こんにちは!Jimmyです。
近年、世界各地で、人権問題や、民族問題、さらには過去の歴史問題を巡って訴訟や争いが増えているようです。
日本を取り巻く環境で考えれば、韓国との間では、徴用工や慰安婦問題、中国との間でも、戦争認識に関する問題があります。
日本と関係することだけを考えても、それらを断片的に見ると、偏った見方になってしまいます。
背景を理解するには、大変時間もかかります。
ましてや世界各地で起きていることなどは、聞いてもなかなか理解できるものではありません。
それは、取材をする人、報道する側にも言えることです。
複雑化する世界で、偏った情報、間違った情報が伝えられるリスクが高まっています。
そういうわけで、世界で起きている歴史問題や、背景が複雑な問題を考えるのは大変です。
大変なばかりか、知らないうちに間違った認識を持ってしまう可能性もあります。
そんなときに、現代の国際秩序を全体像で捉えられるような視点があると、問題を考え整理するのに大変役に立ちます。
そのような視点を授けてくれる図書を紹介し、重要なポイントを解説します。
『教養としての歴史問題』という本です。
今の国際秩序がどのように作り上げられたのか、現代史の大きな流れの中で捉えることができます。
この視点は、歴史認識という問題だけではなく、様々な場面で役に立つ武器になるのではないかと思います。
国際秩序はこれだけ歴史が浅い!
「国際社会、国際秩序」と当たり前のように言われていますが、世界各国が繋がり合ったのは、歴史の中では最近のことです。
大航海時代が15世紀に始まり、そこから植民地主義が生まれました。
資本主義の発展とともに、ヨーロッパ勢力は徐々に拡大していきました。
当然、この頃には国際秩序などありません。
第一次世界大戦後になって初めて、世界の平和機構である国際連盟が誕生しました。
それが1920年のことです。
国際的な秩序が作られ始めたのは、ほんの100年ほど前のことです。
長い歴史によって積み上げられたものではありません。
つまり、この100年で強かった国が主導して作られた価値観、正義によって世界は動いているという構図です。
おすすめの参考図書 教養としての歴史問題
『教養としての歴史問題』
著者:前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲
歴史学、社会学の専門家による著書。2020年発行。
問題提起として、歴史修正主義の台頭があり、それに対してアカデミズムがいかに向き合っていくべきかというのが主要なテーマ。
本書全体に共通するテーマとしては、歴史修正主義の台頭に、アカデミズムとしてどう向き合うかという問題があります。
それについても重要な考察がなされているのですが、今回は、国際秩序を学ぶという視点で考えます。
歴史認識はもちろんのこと、これからの世界との向き合い方、進み方を考える上で、役に立つ視点です。
簡単に整理すると以下のような変遷をたどります。
- 大航海時代以降、植民地主義が生まれ、侵略や奴隷貿易などが盛んに。二度の世界大戦に発展。
- 第二次大戦は、ファシズムに対する連合国側の勝利という歴史観。連合国が正義という価値観で新たな国際秩序がスタート。
- 植民地独立の流れに。旧宗主国側は、植民地主義の責任問題に発展させないよう、経済支援などで解決を促す。
- 旧宗主国指導者らが、植民地の負の記憶を封印しようと画策。
- 戦争責任は追求するが(ドイツ、日本)、植民地主義の責任は追求しないというダブルスタンダード。
- 戦後以降も、旧宗主国が権勢を維持した国際社会。植民地支配の歴史は長い間不問に。
- 90年代以降、新興国において民主化が進み、国際地位も向上。改めて植民地主義の責任を追求する動きが発生。
- 旧宗主国としては、部分的に道義的責任を認めるものの、あくまでも法的責任は認めない状態が続く。
世界の秩序と価値観
国際秩序、国際ルール、グローバルスタンダードなどと言いますが、長い歴史があるわけではありません。
戦勝国によって作られ、経済発展を遂げた先進国(結果的に旧宗主国)によって維持されてきました。
連合国側が正義の価値観ですから、このような流れになります。
一方、第二次大戦における、戦争責任は明確にされました。
敗戦国であるドイツ、日本は戦争責任を追求され、国際的に裁きを受けたわけです。(ニュルンベルク裁判、東京裁判)
ただ、このときも、戦争の原因として切り離すことができない植民地主義自体の責任は追求されていません。
その後、両国とも経済発展を遂げ、結果的に植民地主義時代の旧宗主国が経済大国となり、国際秩序の中心であり続けました。
そうなると、だれも植民地主義の責任問題などとりあげるはずはありません。
旧宗主国は、植民地問題を不問にして解決状態にすることを条件に、経済支援を実施しました。
協調関係、良好な関係というイメージ作りを目的に取り組んだのです。
戦後の独立問題で勃発した残虐行為も、歴史から封印され、あくまで協力関係が前面に打ち出されました。
実際には、イギリス、フランスなどの戦勝国でも、戦後数多くの残虐行為が行われていました。
正義とはとても言えない状況もあったようですが、経済支援のもとで封印しました。
90年代に入り、冷戦の終焉に加え、先進国に経済発展で遅れを取っていた国でも、民主化と国際地位の向上が達成されていきました。
植民地での迫害、独立運動時の残虐行為に苦しんだ側の人にとってみたら、決して記憶から消し去ることのできない事実です。
一方、旧宗主国側としても、すでに自分たちも知らない数十年前に起きたことです。
過去にさかのぼって、国として法的責任を認めるということは容易にできる話でもありません。
今の国民に責任があるわけでもありません。
明らかな証拠のある残虐行為などについては、個別に道義的責任として賠償を実施し、あくまで植民地主義の責任は認めないというのが現状です。
日本の秩序と価値観
そういった世界の全体像の中で、日本の問題を考えると、少し違った角度から見ることができるのではないでしょうか。
日本では、多くの場合、満州事変から大戦までは誤りだったとする見方が多いかと思います。
なお歴史修正主義では、そのような考えは自虐史観だとして、真っ向から批判しています。
戦勝国の都合がよいように歴史認識の国際基準が作られていると言われれば、たしかにそういった面は否定できません。
だから、明治維新から列強の仲間入りをするところまでは間違っていない、という印象が強いのではないかと思います。
どれが正しいと断言するものではありませんが、考える背景を加えることで、見方が少し変わるのではないでしょうか。
そして何より、戦後の日米関係、そして多くの日本人が持つ、欧米への憧憬、ときに崇拝。
これも、戦後の戦勝国正義の価値観の中で作られてきた関係性とも考えられます。
今の契約社会、ビジネススタンダードも、そのような流れから考えると、また違った展開もあってよいかと思えるかもしれません。
ただ、これを当然の摂理として受け入れるかどうかは別の話で、現状を知った上で、あるべき姿を考える余地はあるでしょう。
ちなみに、アヘン戦争以降、弱体化し、長期間にわたり低迷した苦い経験を持つ中国では、
学校教育でも明確に、絶対に強い国である必要があると教えられるようです。
そういった過去の背景と、現在の国際体制を勘案して考えると、荒唐無稽な方針とも言えない気もします。
まとめ
国際秩序、グローバルスタンダードなどと言われれば、たいそうなものに聞こえます。
ところが実際は、歴史も浅く、戦勝国を正義とした価値観からスタートした基準であり普遍的なものではありません。
日本を取り巻く歴史認識や歴史問題も、この国際秩序、価値観と大いに関係していることがわかります。
どの問題においても、局地的に見れば偏った認識になりかねません。
たとえば、日本と韓国だけの関係を見て議論するわけにはいきません。
全体像を認識しておくと、見方も変わるはずです。
歴史認識はもちろん、これからの時代の流れやあるべき姿を考えるにあたり、現在の国際秩序の成り立ちをおさえておくことは非常に有効です。
当たり前と考えてきたことにも、改めて再考の余地があることに気づくこともあるでしょう。
過去を振り返り考察するだけではなく、未来を考えるにあたっても、大変重要になる視点ではないかと思います。
正解のない時代だからこそ、生き方、社会のあり方、向かうべき方向性に対して個人個人が考えていくことが重要です。
また、その思考が自分の人生を歩く上で大きな武器になると私は考えています。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
なお、今回の参考図書には、訴訟や争い、そしてその対応経緯などの詳細事例も豊富に紹介されています。
また、歴史修正主義と歴史学がどのように向き合うかという考察、社会学的視点で見た歴史修正主義などの考察もなされています。
非常に興味深い考察です。
参考図書はこちら
現代社会を理解する上で必要な資本主義社会、自分の人生を送る上で必要な考え方など、関連する以下の記事も参考にしてみてください。
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