こんにちは!元銀行員のJimmyです。
フィンテック企業の台頭に、デジタル通貨構想など、銀行員という仕事について、これからどうなるのだろうかと考える人も増えてきているのではないでしょうか。
今回は、銀行員の転職の要諦について書いていきます。
転職や起業を考える銀行員は実は大変多いのですが、実際に動く人はそれほど多くありません。
私が実際に現場で感じた、そして見てきた実例をもとに、どのような転職先が考えられるのか、
そして、(これがすごく大事)動くにあたって必要な心構えを解説します。
まず心得よ!自分は何もできないことを知る!
まず転職を考えるにあたり、認識しなければならないことは、他社で活かせる専門スキルなどは、ほとんどないということです。
基本的に銀行員としてのキャリアはゼネラリストです。
専門性を追求していくようなキャリアの人も中にはいるかもしれませんが、これまでの銀行の方針は、ゼネラリストを育成するというものでした。
つまり、何か強い専門性があって、それが新たな職場で強みとなるということは、ほぼ考えられないということです。
転職するときに、自分の強みやスキルは何なのか、考えたときに、無理やり専門性をあげようとすると勇気をくじかれます。
決算書や財務諸表は、銀行員ではなくても読めます。(仕訳なんて銀行員はできませんね)
分析と細かい図や表を作らせれば、コンサル業界の人の方が優れたものを作ります。
業界動向についても、その業界の人の方が詳しいに決まっています。
何を隠そう私自身、起業を計画しているときに、このことを強く思い知らされました。
いきなり、出鼻をくじくようなことを書きましたが、まずは、これだけは負けないという専門性を武器に勝負するのではないということを認識する必要があります。
ほとんどの場合、広く浅く見てきたこと、身につけてきたことを中心に考えていくしかありません。
銀行員の転職・独立の可能性は若ければ無限大
20代の転職
先ほど、まずは釘を刺すように書きましたが、実際は銀行員の転職が、難しいかというとそんなことはありません。
まず、20代はどんな業界にでも挑戦可能です。
大企業であっても、スタートアップであっても、拒まれるようなことはありません。
専門性はなくても、数年間、銀行という組織に採用されて生きてきたということは、採用する側にとってはプラスの印象を与えることができます。
お金を扱う仕事且つお堅い仕事です。
20代であれば、専門的なことは、入社してから覚えてくれればよいということにもなります。
実際に、20代で銀行から転職していく人は、様々な業界にチャレンジしています。
中には、学び直しの道を選んで、大学へ入学したり、海外へ留学する人もいます。
公務員を目指すという人、
起業を目指すという人もいます。
スキルを生かすというより、新たな挑戦をするという気持ちで臨んで問題ないでしょう。
30代の転職
人生100年時代です。
30代でも学び直しや、全く違う業界への挑戦がもっとあってもよいではないかと個人的には思いますが、
実際のところは、30代になると、業界は随分絞られてきます。
銀行、保険、証券、コンサルファームあたりでしょうか。
ここでも、専門性の強さというよりは10年以上も、銀行で働いてきたということが採用企業側にプラスの印象を与えることが期待できます。
ある程度の分析的思考や、知識などゼネラリストとしての土台を兼ね備えた上で、これから伸びる余地、貢献できる余地があると判断され、転職していく人は少なくありません。
日本企業では、30代ではある程度役職者が増えてきますので、いきなり、なんの経験もない業界が受け入れてくれるチャンスは確かに減ります。
一方で、スタートアップなどは、必要な人材を揃えるのに苦労する場合も多く、数字まわり、財務まわりの仕事、中にはCFOの役割で銀行出身者が参画するような事例も増えてきています。
全く別の業界への門戸が閉ざされているわけではありません。
なお、30代前半で多いのは、実家や親戚が経営している会社に行くというパターンです。
20代のうちに、銀行で多方面の経験を積んで、30代で家業を継ぐために辞めるという人は少なくありません。
専門性に特化せず、幅広く業務を経験できるということで、20代に銀行を選ぶわけです。
40代以降の転職
これだけ長い間、銀行という組織に所属していると、銀行員としての性格が濃くなります。
他の組織ではもはや順応できない人も多くなります。
もうこの時期になれば、自分の銀行員としての出世の限界はほぼわかっています。
第二の人生を考え始める人が多くなります。
しかし、40代を超える銀行員は、部署や責任の大小は違えど、ある程度の役職を持っている人が多くなります。
マネージャーとしての役割を担っているということです。
このような場合、転職の受け入れ先は限られると言ってよいでしょう。
企業にとって資金調達は、会社の存続に直接関わる大変重大な任務です。
銀行の内部事情をよく知っていて、顔もよくきくということで重宝されるケースもあります。
実際に、若手の銀行員は、この銀行OBに手を焼くケースも少なくありません。
銀行のOBということで、迷惑な要求があっても、相手にしないわけにもいかず、調べ物から資料の作成まで色々な要求に対応しているという話はよく聞きます。(もちろん面倒な人ばかりではありませんが)
企業からすれば、銀行とのやりとりを安心して任せられる人材ということになるでしょう。
企業側は、銀行の要請で人材を受け入れるということも少なくありません。
「おたくの要請で人も受け入れているんだ、まさか、自社への融資条件等をないがしろに扱うことはないでしょうね」という裏心もあります。
何れにせよ、40代以降の転職は銀行の斡旋か、自分の築いた人脈の中から探すという場合が多くなります。
起業した銀行員
銀行員から起業した、もっとも有名な人といえば楽天の三木谷浩史さんでしょう。
銀行在職中にMBAを取得、その後コンサル会社を設立し独立されました。
このように、留学(MBA)や他社への出向を機に、経営の道を考えるようになった人が少なくない印象です。
私のように、銀行を辞めて即起業という人はそれほど多くない印象ですが、それでも、今後は増えていくことでしょう。
銀行員が動けない仕組みを乗り越えるための心構え
他業界に行けば給料は下がる、これは受け入れよう!
はじめに書いた通り、銀行員としての決定的な強みとなるようなスキルなどありません。
なおかつ、銀行員の給料体系は、他業界に比べて30歳前後の給料が高くなっています。
よって、多くの場合、他業界への転職は給料の減少を伴います。
コンサルや同じ金融業界であれば、上がるケースもあるでしょう。
大手デベロッパーや総合商社なども上がる可能性はあるかもしれません。
しかし、その他の業界では給料の減少を覚悟しておくべきです。
給料の上昇曲線が違います。
多くの業界では、30歳前後はまだまだ伸びる前の段階です。
銀行員であれば、役員にでもならない限り、51歳で役職定年になりますが、他の業界に行けば、そんなことはありませんので、長期的に活躍できるという視点で考えるべきです。
また、スタートアップなどに参画すれば、給料は低いかもしれませんが、ストックオプションなど夢のある制度もありますので、目の前の給料水準だけでは考えないことが大切です。
(ここ大事)ゼネラリストと給料の罠に要注意
一生懸命に銀行で仕事をしてきたはずなのに、いざ考えてみると、自分のスキルと言える強みがないことに愕然とすることもあるでしょう。
そこで、もはや動くことができないと、転職や独立を断念してしまう人も少なくありません。
さらに、銀行員は30歳前後で年収ベースで1000万円を超えることも珍しくありませんので、余計に決心がつかなくなります。
これが大きな罠でもあるのです。
ゼネラリストと給料の罠です。
もともと、銀行員はゼネラリストとしての特徴が濃い仕事です。
どういうことか、
つまり、幅広く色々な業務知識や業界知識が身につきそうな気がする、そして給料も社会的地位も悪くないから銀行員を選ぶのです。
いきなり、何かに特化した会社に入って、自分に合っていなかったら嫌だと考える人は少なくありません。
さらに、銀行の給料は他業界と比べても少なくありません。
安定もしていると言えるでしょう。
こんな状態で入社する人は少なくありませんので、やっているうちに転職したくなる人が大勢いても不思議ではありません。
しかも、ゼネラリストといえば聞こえがいいですが、実際には、専門的なスキルは身につきません。
政治的な組織に振り回されて、それに対してうまく立ち回るのが業務の大半ということも珍しくありません。
無駄な仕事、非効率な仕事に加え、おかしな商品を売ることも山ほどあります。
それを銀行も承知しているのでしょう。
いい塩梅で、給料を上げてくるのです。
「ここで、こんなことをしている場合ではない」と思う人はたくさんいます。
実際にまわりにはたくさんいました。
ところが、他の会社で活躍できるだけの専門スキルがないことと、給料が上がってきていることから、転職や独立を断念するようになっているのです。
私が、30歳を過ぎて、退職を報告したときの多くの人の反応が物語っています。
「ゼネラリストと給料の罠」にはまって動けなかった人がいかに多いかがわかります。
もう少し「裏切り者扱い」する人がいるかなと思っていたのですが。
実に多くの人から言われた言葉です。
「よく決心できたね、俺にはできなかったよ」
繰り返しますが、専門スキルが無いから、転職ができないということはありません。
業界的に、早くから給料が上がる仕組みになっています。
他の組織の給料が低く感じますが、長期的な可能性を考えれば、短絡的な結論を持つべきではありません。
20代ならどんな業界でも間口を開いてくれています。
30代でも、専門性を身につけられるような転職先候補はたくさんあります。
さらにスタートアップなどでのCFOの役割を担えるような事例も増えてきています。
自分で起業したっていいのです。
次に書きますが、本当に自分の人生として、今のままで良いのかを、信念レベルで考えることが大切です。
信念で動く、自分の使命を真剣に考えよう!
「まあ、やっていることはしょーもないけど、これだけ給料があれば・・・」
このようなことを言って、銀行に残る人の中には、後悔する人もいることでしょう。
無理やり自分を納得させ、正当化させようとする人もたくさんいますが、本当の自分に嘘はつけません。
何より、周りにこんなことを言っている人が多ければ、いい影響を受けることはありません。
真にやりがいを感じて働いている人もいるでしょう。
モチベーションを高く保って日々努力している人もいます。
もし目指すべき姿が無いのであれば、動く選択も考えてよいはずです。
スキルや目の前の給料のことは二の次です。
時間が経つごとにどんどん動けなくなります。
今すぐ、時間をかけてでも、自分の信念に向き合って考えてみることが必要ではないでしょうか。
なりたい自分像、やってみたい仕事、
逆に、なってはいけない自分、やってはいけないことについて、これまでの社会人生活を振り返ってじっくり考えてみることです。
具体的な転職先候補の会社を考える前に、自分のやるべき使命を信念レベルで明確にする作業をすることが、行動を起こすためには必要です。
なぜなら、私もそうであったように、忙しく働いていると、そのような大きな使命について考えることがほとんどなくなるからです。
残業に付き合いに接待にゴルフ、業務外にも相当な時間を取られるはずです。
染まりきる前に、自分の信念の軸を構築して、動ける勇気を持つことから始める必要があります。
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気になる日本の銀行業界の将来
参考までに、私が考える、日本の銀行業界の将来について少し見解を書いておこうと思います。
潰れません!潰せません!ただ大きく再編はある
まず、銀行が次々と倒産するようなことはほぼ考えられません。
銀行は他の多くの会社に比べて無くなる可能性は極めて小さいです。
国としても潰せません。
リーマンショックの時も、アメリカはリーマンブラザーズをはじめとする証券会社は倒産させても、銀行は守りました。
日本でも、証券会社は倒産させても、銀行には公的資金を注入しました。
公共性が極めて高い事業体だからです。
ただし、日本についていえば、業界として伸びる期待はできません。
資金調達手段の多様化、決済手段の多様化、通貨の多様化、デジタル化、これらは日本の銀行にとって有利に働くものではありません。
成長していくダイナミックさを味わうようなことは、この先ないでしょう。
グローバル競争が苦手
グローバル競争が苦手な日本の銀行が、今後世界の銀行と互角に渡り合えることはないでしょう。
つまり、グローバル企業との取引を拡大して成長を拡大する見込みはありません。
書くまでもありませんが、銀行が業績を保てるのは、他の企業のおかげです。
成長する企業があって、はじめて銀行は融資のチャンスや決済のチャンスがあるのです。
ところが日本企業はというと、かつて隆盛を誇った企業はどんどんグローバル競争に敗退し、今では頼みの綱は自動車業界くらいです。
だったらグローバル企業(外国企業)との取引チャンスを考えるべきなのですが、
世界の企業に対して日本の銀行はなかなか入っていくことができません。
日本の金融業界は、製造業よりも、グローバル競争に負けているという現状があります。
たとえば、状況は少し特殊ですが、私が中国に勤務していたときも、グローバル企業への融資や取引を拡大しようとする方針はあありました。
ところが、実際にやろうとすると、だれも積極的な判断ができないのです。
結果、何年もの間、やるべきなのはわかっていながら、拡大することができない状況が続いていました。
日本企業の弱点はまさにここにあります。
何か新しい分野で勝負するとなると、判断が遅い、判断ができない、セクショナリズムに陥って全体を統括する人がいないのです。
これは、第二次世界大戦時から指摘されている日本軍の弱点をそのまま引きずっている、日本人の伝統的な弱点です。
ここでは詳しく理由を解説しませんが、興味がある方は以下の記事をご覧ください。
「超」入門 失敗の本質という本に、現代の日本企業が世界で勝てない根本的な理由が見事に指摘されています。
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フィンテック企業の台頭
銀行業務に関する規制が緩和されています。
今では預金業務や、送金業務を行える会社がたくさん出てきました。
大手よりも、送金手数料を低く設定するなど、利用するメリットを示して銀行の業務の一部を奪う形となっています。
また、フィンテック技術や機械学習を取り入れた、画期的な与信判断システムを作り上げる企業もこれから増えていくでしょう。
個人のローンや小口融資などの信用判断は、そのような機械学習が入り込む余地は大きいと言えます。
依然、規制は残っており、銀行にしかできない業務もありますが、銀行の収益源は減っていく傾向にあることは確かです。
仮想通貨、デジタル通貨
インパクトが大きいと思われるのが仮想通貨、デジタル通貨です。
これらは、多くの場合、銀行を介する必要がありません。
・銀行に預金をする必要がありませんので、銀行は資金を確保する機会が減ります。
・銀行を通して送金する必要がありませんんので、決済機会も減ります。
・銀行を通して両替する必要がないため、両替収益を得る機会も減ります。
仮想通貨は、ビットコインが有名ですが、現在、各国政府でもデジタル通貨の検討が始まっています。
EUでも中国でも始まったと言われています。
政府がデジタル通貨を導入するということは、日本で言えば、日本銀行券がデジタル化されるということです。
技術的に考えれば、銀行を介する必要性もなくなります。
銀行が担ってきた「信用創造」の仕組みが無くなります。
政府と銀行の間でどんなやりとりがされているか詳しいことはわかりませんが、おそらく、猛烈に銀行は反対していることでしょう。
AIの台頭
AIの台頭による影響も散々言われています。
窓口業務の一部など、無人化していくことは考えられますが、
AIでは判断できないような業務も銀行には多くあるのも事実です。
遠い将来はわかりませんが、しばらくは、人の手が必要な状態は続くのではないかと思います。
ただし、国際決済(送金)としての機能や、かなり縮小された預金、貸金業務に限定される可能性は大きいのではないかと予想します。
なお、送金という業務については技術的には難しいことはありませんが、犯罪組織による資金洗浄には、当然ながら厳しく対応する必要があり、そのあたりの業務は銀行が引き続き担うことになるだろうと思われます。
AIについては、銀行に限らず、どの業界にも当てはまることなので、特に銀行だから注意が必要というわけではありません。
銀行員の転職 まとめ
いかがでしたでしょうか。
銀行員の転職について、転職が行われている現状と、心構えについて書いてきました。
年代による違いはありますが、まずは銀行員としてのスキルは、基本的に大きな強みとして認識されることは多くありません。
むしろ、銀行員として働いてきた下地に注目され、伸び代を見て判断されることが多いでしょう。
20代、30代であれば、好意的に受け取られることも多いと言えます。
転職で給料が下がることはありますが、目先の給料水準に注目するよりは、長期的な専門性の発展や可能性を考慮するべきです。
銀行員が陥りやすいゼネラリストと給料の罠を紹介しました。
時が経つごとに、どんどん動けないようになりますので、早いうちから、自分の信念レベルで人生で達成するべきことを決めて軸を持って行動することが大切です。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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