人を見る目があるという過信は捨てたほうがよい理由

こんにちは!Jimmyです。

「人を見る目がある人」とはどのような人だと思いますか?

様々な人と会う経験を積んだ人、毎年数百人と面接をする人事のプロ、心理学や人相学に詳しい人?

このような人は、少し話しただけで人を見抜いてしまうという話を聞いたことがあるかもしれません。

 

しかし、瞬時に、あるいは短期間で人を見抜くことなど、そうそうできるものではありません。

自分と背景や考え方が似通った人、よく接してきたタイプの人であれば、直感が作用することもあるかもしれません。

一方、今の時代、自分と背景や根本的な考え方が全く異なる人と会う、話すという機会も増えています。

今後は更に増えていくでしょう。

そんな世の中で危険な考え方の一つが、「自分は人を見る目には自信がある」という思考です。

 

人を見る目を過信していると、時間をかけてじっくり見るべきポイントを見落とすばかりか、自分と周りに大きな損害を与えかねません。

今回は、いかに人を見る目が危ういものであるかについて、そして持つべき視点と考え方について示します。

いかに人を見る目が役に立たないか

人を見る目

知らない人を見極めるプロがAIに惨敗

マルコム・グラッドウェル氏による、『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』という本が、アメリカで150万部を超える売れ行きだそうです。

タイトルの通り、「知らない人と話すこと」について書かれた本ですが、

知らない人とコミュニケーションをとり、相手を正しく理解する、判断することがいかに難しいか、気づきを与えてくれる本でした。

 

その中で紹介されていた事例の一つ、裁判官が被告人に対して行う「保釈の可否判断」が印象に残っています。

 

保釈の可否判断の際、プロフィールや前科などの情報が、裁判官に与えられることはもちろん、

大事な決定を下すことになるため、裁判官は、被告人と直接対面して判断するように定められているそうです。

人道的に考えても、必要なことであると考えられます。

 

裁判官は、被告人と向き合い、目を見て話し、態度を観察します。

仕事や家族の状況、弁護士からの意見などの情報も勘案します。

まさに、様々な角度から見て、保釈を許可するべきか(保釈金の設定をいくらにするか)を真剣に考えます。

 

ある期間に、ニューヨークの裁判官が判断した55万強の事案のうち、釈放が行われたのは40万強だったそうです。

そこで、専門家チームが作ったAIに、その55万件強の被告の前科と年齢などの基本情報を与え、同じく40万人の保釈者リストを作成するよう指示しました。

 

そして、どちらの判断が、より再犯率が低かったのかを検証したということですが、

結果はなんと、AIの圧勝で、AIが選んだ40万人のほうが、25%も再犯率が低かったそうです。

 

もちろん、機械ですから、被告と向き合うこともなければ、見た目の情報、その他細かな情報は一切ありません。

 

裁判官が、保釈すべきか迷い、悩んでいた被告人のタイプも、AIが示したタイプの分布によると、てんでバラバラ。

AIが、高い確率で再犯を犯すと判断した高リスクの被告にも、裁判官は保釈を認めており、裁判官の判断の一貫性は見られないという結果だったそうです。

 

おそらく、冒頭に例示した、人生経験豊富な人や、人事のプロなどよりもさらに高いレベルで、人を見る目があると期待されるのが裁判官でしょう。

その裁判官が、プロフィールだけを入力して判断させた機械に惨敗したのです。

わざわざ対面して、目を見て、言葉を聞いて、誠実さや内面を判断する時間は何だったのかということになりかねません。

 

ここから得られる示唆や考えさせられることは、非常に多方面にわたり、単純な見解を導き出すことはできません。

それでも、人を見る目、特に知らない人を判断する目という意味では、本当に当てにならないということを思わずにはいられません。

 

過信は弊害

人が、直接他人と対面して判断を誤ってしまう原因の一つとして指摘されているのが、

『非対称な洞察の錯覚』と呼ばれる錯覚の一種です。

相手よりも自分のほうが洞察力があると思ってしまう錯覚のことです。

 

つまり、自分は繊細で複雑、目の動きや態度だけでは、相手は自分を判断することなどできないと思う一方、

相手は単純であり、態度などを見ていれば判断できると思ってしまうということです。

 

多かれ少なかれ、自分は、人と直接会うことで相手を判断できると考えているはずです。

その証拠に、例えば自分の子供を預けるベビーシッターを選ぶ状況を想像すればわかると思います。

書類にある写真とプロフィール、実績だけで選ぶ人はまずいないでしょう。

 

直接会って、話して、目で見て判断する、安心するという人がほとんどのはずです。

 

相手が本当の自分をごまかそうとしているかもしれないのに、実際に会うことを絶対視しているということは、それも含めて判断できる、怪しければわかると考えているからでしょう。

 

「錯覚」ですから誰にでも起こり得ることですが、

特に自分の能力や経験、実績に自信がある人ほどこの傾向は強くなるのではないかと思います。

『トーキング・トゥ・ストレンジャー』で示されている別の事例として、ヒトラーの人物像を見誤ったイギリスの重鎮の例が示されています。

 

ヒトラーに直接会うことができた、数少ないイギリス政府側の人間の一人、チェンバレン元首相は、

「直接会い、話したことで、信頼に足る人物であることを確かめることができた、自分に対して正直に語ってくれた」

と確信し、ヒトラーの署名を得た合意書を高らかに掲げました。

後の結果はご存知の通り、見事に裏切られる形となりました。

 

直接会っていない多くの政府関係者は、ヒトラーを信頼するべきではないと判断していたにもかかわらず、自分が会った感覚を優先してしまった結果、対処を誤ってしまったということです。。

 

直感重視論も出てくるが

このように、直接会って、様々な角度から会話をしたり、情報を考察したりしても、

そこでの判断は当てにならないことも多くあります。

そんな状況もあるからなのか、「直感」を重視するべきという声も聞かれます。

 

ただし、直感は、霊的なものでも無根拠なものでもありません。

これまでの人生で経験して、思考を繰り返したことが積み重なった結果、脳が一瞬で判断した答えであると考えるべきでしょう。

 

同じ会社に勤める、年齢の近い同僚と初めて会った時の、「いい感じの人だ、仲良くなれそう」という直感は、かなり当たると思います。

国も同じ、会社も同じ、年齢も同じであれば、かなり似通った背景や価値観である可能性が高いでしょう。

これまで経験してきた判断や自分の感性が通じる部分が多いのです。

 

しかし、先ほどのニューヨークの裁判官のように、毎回、出生地も背景も、言語も年齢も、信条も教育背景も全く異なる人と相対すれば、直感で判断できることはほとんどないと想像できます。

 

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人を見る目

一瞬で人を見抜くという考えを捨てること

日本でも、画一化から多様化への変化が進んでいます。

今まで以上に、人を見る目を当てにしないほうがよいと言えます。

一瞬で他人を見抜こうと思わないこと、見抜けると思わないことが一番大事ではないかと思います。

わからなくて当然、見抜けるはずがないのです。

 

間違った思い込み、慢心をなくすだけでも良い方向に向かうはずです。

面接官などをしている人で「私は経験が豊富だから、一度会って話せば大体のことはわかる」と言う人ほど、ざるだと思うべきでしょう。

そういう人ほど、思い込みやステレオタイプに縛られて判断しています。

 

大事にすべきは、一瞬で人を見抜く、見極めるという発想を捨てること、

時間をかけて、判断しないとわからない、それが自然であると考えるべきです。

つまり、簡単に相手を見切る、盲目的に尊敬するなど、すぐに態度を決める必要はないということです。

 

渋沢栄一流に学ぶ人の見方

特定の場面で、相手が見せる表情や言葉、態度ではなく、普段からの行動を見ます。

裁判官のケースでは難しいですが、仕事で何度も関わる人であれば可能であり、より現実的でしょう。

 

渋沢栄一が示した人物を判断する時の基準が参考になりますので紹介します。

明治維新以降のビジネスの立ち上げを誰よりも多くこなしてきた人です。

よからぬ考えを持った人とも相対する場面、人格を見極める場面も多くあったことでしょう。

 

その渋沢曰く、人を判断するのに、3段階あるそうです。

まずは外見や行動そのものを視ること、表面的なもの、第一印象と考えればよいでしょう。

(これは誰でもすることです)

 

次に、その人はどんな動機で行動をしているかを観ることです。

ここが大変重要なポイントです。

 

行動自体は素晴らしくても、背景にある動機を観察すると、よくない精神を垣間見ることになるかもしれません。

いくつもの行動を見て、必ずその動機に注目していれば、難なく見えてくることも珍しくありません。

 

保身、私心ではなく、公益に資すること、世のため人のために行動していることを渋沢は是としています。

そこまで厳格ではないにせよ、割と純粋に他者のために動いていたり、手を差し伸べてくれる爽やかな人もいるものです。

舌先三寸で、自己中心的な考えだけで動いている人とは、少し違った動き方、動機づけが確認できるでしょう。

把握しておくべきポイントです。

 

それだけにとどまらず、さらに厳しい3段目があります。

その人は、「どんな時に心が安らぎ、何に満足して生きているのか」を推察すること、とされています。

人生における哲学や価値観、使命感までも見てしまおうというわけです。

行動も善い、背景にある動機も善い、

それでも単に、「不自由なく、衣食に困らず、気楽に暮らしていければいいや」という価値感であればどうでしょう。

強い軸がないため、状況によっては、悪い誘惑に簡単に流される可能性もあるというふうに、渋沢は警鐘を鳴らしています。

 

つまり、「行為、動機、何に満足するか(人生観)」という三拍子が揃って正しくなければ、その人は正しい人とは言えないという厳しい基準を設定しています。

 

ここまで厳しい基準を受け継いでしまえば、自分自身に矛盾を感じることもあるかもしれません。

そういう意味では、自分を律することも、他者を判断する上で大変重要な大前提であることがわかります。

この話になると趣旨から逸れるため、詳細はやめておきます。

(項末のリンクを参照にしてください)

 

今の時代、この基準では、そうそう正しい人、信頼できる人など見つからないかもしれません。

基準は幾分か緩く設定するにせよ、人を観察する上で必要な視点であり、取り入れる価値は十分にあると思います。

逆に、この基準を満たすような人がいれば全力でついていくか、教えを請うか、応援させてもらうようにするとよいでしょう。

 

どんな行動をするのか、背景にはどんな動機があるのか、どんなことに満足や安らぎを感じる人なのか。

 

このような視点で考えれば、近づきすぎず、距離を取りつつ、判断することもできるようになるでしょう。

 

渋沢の偉業を考えても、ここまで観察するからこそ、激動の時代に、数多くのビジネスを軌道に乗せ、しかも数多くの良くない誘いに惑わされずに進むことができたということでしょう。

 

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まとめ

人を見る目がある、ないということをよく耳にしますが、

知らない人、背景が異なるような人に対しては、人を見る目などほとんど当てになりません。

 

経験豊富で、百戦錬磨の裁判官ですら、多様な被告人の保釈判断でAIの判断に負けてしまうほどです。

(ただし、だからといって保釈判断に裁判官は不要というのではなく、道義的な観点からも必要だと思います)

 

日本も、多様性が進む時代に入りました。

一瞬で、あるいはごく短期間で、人を見極めることができるという考えは持たないほうがよいでしょう。

 

人を判断する方法として、第一印象、表面的な行動を見るだけでなく、

その行動の背景にある動機を観察すること、そしてその人が何に対して安らぎを覚え、満足するのか、人生観をも推察すること。

それでこそ、人を判断できるという渋沢栄一の教えが参考になるのではないかと思い、今回紹介することにしました。

 

いささか厳格ではありますが、それほどしっかり人を見て、時間をかけて判断していけばよいという参考にはなるのではないかと思います。

 

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

参考図書

今回参考にした図書はこちらです。

 

 

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