偶然目にしたニュース 働き方改革に逆行する会社?
こんにちは!Jimmyです。
働き方改革が、2019年4月よりスタートしました。
残業時間の削減、正規・非正規の格差是正、多様な働き方の受け入れがポイントです。
果たして、大企業中心に、生産性や労働環境の改善につながるのか、関心を持って見ています。
今回は、働き方改革に一見逆行しているように感じる会社の事例をもとに、
組織として本当に大切なこと、人がついてくる組織の要諦について考察していきます。
先日、少し変わったタイトルのニュースがあり目を引きました。
働き方改革に逆行している、横浜にある中小企業の紹介でした。
有限会社秋山木工という家具を製造する会社です。
HPを調べたところ、売上14億円、従業員34名(内職人が24名)ほどの会社です。
数々のメディアに取り上げられた実績もあることがわかりました。
当社で製造された家具は、国会議事堂や高級ホテルなどで使用されているということです。
この道60年の職人である社長による、丹精込めた作品が高く評価されているようです。
職人気質の社長が、己の腕一つで切り盛りする会社。
オーナー企業では、そのような経営者も少なくないと思いますが、他の会社と異なる点は、職人の育成制度にあります。
それこそが、労働の多様性を追求する働き方改革からは、逆行しているように見える制度なのです。
(Abema TIMESへのリンク)
https://abematimes.com/posts/7000868
もはや死語?「丁稚」制度を採用
当社の秋山社長は、職人を育成する方法について、「丁稚」(でっち)制度を採用しています。
一流の職人を育成する観点からは、丁稚が最も良い方法なのだそうです。
久しぶりに聞いた言葉です。
職人(師匠)の家に住み込みで働き、一人前になるための修行をすることです。
今であれば、様々な専門学校があります。
そして、プライベートを重視する時代です。
就職先を探す若者にとっても、丁稚に出るという発想はなかなか持てないと思います。
当社では、5年間の丁稚期間を経て職人になり、8年で、会社を強制的に辞めなければならない独特の社則があります。
最初の4年間は、さらに厳しくルールが定められています。
・恋愛禁止
・早5時起床でランニング2キロ
さらに、(ルールではないようですが)新入社員は全員丸刈りにしてくることが通例のようです。
ルールではないとしていますが、これをしないと「田舎に帰っていただく」ということで、結果的に全員が丸刈りになります。
何故それでも人が集まるのか?
今の時代、このような条件を出されたら、多くの人は当然に拒否反応を示すでしょう。
批判が内部から出てきても不思議ではありません。
おそらく、多くの見習生は10代後半から20代ではないでしょうか。
都会に出て、青春を謳歌しようとしていた当時の自分と重ねて考えると、一層当社の特異性が際立つように感じます。
私のような人でなくても、よほどのことがない限り、好きこのんでこのような条件の会社には入らないはずです。
社員へのインタビューによると、
「社長の技術に惚れ込んだ」、「自分もそんな職人になりたい」といった趣旨の発言が多くありました。
しかし、それだけで決められるものかと、半信半疑で記事を読んでいました。
一方社長は、職人を育成するにあたり次のような趣旨を語っています。
・世間から愛される一流の職人になるには、技術だけではなく、人間性も大切。
・5年間で一流を作る。そのために丁稚が最適。
ここに、人を惹きつけるポイントがあります。
人がついてくる仕組み
はっと気づいたことがあります。
このニュースは「会社」の紹介でした。
当然、会社に就職するという視点で考えていました。
しかし、この場合、「就職」というよりも丁稚奉公、「弟子入り」すると考えるべきでしょう。
多くの若者にとって、このような条件の「会社」に入ることは、通常の現代人であれば考えられません。
何が違うのか。
ここが非常に大きなポイントではないかと思います。
「人」に属するのか、「組織」に属するのかの違いです。
当社も、法人(有限会社)という形態をとっている以上、労働契約も交わすでしょう。
形式的には組織に入っているのですが、当社の社員は「人」に属しています。
秋山社長には明確なコミットがあります。
・技術と人間性に富んだ一流の職人を5年間で育てること
このコミットがあるからこそ、新入社員であっても、入社直後から(或いは入社前から)明確なゴールを持つことができます。
そして、ゴールを信じて社長についていくことができます。
ゴールを信じられるからこそ、このような一見めちゃくちゃなルールであっても、「納得して」受け入れることができるのだと思います。
5年後には一流になることを、毎日思い描いて進むことができるでしょう。
苦しいとき、辛いときに、繋ぎ止めてくれるもの、
それが「明確なゴール」と「信じられるリーダー」です。
実は働き方改革に逆行していない!
働き方改革がスタートした背景にあるのは、少子高齢化による労働人口の減少です。
労働人口が減れば、GDPも減ります。
この先、人口が減るのはどうしようもありません。
そのため、生産性を高めたり、多様な働き方の受け入れにより働ける人を増やしたりして、労働人口の減少分を補おうとしています。
働き手が不足するという意味では、まさに中小企業では深刻な問題となっています。
当社の業界も、例外ではないはずです。
職人の不足という問題は、以前から指摘されてきました。
労働環境や待遇、将来性の観点から、なかなか技術を継承しようとする若者が少ないことが原因です。
その点、当社は社長のコミットにより、職人が不足する時代にもかかわらず、
「貴重な職人を育てている」という意味で、働き方改革の趣旨に合致し、貢献していると言えるのではないかと思います。
人が人を惹きつける
人がついてくる仕組みという意味では、秋山木工の例は、「人は人についていく」という原則を示すお手本ではないかと思います。
(当然リスクもあります。もし社長が病気などの原因で職務につけなくなった場合、同じ体制は続かないでしょう。)
先ほどの秋山木工への就職が「人に属すること」であるのに対して、
大企業に就職することは、「組織に属すること」です。
大企業の弱点
大企業は組織であるため、誤解を恐れずに言うと、社員は「駒」です。
常に入れ替えが行われ、不測の事態にすぐに取り替えができるようになっています。
私は会社員時代、上司や先輩から、
「お前の代わりはいくらでもいる、それはお前がダメだと言っているわけではない。それでなければ組織としてダメなんだ」とよく言われました。
日々変わる状況に合わせて、社員を最適に配置することが求められています。
立場が変われば、言うことも変わります。
社員に対して、強力にコミットできる人間は誰一人としていません。
組織の性質を考えれば当然です。
そのため、3年後、5年後の明確なゴールを描きにくい状況が発生します。
描いたとしても、希望通りにはならないケースが非常に多いのです。
ゴールが見えにくく、さらに強力なリーダーを見出すのが難しいということが、現在の大組織の特徴と言えます。
大企業における人を惹きつける仕組み
そんな大企業では、会社に人を呼び込む、つなぎとめる要素も当然ながらたくさんあります。
- 社会的認知度
- 信用
- ブランド
- 安定
- 高給
- 職場の立地・条件(一等地、大きくて綺麗なオフィス)
- 福利厚生
- 社会的インパクトの大きさ(金額面で)などなどです。
これらは、中小企業や個人事業主が、努力してもなかなか獲得できない要素です。
これらを前面に出して、人を集めています。
事実、多くの学生が、会社を選ぶ際に優先することが多い要素です。
組織として人を集めるか、人として人を集めるか。
どちらを選ぶかは人それぞれです。
どちらもメリット、デメリットがあります。
近代以降は、明らかに規模を追求した時代です。
大きいことはブランドであり、信用があることの象徴的な役割を果たしていました。
しかし、敢えて今回のように秋山木工の例が注目されているのは、大企業のメリットが少しづつ小さくなっている証拠のようにも考えられます。
人の働き方もそれぞれ、ついていく理由も人それぞれですが、
「人が人についていく」という当たり前の原則が、もっと見直されるようになるかもしれません。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
以下の記事も参考にしてみてください。
40年スパンで日本人の価値観が大きく変化している歴史を振り返っています。
次の大転換は2020年代に訪れるかもしれません。
働く意味や、働き方も、大きな変化を迎えようとしています。
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