四書五経とは何なのか?簡単なまとめと現代人が学ぶ意味を考える

こんにちは!Jimmyです。

今回は「四書五経」についてです。

もはや歴史用語になっている儒教の重要な書物、四書五経ですが、現代では必要のない教えなのでしょうか。

それぞれの書物に書かれている内容と、現代の私たちが学ぶ意義について解説します。

四書五経とは?

四書五経は、いずれも儒教の教えに基づいた経典です。

数ある儒教に関係する経典の中でも、最も重要とされ選ばれたのが四書五経になります。

 

四書

論語 孟子 大学 中庸

五経

書経 易経 詩経 礼記 春秋(左氏伝)

 

儒教思想は、「徳治主義」に代表される通り、道徳によって民を治めようとする考えが基本になっています。

そのため、徳の高い人になるための考え方や戒めについて、経典では事例を交えながら繰り返し語られています。

五経

書経

孔子以前の古い時代の、王の政治や心構えについて記してある歴史書です。

堯・舜といった伝説上の王の話からはじまり、禹王(夏)・湯王(殷)・文王(周)・武王(周)について記されています。

孔子が理想とした政治を実践してきた人たちという位置付けで、一般的に名君と考えられている人たちです。

湯王と武王については、いずれも前代の王朝の暴君を滅ぼし、善政をもたらした、「湯武放伐」として知られています。

 

書経にある一例

『習い性となる』

習慣は、続ければそのうち、その人の生まれつきの性質のようになる。

 

『一日二日に万機あり』

日に何度もチャンスはある、一日を大切に過ごすべき。

 

なお、『備えあれば憂いなし』も書経を元にした言葉です。

 

易経

元々は、占いに関する書物です。

(易経の占いの考え方は現代にも引き継がれています。)

 

古代では、占いは非常に重要視されていました。

孔子もソクラテスもそのように発言しています。

亀卜(動物の骨を使った占い)や筮(植物の茎を使った占い)による占いによって、重大な決断も下されました。

 

そこから様々な解釈が加えられ、今読むと、リーダー論、哲学書、思想書として捉えることができるでしょう。

 

基本的には、万物は陰と陽の二局に分けられるという考え方があります。

それに従い、物事を64に分類する方法とそれぞれの意味が記されています。

 

易経にある一例

『霜をふんで堅氷至る』

霜を見ればそのうち冬がくることがわかる、つまり物事の兆候を捉えれば、大きな動きがやってくることもわかるということ。

 

『君子は豹変し、小人は面を革む(あらたむ)』

変化が必要な時、小人は表面的にしか変わらないが、君子は根本的に変わることができる。

 

あわせて読みたい

不易流行とは何かを真剣に考える回【見えてくる大切な考え方】

 

詩経

当時の人たちの詩を集めたものです。

王たちを称賛するような詩、宮廷にいるような人たちの詩、そして諸国の人たちの詩と、幅広く集められています。

孔子としては、詩は、感性が豊かになり、他者理解も進み、正しい心がけも勉強できるとして、大いに弟子たちにも勧めたようです。

 

詩経にある一例

『敢えて暴虎せず敢えて馮河せず』

無謀な冒険や振る舞いはやめなさいという戒め。

 

『爾の産むところを恥ずかしむることなかれ』

先祖や父母を辱めるような行為をしてはいけないという戒め。

 

礼記

その名の通り、礼に関する書物です。

孔子は儀礼の形式も大切に考えていました。

竹内照夫さんの「四書五経入門」によると、礼には畏敬の礼と和平の礼があるということです。

つまり、宮廷で行われるような祭礼から、冠婚葬祭、諸侯同士の協定の仕方、接待のやり方まで様々な儀礼の方法と心構えが記されています。

礼というより、配慮のようなことまで示されており、現代にも通ずることは多くあります。

 

例えば、知人の家に訪問した場合、

家の主人があくびをしだしたり、手足でものを動かし始めたり、外の日差しの様子を見るようなことがあれば、そろそろ帰るべきだとされています。

時代に合わないものも中にはあるようですが、心構えとして大事なことにも多く気づかされます。

 

礼記にある一例

『父の讐(あだ)は倶(とも)に天を戴(いただ)かず』

不倶戴天の語源です。父の仇敵は、この世に生かしておけないほど憎む存在ということ。

 

春秋(左氏伝)

「春秋」は魯の国の歴史書ですが、それに注釈が加えたものがいくつも存在します。

その中で最も有名なのが、春秋左氏伝であり、通常五経ではこれを指します。

福沢諭吉も好んで左氏伝を読んでいたそうです。

リーダーシップ論に繋がるような教えも数多く含まれています。

 

左伝にある一例

『驕りて亡びざる者は、未だこれあらざるなし』

驕りたかぶって、亡びなかった者など、今までに誰一人としていない。

 

『国のまさに亡びんとするや、必ず制多し』

傾いている国、潰れそうな国ほど、法律や制度が多くなるもの。

四書

論語・孟子

論語は、儒教の祖である孔子と弟子たちの問答集が論語です。

「子曰く」の形で繰り広げられる問答が基本になっています。

 

孟子は、孔子の教えを継ぐ人です。

性善説を唱え、鋭い弁舌をふるいました。

その教えや、問答集が「孟子」にまとめられています。

 

孔子、孟子の主張と、生涯については、こちらをご覧ください。

あわせて読みたい

諸子百家(孔子 老子 孟子 荀子他)を学ぶのが面白くなる思想と関係性

 

大学・中庸

大学と中庸は先ほど示した五経の中の「礼記」から独立した経典です。

大学は、国家を統治する人たち向け、つまりリーダー向けに、徳を身につけるための考え方が記されています。

修身の書と言えるでしょう。

自分自身を正すには、学問を学ぶだけでなく、善悪を知ることで道徳的判断ができる。

そうすることで心が正しくなり、自己を正しく位置付け、そして国家も正すことができるということが基本理念になっています。

 

中庸は、極端に偏ることがない「中」の道こそが最高の徳であるとする考え方が基本です。

『知者はこれに過ぎ、愚者は及ばず。』

愚かな人は物事を達成することができないというのは理解しやすいのですが、それと同時に、

頭のいい人は、どうにもやり過ぎてしまうという戒めでもあるわけです。

 

中庸の中で示されている大事な概念に「誠」があります。

誠は、天の道であるとされています。

偽りのない真心を身につけることが、天からの使命を実践する道であるという考えになります。

天命を知るためにも、中庸の徳を身につけることが必要であることがわかります。

 

他の記事で紹介した、論語の「和して同ぜず」もこの中庸の考え方にも則っていると言えるでしょう。

 

あわせて読みたい

和して同ぜず 難しい世の中だからこそ際立つ必須の考え方

日本で長く学ばれていた四書五経

儒教の経典は、もともと紀元前中国のものですが、

5世紀頃には日本にも伝わり、時代を超えて学ばれることになりました。

四書五経として確立されたのはもっと後の時代になりますが、古くから高僧や貴族、天皇家を中心に学ばれていたようです。

 

江戸時代には、幕府が儒教を公式に国学としたため、より多くの人が四書五経を学びました。

特に、武士などの支配階級において、今で言うところのリーダー層において熱心に学ばれました。

吉田松陰や、新井白石、林羅山などの儒学の先生も多く輩出されるようになりました。

 

庶民の間では、寺子屋で教えられたとされる「読み・書き・そろばん」が知られていますが、

この他にも、人間育成のために四書五経も一部取り入れられていたようです。

 

二宮尊徳徳川光圀も熱心に勉強した一人です。

明治維新を思想面でリードした福沢諭吉も四書五経をよく読んでいたとされています。

日露戦争期のリーダーたちも、江戸時代を経験した人たちです。

人格者として知られる乃木希典も、四書五経をよく学んだようです。

 

今の世の中でも、人格的に尊敬される人物に、明治維新期(江戸時代生まれ)の人が多いのは偶然ではないように思います。

ちなみに、儒教の本家本元の中国よりも、当時の日本人はよく儒教を学んでいたとも言われています。

四書五経を学ぶ意味はあるのか?

四書五経

ほとんど学ばれなくなった現代

明治以降、徐々に四書五経を学ぶ人は少なくなりました。

今となっては、論語の言葉が国語の教科書に少し出てくる程度ではないかと思います。

そこから重要な考え方を学ぶというより、歴史事項を暗記するくらいの感覚で学んでいる人が多いのではないでしょうか。

 

時代の流れから考えると、明治以降、近代化に舵を切った日本は、実践的な学問を学ぶことに重きを置きました。

科学技術の進化、その背景にある資本主義の考え方によって、四書五経のような「徳」や「人格」を中心に据えた思想は、軽視されてきた傾向にあります。

 

社会人が関心を持っていること

社会に出てからは、専ら業界の知識を深めること、資格を取ること、新たな技術を学ぶこと。

さらに、組織でいかにうまく立ち回るかといった対処療法的な(ある意味)スキルが好まれるようになったと言えます。

 

組織論にせよ、ガバナンス論にせよ、欧米のMBAなどで教えられる方法が主流となり、それに関連した理論をあくせく取り入れているのが現状です。

軸にするのは法律であり、ルール。

そのため「法令遵守」というキーワードが、どの組織でも取り上げられています。

 

自己啓発として取り組むとすれば、新たな資格本であったり、株式投資であったり、いかにお金を儲けようかという類になることが多いと思います。

そのような価値観における現代では、四書五経のような教えについて、もはや時代遅れで通用しないという考えを持っている人も少なくありません。

 

見直される道徳

しかし、技術革新がなされ、資本主義が進むにつれて、新たな問題も認識されるようになりました。

認識されるというレベルではなく、人々をむしばんでいると言った方がよいかもしれません。

 

格差問題、倫理観の欠如、個人主義・利己主義、自分自身の喪失。

これらが行き着く先として、一言で言えば、幸福感の欠如があります。

 

もちろん、欧米のビジネススクールなどでも、これらの問題解決に向けて、人格に重点を置いた、優れたリーダーシップ論が発表されています。

利己的で金儲けのことばかり考えていてはダメだと警鐘を鳴らす人も増えています。

教養の大切さがますます認識されるようにもなりました。

 

一方で、東洋にも、昔から伝わる優れたリーダー論、思想がたくさんあります。

ということで、最近になって、古くからの考え方が、再度注目されているのです。

 

渋沢栄一が新たな1万円札の肖像画になりますが、渋沢が主張したのは道徳と経済が一体であるということです。

渋沢も、まさに四書五経を中心とした儒学を深く学んだ一人です。

 

2000年以上経っても残っているという驚異

よく考えてみれば、2000年以上も昔の教えが、今になっても残っているということは、人類にとってそれだけ意味があるという証拠に他なりません。

現代の書籍で、50年前のものが今でも読まれるというケースは非常に稀です。

 

四書五経のように、人間のあり方、人間同士の関わり方に直結するような教えは、いくら技術が進化しても人間である以上変わりません。

もちろん、本当に時代に合わないような考え方もあることは事実です。

(特に男女観に関することは、今の時代では受け入れられないような考え方が堂々と書かれていたりします)

 

しかし、今に必要な学びを見出し、今の世の中に生かすことができる教えも少なくありません。

 

どう学ぶかに意味がある 解釈が大事

その上で、重要になってくるのが解釈です。

当然、原文をそのまま読んでもよいのですが、「言葉が足りないではないか!」と思ってしまうところもあります。

意味をなんとなく理解できたとしても、あまり響くものはないでしょう。

 

実は、四書五経然り昔の経典などは、幾度か解釈や注釈が加えられながら、まとめられていくものが少なくありません。

原文だけ読んでも、なかなか理解できない教えが、わかりやすく説明が付加されているのです。

 

同じように、現在においてどう捉えていけばよいのかという解釈は、意外と重要になってきます。

そういう意味では、無理に原文を読むのではなく、事例なども交えて解説してくれているような本を選んで読むことで、より現実問題として考えることが容易になるはずです。

 

例えば論語の有名な一節。

 

書き下し文

子曰く、之を導くに政を以ってし、之を斉える(ととのえる)に刑を以ってすれば、民免れて恥なし。これを導くに徳を以ってし、これを斉えるに礼を以ってすれば、恥有りて且つ格し(ただし)。

現代語の意味

民を導くのに政策を用い、民を治めるのに刑罰を用いれば、民は法の抜け穴を探そうとするでしょう。そうではなく徳をもって導き、礼をもって治めれば、自然と民は身を正すようになるのです。

 

もしかしたら、これだけでは、古い昔のことであり、現代では通用しない考えだと切り捨ててしまうかもしれません。

しかし、実例、見方を示せば、受け取り方も変わります。

 

企業組織で、権限とルールを盾に、様々な無理難題を強制し、従わない者には容赦無く罰を与えるような上司の話を出したらどうでしょうか。

そのような上司のもとで働く人は、何とか罰を受けないように、体裁を整えることに必死になって、やる気や目的意識が持てなくなるでしょう。

ルールはあるものの、その上司自身の人格が大切です。

聞く耳を持ってくれる、気にかけてくれるような上司であれば、何とか報いたいと思い、やる気になるのではないでしょうか。

 

一例ですが、このような話を出せば見方も変わってきます。

自分自身の状況に置き換えて考えることができるようになるはずです。

今の社会においても通用すること、もっと言えば今の時代だからこそ必要な考え方に出会えるはずです。

まとめ

四書五経は、明治初期くらいまでは、学問の中心におかれるほど、多くの人にとって必修科目でした。

ところが明治以降、そして戦後と時が経つにつれて学ばれなくなったようです。

 

しかし、今になって、資本主義がもたらした合理主義、個人主義、拝金主義に歪みが生じているのは明らかです。

欧米の書物などでも、人格や倫理的な観点から、リーダー論を語るようなものも増えています。

時代の特徴はそれぞれ違えど、2000年以上も読み継がれてきたという事実を考えると、人間の根本的な部分に通じる教えが詰まっていると考えるべきでしょう。

 

現代よく売れているようなビジネス本や、海外のビジネススクールが発行した論文などの内容には、四書五経に通じるような内容も少なくありません。

 

より根本的に、人としての道や道徳について考えさせられるのが、古典であると思います。

それを知った上で、現代の社会にあわせて発行された最新書籍を読んでみると、相乗効果が得られるのではないかと思います。

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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