こんにちは!Jimmyです。
長引く香港問題にアメリカが登場して、米中貿易と関連して報じられるようになりました。
2019年11月27日、アメリカで、「香港人権・民主主義法案」(以下香港人権法)が可決されました。
夏くらいからデモが断続的に発生していたのはニュースを見て知っているが、アメリカも登場してきて複雑になっていると感じている人もいるのではないでしょうか。
なぜアメリカが関わってくるのか?
法案の真意は何なのか?
なぜ中国にとって香港が重要なのか?
香港問題を巡る、アメリカ、中国、香港の立ち位置とそれぞれの狙いを簡潔に整理します。
香港デモと政府、人民の立ち位置
事の発端は、2019年4月に議論された、「逃亡犯条例」の改正案でした。
香港で行われた、中国に批判的な言論活動が、中国によって実質取り締まりを受けることが可能になるとあって、香港市民は猛反発しました。
言論の自由が損なわれるとして、デモに発展したのでした。
香港デモの発端と歴史的背景(イギリス領香港、一国二制度)の詳細はこちらの記事をご覧ください。
デモの経緯
香港市民の立ち位置
まず、市民側としては、香港の言論の自由を守ること、中国本土の法制度による侵食を阻止することが目的です。
中国本土では共産党の監視のもと、言論は厳しく統制されています。
デモの効果もあり、逃亡犯条例は事実上撤回されましたが、政府への不満は収まりません。
普通選挙の導入や、中国寄りの現政権の交代を求めてデモが続いています。
2047年には、一国二制度の期限を迎えますが、中国本土と同化することに激しく拒否反応を起こしているのが実態です。
香港政府の立ち位置
香港政府は、中国寄りになっています。
もっと言えば、ならざるを得ません。
それは、香港の行政長官(行政のトップ)は、親中派で構成された委員会の承認をあらかじめ取得する必要があるからです。
さらに、行政長官は中国政府の承認を得て、はじめて閣僚を組閣できるという流れです。
反中国派が実権を握ることが実質的に不可能な仕組みです。
中国の傀儡政権と揶揄されていますが、立ち位置としては明らかな中国寄りであり、アメリカの香港人権法案についても、内政に干渉するものだとして、批判するコメントを出しています。
香港人権法成立、アメリカの立ち位置と狙い
香港人権法案とアメリカの狙い
香港人権法がアメリカで可決されました。
法案の要点は以下の通りです。
・一国二制度をしっかり守っているかを毎年アメリカがチェックする。
・守られていなければ、香港に認めているアメリカとの貿易優遇措置(低い関税率)を見直す。
・香港の自治・人権を侵害した者について、アメリカへの入国禁止、資産凍結などを課す。
「なぜ、アメリカが香港の人権問題に関わってくるのか?」と思った人もいるかもしれません。
中国と香港政府は、内政干渉だとして非難しています。
アメリカは大国だからという理由は通用しません。
アメリカとしての大義名分は、
ということです。
一国二制度を理由に、アメリカは中国本土とは異なる有利な関税を香港に認めています。
一国二制度が崩壊していれば、香港に対する貿易優遇を見直す必要があり、それを検証するための法案という位置付けになります。
このような大義名分を置くことで、内政干渉という批判に対抗しています。
デメリット覚悟の背景
このような法案を可決することで、アメリカは香港市民を支持する立場を明確にしたことになります。
一方、この法案に従い検証した結果、もし一国二制度が機能していないとなれば、貿易優遇措置を解除するのでしょうか。
実は、香港はアメリカにとって、最大の貿易黒字をもたらす相手国です。
直近では、300億ドル以上の貿易黒字となっています。
アメリカは長年、貿易赤字に苦しんでいる国です。
優遇措置を失くせば、交易量は落ち、アメリカにとってデメリットになります。
それほど、中国を競争相手国として脅威に感じていることがわかります。
なお、トランプ大統領は、最後まで法案署名に迷っていたようです。
トランプ大統領の目下の課題は、対中国貿易協定を優位に進めることであり、その成果を国民にアピールすることです。
そんな中で、人権法案に署名すれば、中国の反発は必至、貿易協定は更に難しくなることはわかっています。
しかし、上院下院とも、圧倒的多数で可決したため、たとえ大統領が拒否権を発動しても、それを覆せるだけの票があることは明らかな状況でした。
トランプ大統領が、習近平にかなり気を使って、「習近平、中国、香港の人々に敬意を払い法案を可決した。」と声明を出しているところからも、本意ではなかったことが伺えます。
中国にとっての香港
金融の窓口としての香港
中国本土では、資本取引や為替取引に制限が設けられており、自由な金融市場とは言えない状況です。
それは、完全に自由な取引を認めたくない中国共産党の意向が関係しています。
資本取引や為替相場に一定の制限や操作を加えることで、経済全体をコントロールしている側面があります。
国際的な要求や批判が高まる中で、徐々に自由化が進んでいるものの、完全な自由化には未だ踏み切れません。
そこで、自由な取引ができる香港が役立っているのです。
2019年までの過去10年間に、中国の企業が株式上場した際に資金を調達した金額は、中国市場が約3000億ドル、香港市場では約1500億ドルとなっており、香港市場への依存が大きいことがわかります。
中国国内で取引される人民元(CNY)とは別に、国外で取引される人民元(CNH)の取引がもっとも多く行われているのも香港です。
中国の経済成長により、経済規模での香港の魅力はひと昔ほど大きくありませんが、依然として「金融市場」としての役割は、無くてはならない存在なのです。
アメリカからの香港デモ隊支持の姿勢について、中国側は、内政干渉であると批判し、一歩も引く気はなさそうです。
台湾の位置付け(参考)
少し話が脱線しますが、台湾についても少し触れておきます。
香港と台湾はどう違うのか?
国なのか、中国の一部なのか?
など、気になった人もいるかもしれません。
台湾は、中華民国(1912年成立)の国民党政府の流れをくみます。
当時、中華民国の中で、国民党と共産党が熾烈な政権争いをしていましたが、毛沢東率いる共産党が勝利し、中華人民共和国を打ち立てます。
国民党は大陸を追いやられて、今の台湾に移り、国家として再出発しました。
それが今の台湾です。
つまり昔は同じ中国で、共産党が中華人民共和国(今の中国)を作り、国民党が台湾を作ったということです。
中華人民共和国からの意見もあり、台湾は、現状国際連合には加盟できておらず、日本も正式国家としては認めていません。
一方、それ以外は、独自の法律、議会、通貨もあり、国としての形は、他国となんら変わりません。
一国二制度が適用されている香港とは、成り立ちや位置付けが異なります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
香港でのデモが長期化したことで、ついにアメリカが香港デモを支持する姿勢を明確にしました。
それぞれの立場と狙いを簡単に整理すると以下の通りです。
・政府は中国寄りの人材しか登用されないのが現状
・よって市民と政府は対立する
・対中強硬論の高まり
・一国二制度検証名目による香港デモ隊支持
・人権法案は内政干渉だと批判
自由な言論体制を巡る、デモ隊と香港政府の問題であったのが、
アメリカ対中国という構図でも、火花が散っている状態です。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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