「超」入門 失敗の本質(おすすめ図書)日本人が読むべき本

こんにちは!Jimmyです。

今回は、お薦め図書の紹介です。

仕事や組織、リーダーシップについて考えている人、悩んでいる人、関心がある人が是非読むべき本です。

概要:70年以上も変わらない日本組織の本質的弱点

「超」入門 失敗の本質
(日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ)
鈴木博毅著
2012年発行

 

本書は、1984年に初版が発行された、名著「失敗の本質」(以下原書)から得られる学びを、現代ビジネス、すなわち現代に生きる私たちの視点でどう考えるべきかについて、わかりやすく示した内容となっています。

 

原書は、第二次世界大戦における日本軍の戦い方とアメリカ軍の戦い方を比較しながら、日本軍が負けた原因の本質がどこにあったのかを経営学的見地から分析しており、

発行から30年以上経った今でも、多くのビジネスマンに読まれている名著です。

 

具体的には、ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の6つの局地戦における戦い方を取り上げ、日米の戦い方を比較し、日本軍に足りなかったことを分析しています。

 

読むと、太平洋戦争時代、日本軍にとって欠如していたこと、敗戦を招いた日本軍の特徴は、驚くほど、現代の日本企業が持つ特徴と一致していることに気づくことでしょう。

敗戦から70年以上経っても、改善されていない日本に共通する組織的ジレンマを見事に指摘しています。

 

一方、原書は、戦時の局地戦における解説、及び日本軍の敗北要因をクローズアップすることがメインであり、若干難解な部分もあります。

本書は、現代に生きる私たちの学びとして、わかりやすくエッセンスが抽出されています。

アップルやマイクロソフトをはじめ、現代企業の事例などを交えて解説がなされているため、現代の仕事と結びつけて考えやすくなっているのが特徴です。

お薦めする理由:変化の時代に必要な行動指針となる

私が本書をお薦めする理由は、閉塞感漂う現代に生きる私たちの、意識改革、行動指針となる内容が多いということに尽きます。

その背景には、日本人だからこそ、気づくことが難しい日本人組織の本質的な弱点があります。

そこが見事に指摘されています。

 

働き方、仕事で成し遂げたいこと、リーダーシップの本質について重要な示唆があり、行動と考え方の指針をもたらしてくれる内容です。

経営者であっても、会社員であっても、公務員であっても多くの学びを得られるはずです。

 

今の日本的組織の弱点や課題(誤った考え方、組織論、リーダーシップ論)と、仕事をする上で根幹となる重要な考え方を、過去の歴史の失敗から得た学びとして凝縮されています。

読み手も納得感を持って読み進めることができます。

 

さらに、現代企業における事例比較も豊富に含まれているため、自分の仕事に置き換えて考えやすくなっています。

日本的組織にいて、今までおかしいと思いながらも、「常識、当たり前、動かすことができない」とされてきたことにも多くのスポットが当てられています。

 

知らず知らずのうちに、間違った常識にとらわれている自分にも気づくことがあるかもしれません。

 

日本は今、敗戦の時と同様、時代の過渡期にあると言えます。

企業間の国際競争では、苦戦を強いられている状況が長く続いており、働く人たちにとっての環境は年々苦しくなっていると感じます。

 

それは、賃金が上がらない、格差が広がっているということに止まらず、組織におけるストレス、人間関係、徒労感が年々深刻になっているということに重大な意味を感じます。

 

さらに、産業構造の大きな変化も予想されています。

今ある組織の運営方法や方針に限界がきていることを認識するべきです。

 

70年以上も改善されることなく続いている日本人が陥りやすい失敗の本質を学び、

第二次世界大戦と同じような失敗をまた繰り返すのか(没落)、

それとも変化の時代に対応できる考え方を身につけるきっかけにして、生き残っていくのか

まずは個人レベルで、正しい選択ができることが必要です。

 

ページ数は230ページ程度ですが、難解な解説も必要最小限に抑えられているため、時間をかけなくてもどんどん読み進めることができるでしょう。

 

なお、本書は、日本の失敗の本質に着目しているため、日米比較では、日本の欠点ばかりが目立つようになっています。

実際にはアメリカに勝る日本組織のメリットや、アメリカ的思考法の弱みもあるということは付け加える必要があると思います。

現代の仕事に直結する学び

本書は、7つの章にわけられ、当時の日米軍組織と考え方の違いが説明されています。

そこから得られる学びは、現代の私たちのビジネスの場においても、大いなる気付きがもたらされると思います。

本書の内容から得られる学びを一部紹介します。

 

日本組織が変化に対応できない理由

日本は、新たな指標(戦略)を発見、作り出すことが苦手です。

一方、既存の指標の中で、鍛錬を重ねて他社との競争に勝利していくことは得意と言えます。

言葉で表すなら、日本人が得意とする領域は、「職人芸」、「個人の技術に磨きをかける」、「練磨」といった同じ戦略の中でのプロセス改善です。

体験して得た学びから、解を探るのが日本流です。

さらに、精神力の世界とも言うべき地道な努力をすることも惜しみません。

 

日本軍の職人芸と弊害

日本軍による、主砲射撃や魚雷発射の命中率は、神業レベルと言われるほど訓練に次ぐ訓練で熟練されていました。

「月月火水木金金」の世界で鍛え上げられた精神力と技術力が成せる業です。

視力も8キロも先の軍艦を識別できるほど良く、当初アメリカの驚異となり、神業チームの日本軍は躍進しました。

一方、精神力という概念が強く、失敗の要因を、「努力が足りないからだ!」という精神面に帰結しがちです。

精神性に訴えるのは昔も今も一緒です。

商品が売れないのは、「努力、やる気が足りない」とされることが多く、戦略自体を見直すことをすぐにはしようとしません。

 

米軍の「ゲームのルールを変える力」

当初、日本の職人芸に押されていた米軍ですが、そのうち新たな指標を見つけて対応します。

アメリカは、システムという指標で対応します。

機体に直接当たらなくても爆発し撃墜できる兵器を、科学者と共同で開発、

目視の戦いでは到底勝てないので、レーダーを開発し索敵を優位に展開、

日本の零戦とは、1対1の戦いでは勝てないので、単独行動を禁じた上で、2機1組の体制とし、重装備を施した1機が標的にされている間にもう1機が攻撃する挟み撃ちルールを導入。

このような日本軍の熟練された職人技に対して、システムを取り入れ、日本人の指標を無効にすることに成功します。

 

シングルループ学習とダブルループ学習

このような思考の違いは、シングルループ学習とダブルループ学習の違いで説明できます。

日本はシングルループ学習です。

言い換えれば一方通行の学習です。

目標や問題の基本構造が不変であることを前提とします。

例えば、「どのように接客を充実させるか」が唯一の売り上げ増加の対策であり、現場ではそれを疑うことなく、接客の充実に取り組みます。

現場から本部へのフィードバックもなく、経営陣が現場の状況や実態を勘案して新たな戦略を打つことをしません。

ダブルループ学習は、双方向の学習です。

想定した問題や構造を絶えず疑い、現場からのフィードバックの元、本部でも改善を意識して、絶えず変えていくことを基本とします。

必要であれば、前提から見直します。

その結果が、「日本軍の職人芸に迅速に対応できた米軍」という形となって表れています。

もし日本軍が、当初職人技で負けた米軍の立場であれば、まずは現場兵士の努力不足を指摘し、更なる鍛錬を命令していたのではないでしょうか。

 

「現場」を上手に活用できないのも昔から

現在の日本企業の多くも、当時の日本軍も、現場の活用が上手ではありません。

司令部が現場の能力を生かせないのです。

例えば、ラバウル基地から2000キロも離れたガダルカナル島への飛行命令などは、優秀な現場の能力を無にするような愚策でした。

目的地での滞空可能時間が15分では何もできません。

 

この背景には、日本の組織運営方法の問題があります。

✅上層部が、自分たちの理解していない現場を軽視している傲慢さと権威主義の横行。

✅上層部が現場の優秀な人間の意見を参照しない、現場フィードバックを無視する一方通行の組織体質。

 

アメリカでは先のレーダー開発に際して、開発は科学者に全て任せ、一切軍人は口出しせず、という方針を貫きました。

ダブルループ学習が基本にあり、前提となる問題から考え直すことができました。

専門家である科学者の自主性に任せ、フィードバックを受け、意見交換するという姿勢を持つことができたのです。

 

日米の現場への基本姿勢の違い

米軍では、人材配置面でも、現場と司令部の相互性があり、優秀な人材をどこからでも選抜できる人事制度の元で運営されていました。

現場の意見を取り入れる人事制度としてローテーションも採用し、現場と司令部をどちらも経験することができました。

 

有能な人材への待遇を強化して、成果に見合った迅速な人事配置と待遇をほどこすことで、モチベーション維持につなげました。

日本軍との決定的な違いは、現場と司令部のやりとりこそ、新たな指標を発見する場所であるという認識の有無です。

 

また、人事評価の方法にも特徴が表れています。

「勝利・成果」に向かって突き進む目標達成型組織のアメリカに対して、

日本はプロセス主義で、やる気を評価します。

無能でも、やる気がある人を評価します。

そのため、ヘタに慎重論は唱えられません。

結果、保身と無責任が蔓延します。

Yesマンが評価されます。

そして、お飾り人事が横行します。

 

日露戦争では開戦後、日本はすぐに人事を戦時体制に切り替えました。

連合艦隊司令長官の人事では、日高壮之丞を外し、東郷平八郎を大抜擢したのは有名な話です。

つまり、この頃は日本も当たり前のように出来ていたのです。

 

しかし、太平洋戦争では平時の階級体制のまま突入しました。

この人事制度と人材に関する考え方の差は歴然としており大きな結果の差を生みます。

私が本書を読んでいた時の感想ですが、戦時下の日米軍の違いについての記載だと認識しつつも、まるで今の日本企業のことが書いてあるように思えてなりませんでした。

 

「真のリーダーシップ」が存在しない日本

リーダーシップに関する意識の差も大きく取り上げられています。

以下は、珊瑚海海戦で、日本から被害を大きく受けた際のアメリカの対応です。

 

✅前線の兵士を直接本部に呼び出し、意見交換、情報収拾を行なった。

✅飛行機会社の社長自ら最前線近くの島まで足を運び、兵士にインタビューを行い、迅速な改善に取り組んだ。

 

トップ、もしくはそれに近い人が直接現場に赴いたり、情報収集したりすることに意味があります。

最前線こそが、一番状況を把握できるところであり、その状況をトップがどれだけ把握できるかが重要になります。

 

先ほどの、対零戦1対1の禁止、挟み撃ちフォーメーションの導入、及び米軍機の性能向上案決定は、トップが自らヒアリングしたことで迅速に行われました。

 

日本の組織の問題点

一方、日本は、縄張り意識と派閥主義により自分の責務以外には無関心になることが多く、組織全体を把握できる人間が少なく、意思決定は遅い傾向にあります。

重要な情報が組織内で濾過要約され、トップには概略しか届かないということも問題です。

 

トップも下に降りて自ら現場に赴くことをしません。

結局、何重にもフィルターを通し、更に恣意的な脚色を通して伝わるため、正確に状況は把握できなくなります。

 

さらに、自分が信じたい情報以外は無視をする、

他人の能力を信じず理解する姿勢がない、

階級を超えて他者の視点を活用することを知らないというのが日本的リーダーの決定的な弱みです。

 

組織の発揮できる能力はリーダー次第

イノベーションを起こすのに上下は関係ありません。

どこからでも起きるものです。

上が正しいという硬直的な考えではイノベーションは起こらず、敗北する可能性が高くなります。

 

この人たち(自分のリーダー)に何を言っても無駄だと思わせてしまうようなリーダーは最悪であり、もっとも避けなければならない状況です。

 

インパール作戦では、牟田口司令官は、食糧弾薬がなくても戦えると鼓舞して突き進んでしまった結果、戦死者よりも餓死者を多く出しました。

この作戦の前にも、多くの人が意見具申をしたものの、全く受け付けられず、言っても無駄という雰囲気が蔓延していたことでしょう。

強制的な統制に固執し、下の意見を聞かなかった事例の一つです。

 

更に、それで失敗したとしても、現場が頑張らないからだという安易な理由に帰結させてしまうところも日本組織の特徴です。

本来は、リーダーが示した勝利の条件が本当に正しかったのかをまずは疑うべきなのです。

最後に

日本が、敗戦の時と、組織の特徴が大きく改善されていないという事実を認識することは、変化を促すために大変重要なことです。

それを気づかせてくれるのに、本書は最高の教科書であると言えるでしょう。

私たちが所属している現代組織に当てはめて見ることで、課題がより鮮明になり、私たち個人として取るべき行動方針や考え方も変えていくきっかけになるのではないかと思います。

興味のある方は是非読んでみてください。

 

書籍はこちら↓

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

現代企業の弱点や、リーダーシップに関する以下の記事も参考にしてみてください。

 

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