利益追求やコンプライアンスよりも前に道徳を修めるべき日本人

こんにちは!Jimmyです。

学校教育において、道徳の授業を強化する方針が近年になって打ち出されました。

今の社会だからこそ、必要になっていると考えられます。

 

渋沢栄一が、次の一万円札の肖像画になります。

その渋沢が主張していたのが、道徳経済合一説です。

道徳と経済は、一体不可分、利益の追求をするにせよ、その根底には道徳が必要。

人類全体、公益に資することに責任を持たなければならないということです。

 

今の時代、その道徳意識が欠如している人や企業が少なくありません。

今一度、道徳という価値を考え直す機会になればと思います。

道徳とルールの重点に大きな乖離

コンプライアンス

今の世の中、道徳が蔑ろにされ、利益追求が基本路線になっています。

企業である以上、利益を出さなければ継続できないため、利益を追求することも必要です。

一方で、道徳的な基準が、ほとんど意味をなさなくなっている職場もあるのではないかと思います。

 

法律(ルール)と道徳

利益を追求する中でも、絶対にやってはいけないことが多々あります。

当たり前ですが、やってはいけないことは、法律や企業内ルールとして明確に定められています。

違反すれば、社内での処罰のほかに、刑事罰や行政指導の対象になることもあります。

ですから、法律やルールを守るという意識はかなり広く浸透されています。

 

一方、道徳というものは若干抽象的な概念も多く、明文化されていません。

罰則もありませんが、古くから人が守るべきとされてきた行動指針であり考え方です。

人と関わる上で必要な指針です。

当然経済活動にも当てはまります。

 

しかし、今の世の中は端的に言って、法律や社内ルールさえ守ればよいという考え方が強く浸透していると言えます。

 

これを見てどう感じるか?

道徳を軽んじ、法律・規則だけに依拠している例を示します。

若干話が小難しくなりますが、出来るだけ簡略化します。

 

前提

金融取引などで、相場が絶えず動いているような類のものは、約定を決めてから契約書を交わしていては間に合いません。

そのため、口頭で即時に取引が成立するように、事前に書面で口頭約定が可能な旨取り決めをしておくケースが少なくありません。

 

✔️金融機関Z

✔️顧客企業X社
代表者Aさん
代表者Bさん(金融知識あり)

 

これからお話しする、金融機関Zと、その顧客X社のケースも、

会社の代表権を持った2名の代表取締役(AさんとBさん)が口頭約定の権限者になっていました。

 

金融機関Zの担当者は、ある金融商品を売り込もうとX社に営業をかけました。

X社の2名の権限者のうち、Aさんは、金融関連の経験や知識が乏しく、本件については全て、詳しいBさんを通すよう担当者にお願いしていました。

そこで、担当者は、Bさんに何度も売り込みをかけますが、検討の結果、リスクが大きいから取り組まないという結論に至りました。

 

ところが、必死な担当者は、諦めずに相場が動くたびに売り込みを続けました。

Bさんからは何度も断られましたが、次第にAさんにも連絡をして、状況を伝えるようになりました。

 

ある日、Zの担当者は、直接Aさんに相場のお知らせをかねて連絡し、いかに今状況がよいかを説明します。

Aさんからすれば、この件はBさんが決めるものだからと言ってあります。

当然自分だけではなくBさんにも連絡するだろうと思っていたAさん、個人的な感想として、「いいと思う、やってもいいと思う」旨を回答したのでした。

 

Zの担当者はその言葉を聞き逃しませんでした。

即、口頭約定を成立させました。

 

Bさんにとって、約定の知らせは、まさに寝耳に水。

自分の了解を取らずに、商品を勝手に契約されてしまったわけです。

 

慌てたのはAさん。

前からこの件はBさんを通してくれと話していたため、当然Bさんの了解なしに約定されるはずはないと思っていたわけです。

 

しかし、法律が定めるところの会社の代表者であり、権限者として事前に取り決めもされています。

法律的には、会社を代表してAさんがOKと言ったから約定したということになるわけです。

 

金融機関Zの担当者は、やりとりを記録に残していました。

残された記録だけを追ってみると、事前に商品説明を実施し、口頭約定の権限者を取り決めるための書類も交わしていた。

ルールで定められた通りに商品を説明、案内し、権限者であるAさん(代表取締役)に連絡して口頭約定した。

こうなっているわけです。

 

Bさんは契約の無効を主張しましたが、金融機関から受け入れられることはありませんでした。

その後の相場状況については、あくまで結果論にはなりますが、本商品によってX社は多額の損失を計上することになりました。

 

合法であればよいのか?という問題

確かにAさんも、代表者として不用意な発言をしてしまったという側面もあるでしょう。

法律的には、完全に無効を主張することは難しいかもしれません。

 

一方で、道徳的な観点から見れば、明らかに金融機関Zの担当者は悪徳です。

Bさんの了解を取らずに進めればどうなるか、容易に想像がつく話です。

顧客の信頼を失うことは間違いないでしょう。

少なくとも、同じく金融機関出身者として、この話を聞いた時に私はそう思いました。

 

この件を思い出すとき、さらに印象に残っていることがあります。

この話を、当時勤めていた同じ金融機関の同僚に話したときのことです。

すると、このような反応が返ってきました。

「それは明らかに代表者の脇が甘い。契約は正当。だって会社の代表者がOKって言っているんだから。Zの担当者は何も悪くない。むしろ、諦めずに食らいついて契約をとった、優れた営業マンだ!」

と、このように一蹴したのでした。

 

この反応を見ればわかりますが、考慮されているのは、法律、ルール違反をしていないかどうか。

それさえ満たしていれば、あとはうまくやる者の勝ちという価値観を垣間見ることができます。

少なくとも、道徳的な話を強制的にでも持ち出せば、褒められた話ではないことは誰もが認めるところだと思います。

しかし、問題はそこに思考が向けられていないということです。

 

道徳的な価値を蔑ろにして、利益主義に走る企業と社員。

それが進んだ結果、企業の不祥事や行政指導が増加しているように思えてなりません。

 

この事例を聞いてどう思うでしょうか?

 

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正しいことを貫くことの難しさと大きな価値

企業倫理の問題が多発している背景

企業倫理

企業の金儲け主義によるモラルハザードの問題は、特に1980年代以降目立つようになったようです。

その背景にはどのような価値観があるのでしょうか。

 

企業価値=利益?

企業であれば、企業価値の最大化を目指すべきとされています。

しかし、企業価値を数値で表すのは非常に難しく、どうしても会計上の数値が主な構成要素になります。

株価についても同様のことが言えます。

 

そうなると、企業価値を高めることが、そのまま利益をあげることに置き換えられることになります。

どうしても利益目線が強くなります。

 

結果的に、社員に課される目標は、いかに利益をあげるかということになります。

社員の立場からすれば、利益を求められるため、必死にそれに応えようとするわけです。

 

企業倫理=コンプラ=法令遵守?

企業倫理が注目され、研究されるようになってからは、意外とまだ日が浅いようです。

企業倫理という言葉自体、非常に曖昧でわかりにくいものだと思いますが、倫理という以上、道徳の概念も入っています。

 

goo辞書にあった定義を引用します。

企業の目的は契約に基づいた利益追求であるが、企業活動上で最重要かつ守るべき基準となる考え方のこと。守るべき基準としては、法令遵守はもちろん、自然環境や社会環境、人権保護といった道徳的観点から企業活動を規定し、組織として統率する考え方、仕組み、組織づくり、運用方法を含めた考え方。

 

しかし、実際の運営上は、コンプライアンス、つまり法令遵守と同義にとらえている企業が多いのではないかと思います。

実際に、コンプライアンスに関する部署は、多くの会社が設けていますが、その中に倫理委員会的な要素も含めている企業も少なくない印象です。

 

事実、コンプライアンスにも、法律以外の行動規範の意味も含まれますが、その場合も、あくまで明文化してルール化することが主な役割です。

 

先ほども述べた通り、抽象的な概念になりやすい道徳は、罰則に紐つけにくいため、強く経営層から伝えないと、形式的なものになりがちです。

 

実際、私もサラリーマン時代、法令遵守、ルールの遵守は徹底されていたと記憶しています。

具体的な事例研究や、勉強会、そして定期的な検査などもありました。

 

一方、道徳に関することは、会社で議論したこともなく、そのような規定を見た記憶もありません。(あったのかもしれませんが)

つまり、ルールを守っているかだけを徹底的にチェックし、その上で利益を最大化しようとする体制であったということです。

 

道徳教育の不足

企業としても、そして従業員個人としても、道徳的な意識が欠如している現状を述べてきました。

渋沢が主張したような道徳経済合一の形には全くなっていないことがわかります。

これはひとえに、道徳教育が不足していたからではないかと思います。

 

明治時代に、日本では教育体制が一新されましたが、その時に強調されたのが実学としての学問です。

近代化という命題があったため、止むを得ない部分もありますが、道徳、思想の類は脇におかれることになりました。

それが現在に至るまで続いているわけです。

 

抽象的になりやすい分野だからこそ、しっかり時間をとって思考し、自らの血肉とする必要があることに加え、

思想の類は、少年期に影響を大きく受けるため、この時期に考えることが一番効果的なのです。

 

当たり前のように受け入れてきた教育体制ですが、他国を見てみると、これまた当たり前に、道徳、思想、哲学を授業に盛り込まれていることが少なくありません。

日本もそろそろ、道徳教育に本腰を入れるべきだと思います。

 

なお、道徳的な価値観を養うのに、思想・哲学が必要な理由については以下の記事を参考にしてください。

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アメリカのエリート層の意識

規模の大きい話をすれば、アメリカで発生したリーマンショックも、企業の倫理観が問われた典型的な問題でした。

金融機関のモラルハザードが原因の一つとして指摘されたわけです。

それでもなお、投資銀行などでは、利益最優先、儲かればなんでもよいという姿勢が見事に復活しています。

アメリカでも道徳的な価値観が欠如している企業もあることは事実です。

 

一方で、アメリカやヨーロッパのエリート層は、かなり高い道徳観念を持っている人も少なくありません。

社会課題解決や、慈善活動に対しては意識の高さは日本よりもかなり先を行っている印象です。

世界で称賛されるような人格を持ったリーダーが、日本人には少ないと言われていることと無関係ではありません。

共通して言えるのは、欧米エリートたちは思想の勉強を若い頃に必ずしているということです。

(ついでに最近ではアートなどの教養にも造詣が深い人が多いようです。)

 

そこで、自分の生きる意義や、人生について深く考える機会があったのでしょう。

企業エリートばかりでなく、優秀な学生の中には、就職先としてNPOなどの非営利団体を選ぶ人が、日本と比べ圧倒的に多いと言えます。

 

出口治明さんの著書によると、アメリカ人大学生の就職希望先の人気は、

企業と公務員と非営利団体でちょうど同じくらいに3分されるそうです。

日本人の場合、例えば東大生の就職先を見ると、8割が民間企業に偏っています。

次に多いのは、官公庁です。

 

アメリカは特に、多様な国であるため色々な人がいます。

日本人以上に拝金主義丸出しで、金儲けに走る人もいるでしょう。

一方、社会課題に目を向ける人、公務員を目指す人も、同じくらい多くいるということがわかります。

 

思想や哲学教育による道徳観念の醸成という差が、日本と欧米のエリート層の違いの大きな要因ではないかと思います。

まとめ

経済成長も低迷し、企業不祥事などの問題が増えている昨今。

コンプライアンスの重要性が叫ばれて久しいですが、その中に入るべき道徳観念が欠如しているように思います。

 

企業などでは、利益追求と同じくらい、法令遵守は徹底的に指導されるようになってきましたが、そこに道徳観念が抜け落ちているということです。

 

結果として、法律、決められたルールに違反しなければ、あとは利益追求にひた走ればよいという考えを持つ人が多くなっている印象です。

そうなると必然的に、グレーゾーンを狙う人も出てきて、重大な違反をしてしまう人や集団が増えることになります。

 

日本では明治以来、道徳観念醸成のための思想、哲学などの教育がずっと置き去りにされてきましたが、今こそ力を入れるべきではないかと思います。

すでに社会人になっている人であっても、優先的に学び直し、考える時間を作るべきです。

 

何でもかんでも欧米を模倣したり比べたりするのはよくありませんが、思想に対する教養の差が、企業競争力のみならず、社会課題への意欲や、優れたリーダーの数としても表れています。

コンプライアンスや利益追求、出世競争などの前に、土台として強力な道徳を身につけるべきではないでしょうか。

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

哲学、思想、生き方、持つべき人格について、以下の記事も参考にしてみてください。

 

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