聖徳太子「和をもって尊しとなす」の本当の意味を5分で振り返る

誰もが知ってる?聖徳太子と十七条の憲法

こんにちは!Jimmyです。

「和をもって尊しとなす」の本当の意味を解説します。

勘違いしている人が意外と多いので、今回書くことにしました。

 

聖徳太子といえば、誰もが知っている歴史上の人物です。

推古天皇の摂政として、十七条の憲法冠位十二階を定めたことや法隆寺を建てたこと、

外交面では、中国(隋)に遣隋使を派遣したことなどが有名です。

 

小中学校の時に必ず習ってきた、聖徳太子が定めた十七条の憲法の中に、誰もが聞き覚えがあるフレーズがあります。

「和をもって尊しとなす」という言葉です。

 

これは十七条の憲法の第一条に書いてある一部です。

この言葉は、多くの人が知っており、そして様々な場面で、日本人の古くからのアイデンティティーとして引用されます。

 

昔はお札にも印刷されていたように、聖徳太子は日本の歴史において、重要な役割を果たした人物です。

近年では(主に戦後)聖徳太子は架空の人物だったとする説を主張する学者さんも多くいるようですが、何れにせよ日本人の多くが知っている人物であることに変わりはありません。

日本人に根付く「和をもって尊し」とは?

ここだけ抜粋されて使われる現状

普段生活していても、様々な場面でこの「和をもって尊し」という言葉を耳にします。

 

例えば、欧米と比較して日本人は、自分の意見を言わない、持っていない、さらには議論(ディベート)することが下手だということを言われます。

 

その際には、日本は昔から「和をもって尊し」という言葉があるように、和を大事にしているから自分の意見よりも協調性を大事にしていると説明する人がいます。

 

事あるごとに、「和をもって尊し」この部分だけが抜粋されて、

仲良くやること、協調性を大事にすること、論争しないことの正当化のために使われているような気がします。

 

しかし、これは間違った解釈です。

 

十七条の憲法の第一条では、協調性を尊重していることに間違いはありませんが、

ここで言われている大事なことは、「大いに議論をしよう」ということです。

 

現代語ではない文書の、さらに一部分だけを抜粋すると、解釈の間違いは容易に発生します。

十七条の憲法に限らず、一部だけを見て本来の意図と違う解釈がなされることは度々起こります。

 

確かに、和をもって尊しとだけ聞けば、「争わずに仲良くやるのがいいことです!」と言われているような気がします。

 

ところが、その後を読んでみればすぐにわかります。

長い文ではないため、一度振り返ってみようと思います。

 

協調性を基に”議論”してこそ事を成せる!という趣旨

原文と書き下し文は以下のようになります。

一曰。以和為貴。無忤為宗。
一にいわく。わ(やわらぎ)をもってとうとしとなす。さからうことなきをむねとす。

人皆有黨。亦少達者。
ひとはみなともがらあり。またさとるものまれなり。

是以或不順君父。乍違于隣里。
これをもってあるいはくんぷにしたがわず。たちまちにりんりにたがう。

然上和下睦。諧於論事。
しかれどもかみわし しもむつむときは   ことをろんずるにかなえり。

則事理自通。何事不成。
すなわちことのことわりは おのずからつうず。  なにごとかならざらん。

 

一行目だけを読むと、協調性が大事であって、人に逆らうようなことがあってはならないと解釈してしまうかもしれません。

 

しかし、「忤」は「逆」ではありません。

人に逆らうという意味ではなく、道理に反することのないようにという意味で解釈するべきです。

 

その後を読んでみると、大筋はこんな意味になると思います。

 

『人は基本的に徒党を組むもので、また悟りを得ているような人はほとんどいない。

つまり未完成な人が多い。

よって、君子や父に従わない者がでてくる。

しかし、上下関係がよく調和していれば、議論してもうまくいく。

そして道理が自然と通じて、どんなことでも達成できるのである。』

 

つまり、事を成すためには、議論が必要であり、議論をする上で道理に反するような考え方をしてはいけないと言っているのです。

 

人の意見に逆らわないことや、自分の意見を言わないことを推奨しているわけではありません。

大いに議論しようと言っていて、その際に道理に従って議論しなさいということです。

 

全部見ればわかる

そもそも、この十七条の憲法は全体としてどんな意図があるのか。

十七条全文は少し長くなるので割愛しますが、全部を見てみると、仏教思想が色濃く反映されていることがわかります。

 

心構えとして、三法(仏法僧)を敬うこと、質素倹約、真心、道理にかなったことを勧めており、欲を貪るようなことや、怒りにまかせて振る舞うことをしてはいけないということを説いています。

 

余談ですが、第三条では天皇について触れられており、天皇は天子であること、及びその絶対性について書かれています。

わざわざ書くことで、改めて天皇と他の人民を区別し、特別な存在であることを示していると言えます。

 

そして最後の第十七条で再び「議論」について触れられています。

物事を決めるときは、独断で決めてはいけない、必ず周りの人とよく議論するようにという趣旨になります。

 

特に大きな事を決める際には、間違いがある事を疑ってかかり、多くの人と吟味すれば必ず道理に従うことができる、ということが書かれています。

十七曰。夫事不可独断。
十七にいわく。それことをどくだんすべからず。

必與衆宜論。
かならずしゅうとともによろしくろんずべし。

少事是輕。不可必衆。
しょうじはこれかろし。かならずしゅうにすべからず。

唯逮論大事。若疑有失。
ただだいじをろんずるにおよばば。あやまりあることをうたがうごとくに。

故與衆相辨。辞則得理。
ゆえにしゅうとともにあいわきまえれば。ことばすなわちことわりをえん。

 

このように、仏教思想(加えて日本古来の神道の思想も交えて)を中心とした心構えが十七条にわたって示されています。

 

単純に、仲良くしなさい、人に意見するようなことはいけませんと言っているのではなく、

根本にあるのは、人の道として正しい行い、道理に即した行いをしなさいというのが十七条の憲法で書かれていることです。

 

そういった心構えを踏まえての議論の推奨、事を成すにあたり必要なことが示されているのです。

 

制定の背景

聖徳太子は、摂政という立場でした。

これから国家を盤石なものにしていこうとする中で、仏教思想を取り入れたのです。

 

ここに至るまでには、仏教を巡っての争いがありました。

覚えている人も多いと思いますが、

物部氏と蘇我氏が仏教思想を取り入れるか否かで対立していました。

 

仏教反対派が物部氏、賛成派が蘇我氏です。

仏教賛成派の聖徳太子は蘇我氏側につきます。

そしてこの争いに蘇我氏が勝利します。

 

こういった過程を経て、仏教思想を取り入れた国作りがスタートしていきました。

この意味において、聖徳太子は歴史上意義のある人物ということです。

 

このような背景や条文全体の構成を考えれば、憲法の第一条に、他人に意見しないように、議論しないように、仲良くしなさいということが書かれているはずはないということがわかります。

まとめ

聖徳太子が作った十七条の憲法は、今でも多くの日本人に知られています。

 

中でも第一条の「和をもって尊しとなす」という一文は、事あるごとに引用され、日本人の古くからの特性であるかのように語られています。

 

しかし、古文書のその一文だけを引用しているために、間違った解釈をしている人が少なくありません。

和をもって尊しとは、仲良くして議論を避けよう!自分の意見を慎みなさい!と言っているのではありません。

 

むしろ、議論を大いにしていく中で事を成すことができると説いています。

 

それを達成するためには、正しい考え方、道理という原理原則が必要です。

そのため、仏教思想を取り入れて、十七条に渡り、心構えを示しているのです。

 

道理に沿って議論をすれば、「何事が成らん」、つまりどんなことでもできる!

これが第一条で言われていることです。

 

何でも控え目で、意見を言わない、空気を読む、忖度する、議論を避けることが「和をもって尊しとなす」ことではないことは確かです。

 

時折間違った解釈で、この一文を引用している人がいますが、日本人のアイデンティティーを間違った解釈で捉えていることに注意するべきです。

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

歴史や考え方に関する以下の記事も、興味のある方は是非ご覧ください。

 

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