り手)が判断をします。

それに対して企業では、垂直的に情報がトップのところに集約され、そしてトップ含めた上層部で様々な、そして複雑な意思決定が行われます。

当然、企業のトップが人間である以上、情報を全て把握することはできません。

判断が間違ってしまえば、企業としては致命的な損失をもたらすことにもなりかねません。

 

それに比べて市場では、それぞれの局面で、売り手と買い手により取引が成立し、先ほど述べたような機械学習の進化によって、正確なアルゴリズムによる意思決定のサポートが期待できます。

そういう意味では、従来型の、トップが多くを意思決定するやり方よりも効果的であると言えます。

そのため、「市場のシステムを取り入れた」運営をする会社が増えていくことが予想されます。

 

意思決定にアルゴリズム、機械学習を導入して、機械的な意思決定をするというのも一つの方法ですが、さらに組織に市場的な要素を持ち込むということも考えられます。

 

スポティファイという会社の組織を例に考えます。

当社は、ストリーミング配信会社で、無料で数千万曲もの音楽を聴き放題で聴くことがができるというサービスで、「iTunesを破壊した」とも言われているほどの成長を遂げた会社です。

 

既にご存知の人もいるかもしれませんが、この会社は非常にユニークな組織体制があります。

指揮命令型の企業とは正反対の組織です。

スクワッド(分隊)という単位で、商品(サービス)の特定の部分や特定の活動について完全な責任を負います。

ビジョンが示され、あとはそのスクワッドで完結する必要があります。

上司というものはいません。

プロダクトオーナーがいて、ゴールや納期を管理しますが、強制力は持ちません。

 

各人が、データをもとに自分で根拠を見つけ出し、スクワッド(チーム)内に共有し、関係している分野の専門担当者を巻き込みながら進めていきます。

各々が自ら考え、必要に応じて協働する人を見つけながら仕事をしているようです。

会社内に市場があるようなイメージですが、各人が非常に自律していることが特徴です。

全ての業界で通用するものではないかもしれませんが、急成長している実績からもわかる通り、音楽ストリーミングの事業においては大変機能したと言えるでしょう。

 

さらに進んで考えれば、このような仕組みが進化していけば、特定の企業の従業員ではなくてもいいわけです。

必要な機能を満たし、課題をクリアするために、都度市場からマッチングを通じて適任者を見つけて任せるということも考えられます。

つまり、会社の従業員は社長1人というパターンでも十分に機能し得るということです。

 

人間味を生かすという企業のあり方

機械学習、AIを取り入れながらも、人間にしかできないことがあることも確かです。

洋服をアルゴリズムで選んで、顧客の好みの洋服を配送するサービスを展開するスティッチフィックスが良い例です。

 

アンケートや、事前に顧客が登録した好みに関するデータに加え、様々な分析により個人の好みを割り出す、かなり高度な分析機械学習を取り入れた企業のようです。

顧客は、選ばれた服が気に入らなかったら返送するのですが、そのフィードバックもデータとなり、よりアルゴリズムの精度が増していきます。

 

そこに加えたのが「人間味」という軸でした。

当社には、数百人のパーソナルスタイリストが所属しています。

パートタイムや在宅勤務など形態は様々です。

 

アルゴリズムが洋服選定の支援はしてくれますが、アイテム選びの最終権限はスタイリストが持ちます。

ポイントは、送付するときに一言メモを添えることです。

人間味があるため、顧客は、自分が大切にされていると感じ、フィードバック率も上がったようです。

 

さらに、人間のスタイリストは、機械よりも考え方やテイストがはるかに多様に、柔軟に考えられることも成功しているポイントです。

確かに、機械では「ちょっと遊び心や冒険を加えてみました!」のような発想は難しいのかもしれません。

 

データ学習と人間の発想をうまく組み合わせて成功した例です。

 

大手金融業界の再編

企業などの信用力を考える際に、現在では、大手銀行からの融資実績や、有名ベンチャーキャピタルからの投資実績などが有効な材料とされています。

一方、豊富なデータが溢れる社会では、そのような大手銀行やVCのネームバリューも衰退することが予想されます。

 

信用の中心にいた金融機関が、データを豊富に扱い、アルゴリズムを利用した企業に一部の業務や役割を取って代わられる可能性があるということです。

金融機関やVCが持つ情報、判断だけが貴重であることはなくなり、あらゆるデータ、分析により評価が可能になることが予想されます。

 

既に、アルゴリズムと機械学習をもとにP2Pレンディング(金融機関を介さない貸し手と借り手のマッチング)を提供するスタートアップも出てきています。

証券会社においては、AIに学習させて、人よりも優秀なアドバイザーが登場していて、それを扱うフィンテック企業が台頭しています。

 

売却損の発見機能を売りにしている企業もあれば、自分と好みが似た投資家の投資傾向を学ばせ、銘柄を推薦してくれるような機能を提供するフィンテック企業もあるようです。

これは人間には対応不可能な領域ですので、機械に任せた方が効果が高いと言えるでしょう。

 

データ資本主義が広がる条件と規制

データ資本主義

データ資本主義の可能性と、機械学習の凄まじい効力を書いてきましたが、心配されるのは独占、データの集中です。

今でも、GAFAへのデータ集中、そして利益の集中が懸念されています。

それほどデータの力は大きいと言えます。

 

今後は、ますます政府による規制は必要になるでしょう。

そもそも、冒頭に書いた通り、今の資本主義に取って代わるためには、貧富の格差の拡大、分配の不平等、持たざる者への疎外が改善され得る必要があります。

 

データ資本主義では、データを大量に持っている方が有利に決まっています。

つまり、大手で顧客を多く抱えているほど有利ということになります。

すると、独占が進みやすくなります。

 

そうなれば、現在の資本主義体制から改善が期待できるとは言えません。

そこで著者が提唱しているユニークな方法が、データ納税と、累進型データ共有命令です。

 

データ納税とは、まさにデータを政府など然るべき機関を通じて公開するということです。

例えば、車載センサーから集めたデータを匿名処理して国民に還元、事故多発地点の特定に役立てたりするなど、有益なデータを共有するための考え方です。

 

累進型データ共有命令は、市場シェアなどに応じて割合を決めて、データを共有させるという方法です。

こちらも、包括的にアクセスできるようにし、中小事業者でも利用できるようにすることで、データの独占状態を防ぐ役割が期待されます。

 

最後に

データ資本主義と銘打たれたものの、完全に従来の金融資本主義からの脱却が描かれているわけではありません。

決済手段(交換促進手段)としての貨幣の力は、まだ残ることが予想されます。

依然、データで支払うという現実味や利便性、効果は不明なところが多いことは事実です。

 

しかし、データと機械学習により、マッチングのあり方、市場での意思決定、働き方は変わってくる可能性は非常に高いと言えます。

その意味において、従来の資本主義が終わろうとしているのは確かです。

 

なお、貨幣の衰退により、株式投資などをしている人たちが大きく損をすることになる、といったことが本書では記載されていますが、直接的な(納得できる)根拠が書かれていないので、今回は扱わないようにしました。

 

完璧な未来予測をすることはできませんが、このようなデータの価値が高まる世の中にあって、

今後どんな変化が起きていくのかを考えるのに大変有効であり示唆に富んだ本であることは間違いありません。

今回は、重要な考え方の一部のみの紹介となりましたが、興味がある方はじっくり読んでみてください。

 

書籍はこちら

データ資本主義

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

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