人新世の「資本論」【感想とおすすめする理由】

こんにちは!Jimmyです。

今回は、マルクス思想の専門家であり、哲学者の斎藤幸平氏の著書、『人新世の「資本論」』をお勧めします。

資本主義に疑問を感じている人は少なくないと思います。

ただし、取って代わるシステムなど現実的にはないから致し方ないのではないか。

そう思い、それ以上は深く考えられないというケースも多いと思います。

 

本書の主張が、そのまま代替案として成り立つかどうかはわかりません。

それでもお勧めするのは、新たな視点が豊富に詰まっているからです。

そして何より、私たちが個人として、考え行動する必要性について大いに気付かされるからです。

 

すぐに具体的な行動が各地から発生することは難しいかもしれませんが、行動予備軍育成としての効果が期待できます。

普段、組織や地域コミュニティにいるだけでは見えづらい視点であると言えます。

人新世の資本論 斎藤幸平氏著

著書の概要

地球の環境が限界を迎える前に、資本主義を終わらせ、脱成長の世界を目指すべきという主張になります。

際限のない経済成長を前提とした資本主義では、目下の環境問題は解決不可能という立場です。

 

この主張は、「資本論」の著者マルクスが、晩年に残したノートの内容が基になっています。

今まで研究されてこなかった、マルクスの晩年の主張として、新たな解釈がなされています。

ちなみに、人新世とは、完新世に続く、想定上の地質時代を指すそうです。

人類の発展が、地質や生態系にまで大きな影響を与えていることから提起された名称です。

 

認識するべき資本主義の現状

途上国からの搾取・掠奪

先進国の快適な暮らしを支えているのは、周辺国からの搾取と掠奪であるという構図です。

途上国にて、厳しい労働環境で搾取されている労働者がいます。

その結果、先進国では、安価な商品・製品を享受しているという事実は、多くの人が認識していることでしょう。

 

さらに、先進国で発生した問題を解決するために、途上国の資源が掠奪され、住環境にも悪影響を及ぼしています。

この現実は、遠い異国で起きているということで、見えにくいようになっています。

こうして、気づきながらも見ないようにすることで、外部(周辺国)に負担を転嫁する構図が続いています。

 

排出される二酸化炭素の約半分は、富裕層上位10%によってなされていると言われています。

先進国により深刻化した環境問題の煽りを最も受けやすいのは、周辺国という事実も見逃せません。

 

利益追求では環境対策は不可能

環境を意識した戦略を策定することは、もはやどの国家、企業においても当たり前のように認識されています。

ところが、最近では、環境問題をビジネスチャンスと捉えている傾向が強いと言えます。

つまり、成長のためのエンジンとして捉えているということです。

 

いくらエネルギー利用の効率化が実現したところで、売上が増えれば、使用量自体は増加するわけです。

結局、エコかどうかに関係なく、売上を増やして成長しようとするのが資本主義の本質です。

環境に配慮しているようにごまかそうとする「グリーンウォッシュ」も問題になっています。

それも資本主義社会の必然の成り行きとも言えます。

二酸化炭素削減の進捗も、事実として思わしくなく、削減目標の達成も危うくなっています。

それでも、各企業、あるいは各人からしてみれば、どこか他人事なのです。

 

脱成長とコミュニズム

そのような状況を考えると、成長を前提とした資本主義では対処不可能ということになります。

そこで、晩年のマルクスが目指したのが、脱成長とコミュニズムでした。

マルクスのコミュニズムと聞くと、共産主義のイメージが強いかもしれませんが、そうではないようです。

 

社会的に人々に共有され、共同管理されるべき富をコモンと呼びます。

国家が管理するわけではない点、従来の共産主義とは異なります。

マルクスは、生産手段をコモンとして、市民が管理運営する社会を想定しました。

さらに、水道、電気、住居、医療、教育などもコモンとして管理することを掲げました。

競争によらない相互扶助の社会の実現を企図していたということです。

こうすることで、経済をスローダウンさせ、持続可能な社会を目指すということになります。

感想&お勧めする理由

新たな視点が得られる

本書を読む意義は、新たな視点を得るということかと思います。

理想論すぎて現実的ではないという意見もあるようですが、だからこそ、今までにない様々な気付きがあります。

資本主義の世の中が続いているため、理想論のように聞こえるのは、ある意味当たり前なのです。

 

日常、組織に所属し生活していれば、搾取と掠奪という現状を考える機会も少ないでしょう。

あるいは、既に正当化されており、考えることがなくなっているとも言えます。

世界の各地で組織されている協同組合や、独自の環境対策に取り組む自治体の事例なども参考になります。

 

一つ一つの運動の影響力の強さという問題はありながらも、そういった事実を知ることに意味があります。

実際に一つの社会システムを変えるのには、いくつものステップが必要でしょう。

そのプロセスの第一歩として、大変良い「教材」となるのではないかと思います。

 

考えることを啓発する力がある!

本書で取り上げられている、コモンの運営主体は、市民の集まりであり、国家に全てを任せるというものではありません。

つまり、自分たちで考え、自律的に運営をするという要素が強くなります。

それを前提とすれば、極めて高度な民主主義が必要となります。

市民が主体的、意欲的にに参加することが求められるようになります。

 

資本主義の先を見据えるのであれば、晩年のマルクスが主張するコミュニズムではなくとも、民主主義の高度化は必要です。

社会が複雑化する中で、全てを政治家、官僚だけで解決・判断することは難しいでしょう。

また、それらの動きを市民が監視すること、把握することはさらに難しいと言えます。

そう考えると、市民が主体的に運営に参画し、知見と判断力を持つということの必要性が浮かび上がってきます。

 

本書を読んでいると、所属している組織の仕事のことだけを考えていればよい時代ではないことを思い知らされます。

視野を広げて、市民としての自分、もっと大きい集団としての自分というあり方を考えるきっかけになると思います。

 

行動予備軍でも意味がある

正直な感想として、本書を読んで、すぐに何かしらの具体的行動を起こそうとはならないと思います。

それでも、本書には、明確な理想と、資本主義を終わらせなければならない理由が十分すぎるほど示されています。

触発される部分があれば、さらに考え、調べるための布石になるはずです。

 

現行の資本主義は弊害が多く、間違った方向に進んでいると感じている人は増えています。

市民運動や、自治体独自の取り組みなどは、実際に起きていることは確かです。

 

全体の3.5%の人が、非暴力的なやり方で本気で立ち上がれば、社会は大きく変わる。

平和活動家のエリカチェノウェス氏の言葉が紹介されていました。

今すぐに動くことは容易ではないものの、考えを温め、3.5%に加わる予備軍となることにも意味はあるはずです。

 

書籍はこちら

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

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