本書の概要とその前に
こんにちは!Jimmyです。
今回は、稲盛和夫さんの著書、「稲盛和夫の哲学」を紹介します。
哲学の重要性、今の時代だからこそ持つべき理由
その前に、哲学と聞くと、何か難しいイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、哲学はこれからの時代を生きていく上で、誰もが持つべきものであると考えます。
なぜなら、判断に迷う局面で、自分自身の言動決定の指針となるからです。
言動決定の指針・基準となるものの代表例と言えば、善悪基準、お金による損得基準、会社の規定基準などがありますが、その中でも最も強く、ブレない自分を作るものこそ哲学なのです。
もっと端的に表してしまえば、自分の言動を決定づける判断軸の強さベスト3はこうなります。
1位 哲学
2位 お金
3位 集団・会社
ただでさえ、多様な価値観や判断基準が存在し、迷うことが多い現在の世の中です。
迷ったり後悔したりすることで人生を無駄にするのは避けたいものです。
その中でも、現代を生きる世界中の人に当たり前に出来上がっているのが、お金を基準とする価値観です。
つまりお金で考えて損か得か、という基準が一般的です。
しかし、これが前面に出すぎると、世の中はギスギスして、荒んでいきます。
リーマンショックも、資本主義社会における様々な問題も、多くはお金を圧倒的第一に考えてきた人が多い結果であると言えます。
お金基準を超えるような、ブレない判断軸を作ることは大変重要であり、それこそが哲学なのです。
そんな大事な「哲学」の参考として学ぶのに、最もふさわしいと思い推薦したいのが稲盛和夫さんの哲学です。
本書の概要
稲盛和夫さんは、ご存知の通り、京セラ、第二電電(KDDI)の創業者、そして日本航空(JAL)再建を果たした名経営者です。
私自身、稲盛さんの書籍には大きな影響を受けています。
「アメーバ経営」のように、より実践的な経営手法や要諦に焦点を当てて書かれているものもありますが、今回紹介するのは、稲盛和夫さんが哲学を語っているものです。
本書を書くきっかけは、PHP研究所からの依頼で、「青少年含めた人生を真摯に生きようとする人々に説くため」だとされています。
仕事をするにも、社会貢献するにも、その基となる考え方、ひいては哲学が大変重要になります。
まさに、その基となる部分について、稲盛さんが実際に実践してこられたことをベースに、
人は何のために生きるかといった哲学について思いを綴られています。
これだけ大きな成果と実績があり、尊敬を集める稲盛さんの哲学に触れることは、今後の人生を歩んでいく中で、多くの人にとって参考になるのではないかと思います。
おすすめする理由
宇宙の意思から導く人間の価値
いきなり話が飛ぶようですが、宇宙の総量は不変です。
何かが無くなったように見えても、別の何かに変わって存在しています。
地球上の例で言えば、目に見える水が蒸発したとき、水は無くなったのではなく、液体から気体に変わって存在しています。
誕生以来、宇宙にあるものは、何一つ欠けることなく総量不変のままです。
地球においても、もちろんそれは当てはまります。
その中で生きている全ての生物は相対的な関係の中で存在していると言えます。
一つでも欠けては相対的な関係が崩れてしまいます。
宇宙の全貌について、全てが解明されているわけではありませんが、ビッグバンにより宇宙が誕生して以来、素粒子の集まりが、陽子や中性子を作り、原子を作り、どんどん高度な物質が誕生していった経緯があります。
稲盛さんは次のように宇宙の性質を語っています。
宇宙には森羅万象あらゆるものを生成発展させ、成長させようとする意識が働いている。
この点については、稲盛さんは他の著書でも、同じような話を取り上げ、この生成発展こそが宇宙の意思であるとしています。
宇宙の総量は不変で、宇宙の意思とは生成発展、成長である。
その前提に立つと、この世に存在しているもの(人間だけにとどまらず)は全てに意味がある、価値のある存在ということになります。
これが稲盛さんの考え方の根底にあります。
私たち人間は、知能を持ち、考えることができる貴重な存在です。
世の中をよりより方向へ、成長させ、発展させていく、この考えにしたがって行動することはすなわち、宇宙の意思と調和しているということになります。
長期的なスパンで、物事が良い方向に持っていくためには、宇宙の意思と調和することが不可欠であると稲盛さんは考えられています。
つまり、世の中をより良くするという基本原則にしたがった考え方を持つことが重要だということです。
人生の目的とは人格を高めることである
考えることができる人間は、そのままでももちろん宇宙の一部として存在する価値はあるとしていますが、
良い考え方を持つこと、人間性を磨くことが人間にとって大変重要だと稲盛さんは考えています。
「人間として価値ある存在」となるためには、心、考え方、知恵、理性といった精神作用の質が大切なのです。
人間性を磨くこと、すなわち魂を磨くこと、それが大事なことであり、魂を磨く、つまり人間性を高め、素晴らしい人格を身につけることこそが、人生の本当の目的なのです。
今の時代、どんなに物質的には豊かになっても幸福感を持てず、人生に不満を感じるのは、根本的な考え方がしっかりしていないからということになります。
では、人間性を磨くためには何をすればよいのか。
示されているのは、布施、持戒、忍辱、精進の4つです。
布施とは、利他の精神です。世のため、人のために尽くしたいと思うように努めることです。
持戒とは、読んで字のごとく、戒めを持つ、自らを戒めエゴを抑えることです。
忍辱とは、耐えることです。忍耐といってよいかもしれません。
精進とは、精一杯働くことです。
常にこのような心がけをすることは、大変困難です。
稲盛さん自身も、このような教えに関する本を常に携帯しており、飛行機の中や、少しの時間に忘れないように読むようにしていると仰っています。
百点満点は難しく、毎日実行するのは誰でもできることではありません。
できるとしても、ほんの一部の偉いお坊さんくらいではないかと思います。
それでも、そうならなければならないと毎日強く思い、心がけることが重要であり、
稲盛さんも、今でもそれを繰り返し実践されています。
因果応報と輪廻転生
ここまで読んで気づかれた方も多いと思いますが、人間性を磨くこと、素晴らしい人格を作ることが人生の目的だと話す稲盛さんの考え方には、仏教の思想が大きく反映されています。
すなわち、因果応報と輪廻天生という概念です。
稲盛さんは人生の中で経験し、また見てきた結果として、因果応報の法則を強調します。
計測や証明が難しく、非科学的ということで、現在の世の中では敬遠されがちな古い思想だと思う人もいるでしょう。
実際に、悪行を働いているのに、成功をおさめ、充実した人生を送っているように見える人、ずるいことをしていても、問題になることなくしのぎ切れる人などの例は身近なところでも少なくないでしょう。
しかし、10年、20年、30年という長いスパンで見れば必ず因果応報の法則に基づいていると稲盛さんは仰っています。
いったん成功をおさめた企業の傾きや没落も、因果応報の原則によっていると稲盛さんは断言しています。
善行を積めばそれが結果になって必ず返ってくるということですが、
稲盛さん自身の数々の偉業は、そのような考え方に基づいて行動してきた結果だと言えるかもしれません。
もう一つの概念は輪廻天生です。
稲盛さんが、生きる目的を人格を高めること、魂を磨くことと考えている前提には、輪廻転生という概念があります。
人は、現世でいくら地位や名声、財産を得ようとも、死んでしまえばそれを引き続き持っていくことはできません。
しかし、魂はなくなることなく、前世から後世へ受け継がれていくという思想です。
つまり、現世で磨かれた魂は、肉体が滅びても、なくなることなく次に生まれ変わる時に引き継ぐことができるということです。
引き継げるのは、人格であり、人間性であり、魂だけなのです。
そのため、人生の目的は、人格を高める、魂を磨くためにあるという考えに繋がる、ということです。
なお、善行を積み、高められ続けた魂は、やがて輪廻転生の循環から抜け出し、極楽浄土へ向かうと言われています。(宗派により仏教の中でも教えは様々です。)
立身出世も成功もけっこう。
おもしろおかしい人生もけっこう。
しかし、それは生きていく一つの過程であり、人生の目的は人間を作ることだ。
最後に 稲盛哲学を信じる理由
これまで、稲盛さんの哲学について概要を書いてきました。
仏教思想や、宇宙の意識など文字通り哲学的な内容になっていますので、作者不明のまま読めば、拒否反応や一種の胡散臭さを感じることもあるでしょう。
非科学的な考え方も多く含まれているので、普通の人が説いても、なかなか説得力を伴うことはできません。
それほど、非科学的、哲学的な内容を腹に落とし込んで、強く信じるということは難しいことです。
だからこそ、稲盛さんの言葉として受け止めることが私にとって効果的であったと思います。
実際に、稲盛さんがくぐり抜けてきた経営の修羅場は並大抵のことではないと想像できます。
京セラや、JALなどで稲盛さんは自身の哲学を浸透させ、そして成功してきた燦然たる事実がありますが、
にわかには信じられないくらいすごいことだと思っています。
経営者の哲学を社員が理解し、実際にそれを指針に動くということ、会社に変革をもたらすということは単なる思いつきや浅い考えでは到底なし得ません。
経営者の言行一致はもちろん、人間性、人望、オーラ、体力、熱意、多くの資質が必要です。
私自身、サラリーマン時代は大企業に勤めていましたが、トップの理念を真に理解し、共感し、意識変革するには至りませんでした。
(なお、会社のトップとは、直接話したことはありませんでした)
新しい方針が出れば、現場のマネージャー層たちは、トップから降りてきた理念を忖度し、現場で「しっかりやっている感」を出そうと必死になる傾向があります。
そして現場は、やらされている感だけが残ります。
経営者の熱意・真意が現場に伝わっていない、そのため形だけのものとなり、結局評価体系や切羽詰まった重要な場面で置き去りにされるというパターンが多いように思います。
稲盛さんが、短い期間でJALを復活させた背景には、アメーバ経営導入といった構造改革のみならず、経営層から現場の社員一人一人に意識変革をもたらしたことが成功の要因だと自ら仰っています。
別の著書では、JALの社員の意識改革のくだりについて、やってきたことをうかがい知ることができます。
まずは、何ヶ月もかけて経営層の意識改革をはかり、現場の社員にも足を運んで考え方を伝えたとされています。
活字で読むと、さらりと読んでしまうのですが、大きな組織でこれを成し遂げることがどれだけ難しいことかは、社員側の立場として私も身をもって体験しています。
以下に、稲盛さんの考え方について書かれた本を私の愛読書として紹介しています。
そちらも是非参考になさってください。
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以上、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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