ウイグル弾圧に見る中国の不確実性と日本の立ち位置

こんにちは!Jimmyです。

米中の対立が深刻化する中、特に中国の今後の成長の行方に注目が集まっています。

今回は、

①米中対立による軍事的、経済的な駆け引きの実態と中国への影響、

②中国のウイグル人弾圧問題をとりあげ、これこそ、米中対立以上に中国の将来において最も不確実で危険な要素であること、

③最後に、日本の立ち位置について考えます。

日高義樹さんの著書「2020年習近平の終焉」

私は、中国に縁あって、7年半赴任することがありました。

その間、様々な角度から中国を取り巻くニュースに触れ、また現地の人、政府、中国企業、日系企業の方とも、中国の現況や将来についてお話しする機会がありました。

 

実際に赴任して、現地の状況を肌で感じてきた個人的な見解として、

基本的には中国の経済成長について、日本で言われているような崩壊シナリオは無いと思っています。

 

一方で、中国崩壊シナリオを声高く唱える人たちの意見も参考にしたいと思い、先日、日高義樹氏の著書を読みました。

「2020年「習近平」の終焉」という題名で、アメリカが2020年までに、中国共産党を崩壊に追い込むというシナリオを主張されています。

 

簡単に私の解釈で要約とその見解を示します。

 

その前に簡単に著者の紹介です。

本書の著者日高氏は、御年84歳、NHKの社員時代にアメリカ駐在を経験されワシントン特派員、ニューヨーク支局長などを歴任。その後も、ハドソン研究所の主席研究員などに就任され、アメリカで生活をされています。

アメリカ政府の要人への長年の取材と研究を通して、アメリカ政府筋との強力なコネクションと知見をお持ちです。

 

そのような人が、中国に対してどのような見方をしているのか興味がありました。

アメリカは軍事力と経済力の両方面から中国を崩壊させるというシナリオで、まさにトランプ大統領が陣頭指揮をとって、目下進行中という内容です。

 

加えて、中国が現状置かれている諸問題についても取り上げています。

従来の対中友好モードは無くなり、中国を敵性国家として認定したアメリカの今後の行動に注目が集まります。

 

日高氏が描くシナリオを、軍事面と経済面の両方から解説します。

①軍事面

まずは軍事面から。

アメリカは、トランプ大統領就任以降、軍拡への道を再び歩み始めました。

以下の施策により、中国に対して圧倒的な軍事力を誇示し、中国が目論んでいるような、台湾侵略やその他の軍事活動に抑止力を持たせることができるとしています。

ミサイルの性能、監視力強化

  • 長距離爆撃機、ステルス機の性能強化。
  • 的確に位置を誘導するため、ミサイルにGPS、赤外線レーダー搭載。
  • 宇宙からの監視により、中国の要人の位置を24時間体制で監視。
  • 迎撃の許可体制を短縮化させ、大統領の許可をスムーズに取得できる体制に変更。
  • 現状中国には無い、高度1万メートルを超える目標物を攻撃できる技術。
  • グアムの戦闘機十数機だけで、中国全体で作り上げた核ミサイルの威力を上回るとのアメリカ予測。
  • 日本の米軍基地は、対中最前線の司令部としての重要な位置付け。

アメリカ海軍の優位性

  • 敵を探知するセンサー、レーダーの向上。
  • 無人艦載機の開発に成功。
  • 潜水艦隊の権限強化。太平洋主戦場の海中、海底への変化に対応。
  • 通信システムの改善。深海まで通信できる超低周波通信システムの開発。
  • 太平洋における中国の動きに対応。(100近くの中国潜水艦が太平洋に常置されている)

 

私の見解

  • 軍事力については、冷戦時代を経て、長年続いているアメリカの核技術は強力であることに異論はありません。
  • 近年でも中東などで実戦を経験しており、実戦経験の無い中国に比べて、軍の行動力の違いも明らかです。
  • よって相当な抑止力になることは間違いないと思います。
  • かなり詳細にアメリカの軍の現状と考え方について研究されている印象でした。大変参考になります。

 

②経済面

TPP反対や、関税政策によって、米中の貿易戦争に発展しています。

2018年の年末に中国は、アメリカの自動車の輸入関税15%引き下げと、大豆300万トンの輸入を承諾しました。

日高氏は、習近平としては、この条件を飲むしかなかったとしています。

 

アメリカとの貿易戦争によって、中国は窮地に立たされていることを強調しています。

それに加え、共産党一党独裁の歪みが顕著になっているとしています。

貿易戦争を通じて、中国共産党を崩壊させるというシナリオをも描いているのです。

 

本書に記載してあることは以下のような内容です。

  • 2015年、中国のGDP成長率は1.1%減少し、エネルギー消費の伸びは1.4%減った。そもそも以前から内部崩壊の兆しがある。
  • 外貨保有高が減少している。短い期間で4兆ドルから3兆ドルに、1兆ドルも減少している時期がある。
  • 中国の金融市場は、中国国内企業の債券が暴落、長期的な調達が困難になっている。
  • 未だに6.5%成長しているのは、金融機関の活動が活発だから。政府から資金調達した銀行が、高い利率で貸し付けているので利益を出しているが、ハイテク企業などは火の車状態。
  • このような状況下、アメリカからの制裁により、中国経済は破綻する。
  • SWIFT(国際間の資金決済に使用される世界共通のシステム)の使用を禁止させることで輸出決済を封じることができる。
  • 中国はダンピング輸出と技術の盗用だけのバブル国家。

 

私の見解

  • 軍事面とは異なり、経済面での本書の主張は、かなり無理があるという印象です。
  • まず、外貨保有高の減少を指摘していますが、中国の外貨保有高は3兆ドルでも、依然として世界1位です。アメリカの国債の最大の買い手は中国と日本です。借金だらけなのはアメリカで、中国は純債権国です。
  • GDP成長率の鈍化は、ある程度は想定の範囲内です。急激なインフレを阻止するべく、土地の供給や公共投資をコントロールしています。ジリ貧になっているわけではありません。
  • また、中国をダンピング輸出で成り立っている国であるため、貿易戦争によって大打撃を受けるという主張についても疑問です。そもそも中国のGDP成長を牽引しているのは、国内消費であり、外需の影響はごくわずかです。国内の消費の成長により伸びている国ということを認識するべきです。
  • 株価を見ても、ここ数年、暴落という現象は起きていません。
  • 米中貿易戦争が長引けば、両国に影響を及ぼします。中国だけが打撃を受けるということはあり得ません。例えば極端な話、アメリカの国債を中国が大量に売却すれば、アメリカへの影響は甚大です。

 

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③中国固有の問題

日高氏の著書を考察し、アメリカが中国に与え得る影響について、本書の意見と、私個人の見解を書きました。

軍事面での抑止力については、日高氏自身による、アメリカ政府筋からの取材により、かなり説得力のある内容が記載されている反面、中国の経済崩壊のシナリオは、かなり無理があるといった印象でした。

 

しかし、その他中国が置かれている状況で、本書でも指摘している、ウイグル自治区をはじめとする少数民族への弾圧問題は非常に重大な課題を含んでいます。

中国の経済成長は本物で、本書で指摘されているような、ただのダンピングによるバブル国家ではないと思っていますが、今後中国が、世界で覇権を取れるかと問われれば、難しいと思います。

ここに、中国が今後世界の立ち位置を決める大きな問題があります。

次に詳細を記載します。

中国が抱えた最も大きなリスク:ウイグル問題

ニュースでも度々報道されているように、中国には少数民族が多数存在しており、それぞれの文化や伝統、宗教感を持って生活しています。

今回はウイグル自治区を取り上げますが、中国には5つの民族自治区が存在しています。(内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、寧夏回族自治区、チベット自治区、広西チワン族自治区)

これら5つの自治区の面積は中国全体のほぼ半分弱に相当し、人数としては1割ほどを占めます。

 

自治区では、少数民族保護の観点から、独自の法律や習慣が認められていますが、その上には当然中国共産党がいます。

よって、自治区といえども、中国共産党の指導からは逃れられません。

 

ウイグル自治区への弾圧

ここ数年、ウイグル自治区に対する、中国政府の弾圧はかなり厳しさを増しています。

もちろん、表向きは弾圧ではなく、職業訓練や、集団教育による生活レベルの向上を手助けすることを目的としていますが、中身を見れば誰もが、弾圧であると認識できるでしょう。

参考記事:ウイグル自治区弾圧に関するニュースはこちら

 

そもそも、なぜウイグル自治区を中国は必要とするのか?

中国政府が、ウイグル自治区を重要視している最大の理由は、資源です。

 

付近の砂漠には、天然資源が眠っているとされており、それだけで中国全体の埋蔵量の約3分の1に達するようです。

エネルギー問題が叫ばれている昨今、絶対に手離したくない地域なのです。

 

ウイグル自治区の少数民族は、主にイスラム教を信仰しています。

過激な思想に走る可能性があるとして中国政府は大いに警戒しているのです。

親世代を強制的に、職業訓練所や刑務所に収容して、子供世代は集団の教育施設に入所させます。

 

教育施設とされていますが、脱走ができないように24時間監視され、周りは鉄条網で仕切られています。

民族の言語を話すことを禁じられ、中国語以外を話すと厳しく罰せられます。

民族のルーツから引き離し、共産党の教育を施されます。

 

これらは、中国ではほとんどニュースになることもありません。

中国の検索エンジン「百度」から、これに関するニュースや話題を検索してみましたが、全くありません。

 

言論や情報が規制されており、厳しく管理されているため中国内のメディアで扱われることはありません。

あったとしても、政府を中傷するような内容にはなり得ません。

 

民主主義を基調とする現代の世界的な風潮からして、これらの行為は弾圧そのものであり、世界に認められることはないでしょう。

事実、BBCニュースにて報じられて以降、批判を集める結果となっています。

 

日高氏の著書でも指摘されている通り、経済成長の鈍化に伴い、徐々に、財政が緊迫すれば、少数民族を抑えるために莫大な費用を使うことはできなくなる可能性があります。

少数民族による、独立の動きや、何らかの抵抗活動、反乱はいつ起きてもおかしくない状況にあるといえます。

 

これが、今後の中国において最も懸念される問題ではないかと思います。

資源や人口を一気に失う結果となれば、影響は小さくありません。

 

少数民族の問題は、中国の今後の成長において重要な問題であり、いつ爆発してもおかしくない火種となっているように感じます。

 

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難しい日本の立ち位置

日本は平和主義を掲げ、核を持たない国です。

国土も小さく、アメリカや中国のような大国ではありません。

核兵器が使用されるようなことはあまり想定はされないかもしれませんが、政治経済両面において、軍事力は抑止力以上の重要な効果を発揮します。

 

よって、日本は大国とタッグを組むしかありません。(もしくは複数の国と連携して立場を固める)

アメリカと組んでいるのが戦後一貫した日本の置かれた状況です。

 

日高氏の著書では、当然のように、日本はアメリカの同盟国として、米中が対立している以上、日中友好のような温和なモードはよくないと主張されています。

自動車関税は、日中友好の報復だとも指摘されています。

本書で指摘されていることを以下に引用します。

太平洋戦争後72年間、日本経済はアメリカとの協力体制を中心に拡大を続けてきた。

その日本経済が、日中経済圏をつくるために動き始めることは、アメリカに対する裏切り行為であるとアメリカが見るのは当然である。

 

アメリカに長く暮らし、アメリカの政治家との人的関係を持つ著者らしいコメントであると思ってしまいますが、

日米関係を大前提として、アメリカだけを味方につけていることがこれからも良いとは限りません。

 

戦後の経済成長から現在まで、アメリカが日本の助け役になったことはありますが、

何れにしても”アメリカ側の必要性において協力してきただけ”ということは念頭に置かなければなりません。

 

冷戦時代は、アメリカが、社会主義国と対峙する最前線という重要な位置付けであり、日本を豊かにする必要性がありました。

バブル景気を生むことになったのも、アメリカ主導だという説もあります。

 

戦後からずっと、日本はアメリカにとって、国債の引き受け手としての役割があったのです。

冷戦中、アメリカの軍事産業が資金確保をするため、アメリカ国債を引き受ける日本は重要な役割でした。

 

そんな日本が、プラザ合意で円高ドル安にとなり、含み損を抱えていては、国債を買い支えることはできなくなります。

そこで、日本の金融機関の株価を引き上げ、為替差損を、株価の上昇で相殺しようとしたという一面があります。

 

悪く言ってしまえば、日本はずっとアメリカに「いいように扱われてきた」と言えるかもしれません。

単純にアメリカと仲良くしていれば大丈夫という時代ではなくなる可能性は否定してはいけません。

 

当然、今の中国を世界の覇権国として受け入れるわけにはいかないとは思います。

しかし、今後数年で、劇的に変わる可能性も残されてるように思います。

 

習近平の永世国家主席は、独裁のための第一歩とも言われていますが、権力の使い方次第では、民主国家へ進むことも可能です。

そうでなければ世界から受け入れられないことは、中国も十分に把握しているはずです。

 

それだけ優秀な人間が、欧米に留学し、過去の事例や思想、経済学を学び、国に帰っているのです。

ウイグル自治区の弾圧問題は、厳しい世界の目に晒されました。

最近では、香港のデモも世界中で話題になりました。

一帯一路構想も、協力国との間で揉め事が絶えません。

 

米中の貿易戦争と自国の経済成長、そして民主主義との兼ね合い、これらの課題をどう解決していくか注目すべきであり、不確実性はあるものの、日中協力という選択はいつでも持っておくべきだと考えます。

 

以上、ここまで読んでいただいてありがとうございました。

 

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