こんにちは!Jimmyです。
今回はMMT(現代貨幣理論)という経済の考え方を、初めて聞く人向けに紹介します。
異端の経済論として注目度が上がっていることもさることながら、MMTは経済の仕組みを考えるのにぴったりの教材でもあります。
今まで興味関心がなかった人も、MMTを知ることで、従来の常識と比較して経済の仕組み(特に財政)を考えることができるため、理解と関心を深める上でも役に立つと思われます。
従来の主流派経済学者とMMT論者の主張は大きく異なる通り、経済理論に絶対正解と呼ばれるものはありません。
そのような難解なものを敢えて理解して考える必要がどこにあるのか、その意義についても後半に説明します。
本ブログの大きなテーマとして、幸福感を持って自分の人生を生きることを目的としています。
その趣旨に従って、MMTをきっかけに経済に関心を持つことの重要性を指摘したいと思います。
MMT(現代貨幣理論)とは?
MMT(現代貨幣論)の概要
自国の通貨で債券を発行できる国は、債務不履行に陥ることはない。
だから財政赤字を気にせず国債を発行して(国が借金して)、景気刺激策を進めてよいという理論。
自国の通貨(日本なら日本円、アメリカならドル)で借金した場合、返すお金が手元になければ、新しくお金を刷れば(国債を発行すれば)返すことができる。
だから、経済が上向かずに苦しんでいるのであれば、どんどん国債を発行して、そのお金で景気刺激策を実行すればよいということになります。
つまり、赤字を気にせず、公共工事や、社会保障、教育、産業育成などに費やす費用を増やして景気回復しようということです。
個人の借金で考えれば無理な話なのですが、国は通貨を発行する権限があるため、このようなことができるということです。
これが本当なら、国民の生活としても大変魅力的な手段です。
これまでの経済の常識を覆すような理論であるため、MMTは多くの経済学者からは異端とされており、批判の声が大きいのも事実です。
MMTが有効に作用する条件
魔法のような理論ですが、MMT論者は、どのような状況でも国債を好きなだけ発行してよいと主張しているわけではありません。
MMTが有効に作用するには以下の条件があります。
- 自国通貨建であること
- インフレが起きていないこと
- 経常黒字であること
①自国通貨建であること
MMTを実行する上では、自国で自由に独自の通貨を発行できることが条件です。
つまり、EU加盟国のような、国家としての独自通貨を持たない状況下では通用しないということです。
ギリシャの国債が債務不履行(デフォルト)になったのは、自国通貨がなく、自由にお金を刷れなかったためという理屈になります。
アルゼンチンは、自国通貨を持っている国ではありますが、国債がデフォルトしたという事実があります。
これは、外貨建(例えば米ドル)で国債を発行したからということになります。
外貨建の国債を発行すれば、返すときは外貨を手に入れなければならないので、外貨を調達できなければお終いということです。
②インフレが起きていないこと
インフレとは、物価が継続的に上がり続けている状態のことを言います。
言い方を変えれば、需要が供給を上回っているという状態です。
物価(物の価値)が上がるということは、通貨の価値が下がるということです。
通貨を新たに発行すれば、出回る通貨は増えますが、物の供給量が変わらなければ、さらに値段は上がる(通貨の価値は下がる)ということになります。
100円ずつ持っている10人全員がリンゴを買いたいとすると、彼らは喜んで100円を払おうとしますが、リンゴは3つしかありません。
そのような状態でお金を刷って、全員が300円手にしたところで、リンゴの値段が300円になるだけです。
これが需要が供給を上回っている状態であり、物の価値が上がっている状態です。
つまり、そのような状況下でお金を刷ったら、インフレがさらに進み、ハイパーインフレと呼ばれる状態になり経済は混乱してしまいます。(金利は急上昇し、為替レートは暴落します。)
個人の生活で見れば、今日は100円で買えたリンゴが1ヶ月後には10万円になるようなものです。
そのため、インフレではない状態の時に、MMTを実行するべきということになります。
後でも触れますが、一定の水準までインフレが進んだら、今度はインフレを抑える政策が必要になるということです。
③経常黒字であること
経常収支とは、金融取引を除いた自国と外国との取引における収入、支出の差のことです。
貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支の4つから構成されていますが、要はどれだけ国として稼ぐ力があるかということを表しています。
もし経常収支がずっと赤字であれば、他の国からの信用力は落ちます。
国を一人の個人として考えればわかりやすいと思います。
収支がいつもマイナス、つまり入ってくるお金以上に支出して借金を繰り返している人を、どれほど信用できるでしょうか。
信用できない人が、自分の国のお金を大量に刷ったからと言って、そのお金の価値を信じてもらえるでしょうか。
信じられなければ、そのお金の評価は下がります。
つまり、その国の通貨は信用されず、価値が下がるということです。
価値が下がっていけば、対外決済に支障をきたします。
お金を刷っても刷っても追いつかなくなるのです。
実際にベネズエラはそのような状況になり、国は大混乱に陥りました。
ですから、MMTを実行しようとすれば、経常収支が黒字であるということは、他国からの信用、為替レートの安定という意味でも大変重要になってくるということです。
なぜ今注目?日本はMMT理想の国?
MMTは、20世紀前半の経済学者ケインズの経済学を原点に、考えを発展させたものです。
よって、考え方の根本としては、昔からあったものです。
近年になって全く新しく提唱された理論ではありません。
今になって注目されているのは、経済が上向かず、これまでの金融政策には限界があること、日本において、意図せずしてMMTを実践しているような形になっていることが背景にあります。
そして、コロナ問題により、大規模な財政出動が求められるようになったことで、よりMMTに対する注目度が高まったと言えます。
金融政策の限界
日本経済で考えます。
日本は、長い間デフレから脱却できておらず、経済成長もほとんどありません。
ちなみに、デフレはなぜダメなのかというと、国力が衰退していくからです。
デフレとは物の価値が継続的に下がっている(通貨の価値が上がっている)状態、需要より供給が多い状態です。
ですから、基本的に誰もお金を必要以上に使おうとしません。
企業も設備投資をしなくなります。
すると、経済全体が縮小していきます。
一方、インフレになれば、通貨の価値はだんだん下がっていく状態となるため、手元のお金を消費する方向に向かいやすくなります。
一般的には、2%程度のインフレ率が望ましいというのが世界の共通認識となっています。
そういうわけで、日本政府も物価上昇の目標を2%に置き、金融政策を行ってきました。
具体的には、世の中にあるお金の量を増やして、金利も低くしておけば、借入れもしやすくなり、お金を使うようになるだろうという予測のもと、日本銀行はお金を大量に世の中に供給しました。
民間銀行等が保有している日本の国債を日本銀行が買い取ることで、まずは民間の銀行にお金を供給します。
そうすることで、銀行は貸出をしやすくなる、金利も低くしてあるので借りる方も借りやすいということです。
さらに、国債だけではなく、株式などのリスク資産まで日本銀行が購入することで、投資家がリスクのある投資に前向きになるように仕向けました。
これが所謂、異次元緩和(量的、質的緩和)と呼ばれる金融緩和です。
2016年には、マイナス金利政策の導入までして、徹底的に金利を下げ、お金を調達しやすい環境を作りました。
しかし、狙ったようなインフレは発生していません。
いくらお金を供給しても、使い道のないもの、リターンが得られないものには使わないというのが、日銀が突きつけられた結果でした。
既にゼロ金利どころか、マイナス金利まで導入しているのに、これ以上日銀に打つ手はほとんどありません。
そういうわけで、金融政策だけでは限界があることがわかってきたというのが日本の現状です。
そのような背景もあり、財政政策に注目が集まるようになりました。
日本はMMTの実践モデル?
先ほどの、MMTを実行して良い条件を見ると、日本は見事に満たしています。
- 自国通貨建であること →日本円
- インフレが起きていないこと →長期のデフレ状態
- 経常黒字であること →20年以上ずっと黒字
そして、財政赤字を拡大させながら、国債も毎年のように大量に発行し、ついにGDP対比の債務残高は240%を超えました(GDPの2.4倍も借金があるということ)。
この債務水準は世界で最も高く、まずいのではないかという声も出ていますが、
事実として、それでも日本ではインフレも発生せず、金利も上がらず、日本円に対する信頼も揺らいでいるようには見えません。
つまり、MMT論者から見ると、日本は、まさにMMTの理論を実践しているように見えるわけです。
そして、景気が良くなるまで、もっと国債を発行していくべきだという見方になります。
コロナ問題で注目高まる
さらに、コロナ問題が世界中に広がり、第二次大戦以来の危機であると言われるようになりました。
そのような異例の事態で、各国ともに大規模な財政出動を行っています。
日本でも、コロナ対策としての財政出動はしていますが、まさに今こそ、債務残高や財政赤字を気にすることなく、より大規模な財政出動をするべき(もっと国債を発行して公共事業や生活支援、雇用政策など国がお金を使うべき)という意見も出るようになりました。
今までの考え方と何が違うのかを比較
従来の主流経済学者たちがMMTを問題視しているのはなぜか、両者の考えの違いについて簡単に示します。
国の債務の増加
主流派:デフォルトする
MMT:デフォルトしない
従来の主流派の考え方は、国債を乱発したら国の信用力が落ちて為替も暴落する危険性がある、当然、国債が債務不履行になる可能性があるという意見です。
一方MMT論者は、ある一定のインフレが達成された時点で、税率を上げるなどして引き締めれば、ハイパーインフレにはならない、そして為替も暴落せず債務不履行にはならないという意見です。
財政赤字
主流派:財政均衡を目指すべき
MMT:財政赤字は正常
主流派は、財政赤字の状態をよしとはしていません。
国債の増発に繋がるからです。
よって、支出を切り詰め、税収を増やす努力が不可欠であるという意見です。
コロナ対応という異例の事態では、大規模な財政支出はやむなしという意見ですが、際限なく財政赤字を拡大することに対しては警鐘を鳴らしています。
そして、自分たちの時代に作った借金という負の遺産を、後世に残して責任を押し付けるのはよくないという立場に立っています。
MMT論者は、そもそも財政赤字が正常の状態であり、国債を発行することで借り換えをすればよいという意見です。
そのため後世にツケを回すわけではないという立場です。
ポイント
主流派:想定外の事態に対応できない!
MMT:コントロール可能!
最終的に最も重要であり、決着がつかないポイントは、政府が景気をコントロールできるかできないかという問題です。
主流派も、MMTを実行すれば短期的には景気がよくなるということは認めています。
しかし、その後の展開として、かなりの確率で、インフレ、金利上昇、バブルが発生すると考えています。
そうなれば、混乱が起き、修復するには大変な国民の負担が発生します。
そもそも予想外のことが起きるのが世の常です。
現にインフレ目標を何年も達成できなかった政府があるわけですから、簡単にコントロールすればいいとはならないわけです。
MMT論者は、インフレが進めば、徴税権を持った政府が税率を上げるという手法で手綱を締めればコントロールできると考えています。
そして、今まで金融政策に頼って、インフレ目標を全く達成できていないのだから、財政政策と合わせて推進していくべき、それしかデフレ脱却の方法は無いではないか、という意見になるわけです。
MMTは現実的なのか(ほぼ私見)
この部分は私見を書いていますので、興味のない方は飛ばしてくださいm(_ _)m
私見になりますが、日本政府と日銀と言っても、人間のすることですから、コントロールをうまくできない可能性も十分にあると思います。
事実、MMT論者も指摘する通り、金融政策によってインフレ2%を達成すると宣言していた政府は、何年経っても達成できていません。
インフレが進んだ時に引き締めるタイミングや、引き締めの水準をタイムリーに適切に判断して実行できるかという問題は付いて回ります。
よくコントロールしているという事例を考えれば、中国の不動産価格のコントロールを思い出します。
日本のバブルや世界恐慌などを大変研究していて、金融政策、財政政策のみならず、細かく開発用不動産の許可から、購入制限まで、相当な労力を注いでコントロールしようとしている状態です。
そもそも、これについても、今後もうまくいくのかはわかりません。
中国のように共産党の一党独裁ではない日本は、選挙もあり人気取りも必要なわけですから、世論に煽られて、適切な引き締め措置が取れない可能性もあると思われます。
つまり、積極的に放漫財政を許容するのは大いに危険ではないかということです。
もちろん、コロナ対応においては、状況に合わせて、大胆に財政出動を行う必要はあるため、短期的には、MMTと同様に、財政赤字を気にしている場合ではないと考えます。
一方、このような混乱期において見落とされがちなのが、景気対策のもう一つ、アベノミクスでも宣言されていましたが、構造改革という方法です。
税収にしても、経常収支にしても、企業の収益力、企業の商品開発、イノベーションがどうしても必要になります。
他国では注力分野に国をあげて支援しており、新たな有望企業が台頭して、起業家精神も育っています。
日本では、旧態依然とした大企業が中心にいて、大企業優遇が続いている状態です。
大きすぎて潰せないという企業はどこの国でもありますが、少なくとも他国では新しい企業の台頭があります。
GAFAにしても、中国のテクノロジー系の企業にしても、21世紀になって台頭した企業が躍進しています。
政府主導で、このような企業の新陳代謝や、注力するべき産業分野への支出強化など、見直すべき方針はまだまだあるのではないかと思います。
つまり、目先の財政出動とともに、企業の新陳代謝、イノベーションを起こせるような環境作りへの注力が必要であり、その部分においては、大胆な支出を厭わない姿勢が望まれるのではないかと考えます。
私たちが学ぶこと、考えるべきことは?
世の中の変化を感じ取る、興味を持つ
MMTは、これまでの経済理論の常識とは大きく異なっています。
そのため、MMTを知ることは、常識とされてきた経済理論との比較をすることになります。
つまり、ある程度経済の素養がある人は、改めて常識を振り返る機会になり、初めて学ぶ人は、比較することでより理解がしやすいというメリットがあります。
結論としては非常に端的な理論であるため、MMTに関心を持てば、そこから遡って、経済に関する基礎的な事項を確認する意欲が湧いてくるかもしれません。
財政政策、金融政策、構造改革、日銀の役割、市中銀行の役割、信用創造、国債の仕組みなどを理解できれば、経済の見方も大きく変わります。
そのきっかけとしても良い材料になるのではないかと思います。
生活への影響を考える
MMTのような考え方は、(個人的にですが)非常に面白いと思います。
このような考え方をきっかけに経済政策に対して興味関心を持つということが重要な第一歩です。
経済に対しての関心、関心や理解が深まれば、より政府や日銀が実施する政策の意味や私たちの生活への影響などを考える余地も増えるでしょう。
そして、世間の流れは今どうなっているのか、大局的な視点で考えることが可能になります。
世の中の主流な考え方や、空気が変わっていくことを実感すれば、より政策への関心も湧いてくることが期待できます。
そうなれば、もはや、政治経済はよくわからない、どんな政策でもあまり変わらないという考えから一歩踏み出し、積極的に情報を取りにいけるようになります。
自分たちで選ぶという意識を持つ
経済理論などは、経済学者が時間をかけて日夜研究しているものです。
同じように時間をかけてあれこれ検証してみたりデータを比較してみたりする時間は私たちにはありません。
しかし、経済理論や基礎的な知識さえ持っていれば、今行われようとしている政策は何を意味するのか、どういう世の中の流れになっているのかを知ることはできます。
日本は特に(アメリカでもそうですが)、選挙の投票率の低さが際立っています。
つまり、政府が実施する政策に関心がないということです。
様々な政策がある中で、経済は私たちの生活に直結する重要な部分です。
民主主義の世の中なのに、投票しない、もしくはあまり理解しないまま投票していては意味がありません。
経済への無知は、政治の分断をもたらすことを容易にさせます。
政治家としても、選挙に関心のない層よりは、票や献金に繋がる層だけを見ていればそれでよいという風になってしまいます。
極端な話ですが、経済政策に大きく影響を受ける経営者や大企業の経営層、そして社会福祉政策に敏感な高齢者層の意見が世論の主たるものになりかねないということです。
大企業は税制優遇や、補助金などを目当てにロビー活動に注力しています。
高齢者も自分たちの年金や社会保障などが減れば大問題ですから注目しています。
経済政策を行う政治家が、どのような方針を持っているのか、そしてそれが私たちにどのような影響を及ぼすのか、そのあたりをしっかり考えて興味を示していくことが、今後の日本のためにも、自身のためにもなるはずです。
まとめ
今回はMMTの考え方と従来の経済の考え方との違い、そしてこのような経済理論を考える意味について解説してきました。
自国の通貨で債券を発行できる国は、債務不履行に陥ることはない。
だから財政赤字を気にせず国債を発行して(国が借金して)、景気刺激策を進めてよいという理論。
✔️MMTが有効に作用するための条件
- 自国通貨建であること
- インフレが起きていないこと
- 経常黒字であること
MMTが、本当に機能するものなのか、それとも本当にとんでもない暴論なのか、ポイントは、国債を増発して、財政支出を増やし続ければ、もたらされるであろう過度なインフレに対して、どこまで政府がコントロールできるかどうかということでしょう。
MMT論者が主張するように、大胆な景気刺激策により、長年達成できなかったデフレ脱却は実現するかもしれません。
しかし、インフレが加速し、それに対して政府の引き締め(増税)が弱ければインフレは加速し、強すぎれば景気低迷をもたらします。
私たちにとって重要なことは、理論の正誤について議論に参戦することではなく、実際に行われる政策や考え方に関心を持ち、経済の仕組みや政策による影響を理解することです。
その上で、民主主義を機能させるべく、政策に対して意見を持ち、積極的に情報をとっていくことが必要なことであるのではないでしょうか。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
あわせて読みたい
以下の関連記事についても是非ご覧ください。
暗号資産(仮想通貨)、デジタル通貨、リブラの違いと現状、課題を整理