【書評・感想】羊と鋼の森 宮下奈都

<タイトル> 羊と鋼の森 

<著者>   宮下奈都

1967年生まれ、福井県福井市出身の小説家。
上智大学文学部卒業。2013年より1年間、北海道に山村留学を経験。
2016年、本書で直木賞候補、本屋大賞受賞。

あらすじ

羊と鋼の森は、ピアノの調律師である主人公外村が、周りの人たちとの関わり合いの中で成長していく物語です。

外村は、北海道の田舎に生まれ育ち、特に何かに夢中になることもない平凡な生活を送っていました。

 

17歳のとき、偶然学校にて、ピアノの調律師である板鳥と出会います。

板鳥の調律に心を奪われた外村は調律師への道を決意します。

 

板鳥に勧められた専門学校を卒業した後、地元北海道に戻り、板鳥が勤務する江藤楽器店に就職します。

学校で一通りの知識や技術を学んだものの、板鳥のような調律には程遠く、お客さんの希望する調律が出来ているか自信を持てず、不安になる日々が続きます。

 

理想の音を求めてもがく様が、森の中を彷徨うような描写で表現されています。

羊と鋼の森

江藤楽器店には、板鳥と外村の他に、個性豊かでありながら繊細な2名の先輩社員が在籍しています。

そのような先輩たち、そして江藤楽器の得意客として登場する双子姉妹との関わりの中で、外村は、演奏者本位の調律をすることの重要性や、先輩たちの調律に対する考え方、ピアノとの向き合い方に触れていきます。

 

順調に成長できない中でも、外村は決して理想の調律に対して諦めたり妥協したりすることなく、謙虚に学ぶ気持ちを絶やさずに向きあい続けます。

理想の調律を目指して音の「森」を彷徨う過程の葛藤や発見、出来事が静かな川の流れのような筆致で描かれています。

こんな人におすすめ

  • 音楽、芸術に造詣の深い人
  • 挑戦を続けている人

感想

私は、音楽や芸術に対して全く造詣のない人間です。

小説も普段はあまり好んで読むことはありません。

 

読書を続けていると自分の好きなジャンルに偏りが出てくるので、敢えて普段手にしないような小説、ストーリーを選びました。

何か新しい刺激があるかもしれないと考え、時々このようなことをします。

 

今回はピアノの調律師の物語です。

音の描写や繊細なピアノの特性などは、想像しても何となくしかわかりません。

序盤は少し退屈になりながら読んでいました。

羊と鋼の森

私の実家にも以前ピアノがありました。

妹が十数年の間習っていたものです。

 

本書を読みながら、こんなに真剣にピアノに向き合う調律師の人が家に来たら、逆にお客側が困るだろうと考えながら読んでいました。

 

通常、調律などは、音を機械的に合わせるのが仕事で、それだけで十分ではないかと思うのですが、それでは満足しないお客もいるようです。

音の波をとらえるといった高度な表現はどうにも理解が追いつきません。

 

しかし、一気に読み切ることができたのは、余分な情報が一切なく、川の流れのようにストーリーが心地よく頭に入ってくるような描写のためだと思います。

 

特に大きなストーリーの展開や大どんでん返しがあるわけではありませんが、不思議な余韻に浸ることができます。

それは、主人公の外村の考え方、行動に重要な成功の要素が詰まっているからです。

 

主人公である外村は特に才能が際立っているわけでもなく、いたって平凡な感じの人間であると私は受け取りました。

そんな人間が、調律に魅了され、音に魅了され、苦難の道も一度も諦めたり妥協したりすることなく、ただひたむきに先輩や双子の姉妹、お客さんの声に耳を傾け、時には自ら教えを請い、葛藤を続けていく姿が印象的です。

 

一介の調律師であるにも関わらず、お客さんから担当を変更するよう要請されたり、苦情が入るということも外村はたびたび経験します。

なかなか真似できないなと感じることは、体裁を気にすることなく、ただ、どうすればお客さんの希望する音に近づけるのかを純粋に追い求めている点です。

 

読んでいて、自分だったらもっとうまく、要領よく振舞っているだろうなと思えるところが何箇所もありました。

担当替えなどは、普通に考えれば大変不名誉で恥ずかしいことです。

 

普通なら、それを避けるための方法をまずは考えるでしょう。

お客さんに不安を持たせないように自信があるように振る舞うこと、質問された時の回答の語尾は必ず言い切ること、などのスキルを動員してのぞむことでしょう。

羊と鋼の森

外村の態度、考え方は、道を極める者にとって重要な過程であることも途中から認識するようになりました。

終盤で、「外村くんみたいな人が、たどり着けるのかもしれないな」といつも辛口の先輩社員からのひとり言のようなコメントがあります。

 

一見褒めるところのない、要領を得ないような人間ですが、ほとんどの人が続けることができないことを継続している、ということが全てです。

いつもと違った分野の本を読もう、ということで選びましたが、私が今まで学んできたこと(好んで読んできたジャンル)、成功の法則や正しい考え方と相通ずるものがあることは興味深いです。

 

音楽経験も無く、取立てて際立った能力もない人間。

 

それでも、大成の予感を感じさせられるのは、

調律に対する「情熱」を持っていること

演奏者を常に意識し、「演奏者のため」(お客さんのため、世の中のため)の調律を愚直に実行すること

常に「謙虚」で「聞く姿勢」、「学ぶ心」を失わないこと

「心が純粋」、「誠実」であること

最終的な「目的を見失わず」、「逃げずにやり通す」こと

 

いずれも成功者たちが実践してきた大切なことです。

 

一見不器用で能力もなさそうな外村が、これらのことを全て実践しているのです。

自分の好みと全く違ったタイプの本から、予想しない形で、大切な考え方を再確認させられることになりました。

羊と鋼の森

興味のある方は是非読んでみてください。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

追伸:他の書評について

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