学校で教えられる歴史は誰が決めているのか?
こんにちは!Jimmyです。
以前、歴史を学ぶ意義について記事を書きました。
今回は、歴史認識についての国家間の違いと、視野の狭い偏った情報しか得ていない可能性について書いていきます。
まず、歴史教育における根本、「何をどう教えるか?」についてです。
学校では教科書を使って授業が行われます。
私たちが当たり前のように使用していた歴史の教科書の内容。
誰が決め、誰が検査しているのでしょうか。
私は子供の頃、教科書に書いてあることは正しいことだと思っていました。
ほとんどの子供がそう思うでしょう。
日本の歴史教育の内容を決定しているのは日本国(文部科学省)です。
教科書が発行され、生徒に届くまでは以下の通りです。(文部科学省HPより抜粋。)
一言でまとめれば、学校で使われる教科書は、全て国のお墨付きが必要ということです。
①各教科書発行者(民間の教科書発行業者)は、(国が作った)学習指導要領等をもとに図書を作成し、文部科学大臣に検定申請します。
②申請された図書は、文部科学大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会に諮問されます。文部科学大臣は、審議会の答申に基づき検定の合否を決定します。
③採択の対象となる教科書について、学校の設置者である都道府県や市町村の教育委員会(国立、私立にあっては学校長)が、どの教科書を使用するか調査研究を行い、その地域、学校に最もふさわしい教科書を採択します。
④採択された教科書は、教科書発行者により発行(製造・供給)されます。
⑤供給された教科書は、児童生徒に届けられ,使用されます。
偏った情報を鵜呑みにしている可能性
日本の歴史教科書の内容について、関係各国と論争になることがしばしばあります。
近年では、「新しい歴史教科書をつくる会」によって作られた教科書が、物議を呼んだことを覚えている人も多いと思います。
時々ニュースに取り上げられ、話題に上がることもあります。
歴史認識が国家間で違いがあることは、誰もが知っていることでしょう。
しかし、日本の歴史認識が間違っていると思う人は少ないのではないでしょうか。
私もそうであったように、教科書に書いてあることは事実だと、基本的に子供はそう認識します。
よく韓国や中国が、歴史認識の訂正を求めたり、謝罪を求めて過激な言動やデモをしたりといった光景を見ることがあります。
日本人の多くは、それを冷めた目で見ています。
特に韓国、中国の歴史認識は、最初から間違っていると決めつけているのかもしれません。
少なくとも私は、高校生の時に、このような外国からの主張を聞いた時、日本が間違っているとは全く考えませんでした。
特に韓国、中国はおかしな国であるという印象を持ちました。
国が国民を情報統制し、マインドコントロールをしているのだと思っていました。
正しい歴史を教えていない、だから、国民は間違った認識を持ってしまっている、それでデモをしているのだと本気で思っていました。
テレビニュースを見れば、翻訳されて伝わる外国の主張は、敵対的かつ一方的で、感情を煽るように聞こえます。
そのようにメディアが工夫しているのでしょう。
そのような報道を見ているうちに、一層韓国、中国に対する印象が悪くなっていきます。
ただ、今になって強く思うのは、自分の歴史認識を決めつけないことが重要、ということです。
色々な見方ができますが、メディアや学校教育は、あらかじめ決められた方針に基づいて運営されます。
それを鵜呑みにしていると、偏った見方のまま、人生を過ごすことになりかねません。
日本の報道に対する違和感
私は、7年半の中国勤務を通して、中国の歴史に対する見方について学ぶ機会がありました。
日本を離れたことで、客観的に日本を見るということも経験できました。
日本の報道も恣意的で、国が意図しないものは報道されないようになっているのだと気づきました。
そうであれば、教科書についても、都合の悪い部分を載せないようにしたり、授業を短くしたりすることは、どこの国でも行われているだろうと思ったのです。
考えてみれば当然ですが、愛国心を持たせることは、どの国にとっても重要なテーマです。
際どい話題は、あまり表に出さないほうが得策であると、教える側は考えるでしょう。
そう考えるようになったのは、中国の経済に対する報道のされ方と、自分が目の前で見ている現状との大きなギャップがきっかけでした。
新聞やニュースでは、中国経済についての記事が、毎日のように飛び交っています。
私が中国に着任した2011年当時から、「バブル崩壊目前」、「不動産価格が異常」、「大減速の兆候!」のような書きっぷりが目立っていました。
実際に中国経済を肌で感じてみて、日本の報道内容には疑問を持つようになりました。
大減速どころか、個人消費には勢いを感じ、不動産需要が実需層によって支えられている現実を知りました。
事実、2011年当時から今に到るまで、中国は成長し、目まぐるしく変わっていきました。
経済成長は、日本も認めるところでしょう。
実際に私が知っている中国と、日本で報道された中国のギャップが非常に大きい。
現在の出来事においても、このような状況です。
この事実から考えると、歴史のように過去に遡った出来事を解釈するにあたり、自国が有利なように解釈しないはずはありません。
つまり、日本も情報操作、少なくとも情報の選り好みをしているのだろうと考える方が自然です。
中国に来るまでは、日本での報道は、概ね正しいと思っていましたが、客観的に考えれば、それは偏った考え方です。
第二次世界対戦中も、日本が劣勢に立とうとも、日本軍の快進撃ばかりが取り上げられていました。
いかに限られた、恣意的な情報しか流されていないかがわかります。
学校で習った近代史は一瞬
さて、日本の歴史の教科書を見ると、近代、特に戦争(世界大戦)のあたりは、それほど情報量が多いようには見えません。
大変大事な部分であるにも関わらず、習った記憶があまり無い、もしくは少ない人が多いのではないでしょうか。
私の記憶でも、近代以降になると、なぜか早送りで授業が進められ、先生から詳しい解説をされた記憶がありません。
日本人は、中国や韓国が歴史のことで「なぜこんなに熱くなっているのだろう」と不思議に思っている人が多いようです。
それは、この戦争期間中を含む近代史については、日本では、あまり触れられないからではないでしょうか。
そのような背景もあり、海外からは、日本人が歴史認識について自分の意見を言えないことに疑問を持たれることもしばしばです。
第二次世界大戦の教訓は何か
実際に私たちが受けた教育も、国が作った指導要領に基づいています。
では具体的に、第二次世界大戦について私たちが実際に習って、特に覚えていることは何でしょうか?
一番記憶にあるのは、原爆ではないでしょうか?
広島と長崎に原爆が落とされた。
世界で原爆を落とされたのは日本だけ。
今でも後遺症に苦しむ人がいる。
原爆は恐ろしい、戦争は恐ろしい、絶対に戦争をしてはいけない。
再び戦争を起こさせない、それが今を生きる日本人の責務であると。
このくだりはほとんどの人が知っています。
原爆ドームが教科書に載っていたのを覚えている人も多いでしょう。
また、国家総動員の元、お国のためにと我慢した国民の生活、本土空襲での被害、神風特攻隊の話なども多くの人が知っています。
では、日本が東南アジア諸国に侵攻した話、陸海軍、日本政府の戦争に対する姿勢や、誤った判断について、詳しく解説されたことがあるでしょうか。
私はほとんど記憶にありません。
あったとしても、流れるように終わったと思います。
これでは、日本は戦争の被害者のような印象をもつ子供がいてもおかしくありません。
韓国、中国が歴史問題を取り上げてきても、当然にしてキョトンとしてしまいます。
原爆は恐ろしいもので、それが再び投下されるようなことがあっては絶対にならない、これは正しいことだと思います。
しかし、第二次世界大戦から学ぶべきこと、考えるべきことは平和の尊さだけではありません。
日本の陸軍、海軍の判断がどうであったか、
当時の日本の指導者たちの考え方、慢心がどれほど自国に被害を与えてきたか、
つまり日本人は被害者ではなく加害者でもあり、政府も大きな間違いを犯す、大事な決断ができない人間は山ほどいる、
これは大変重要な示唆として一人一人が認識するべきことです。
私たちが属する組織や社会にも、当然同じようなことが当てはまります。
中国の歴史認識に接触 918博物館
中国、瀋陽にある918博物館。
柳条湖事件からの日中間の出来事、及び中国から見た抗日戦線の歴史がジオラマ等を用いて展示されています。
柳条湖事件が発生した1931年9月18日を、中国人はほぼ全員知っています。
日本の侵略が始まった日とされています。
「瀋陽に来たからには見ておかないと」という思いで行ってみました。
中国語はもちろん、英語、そして日本語の解説もあります。
平和を訴えるというよりは、愛国心を煽っているという印象がまず先立ちます。
日本が、また帝国主義に走らないように、自国民(中国人)は正しい歴史を深く刻み込み、監視する必要があるという趣旨で締めくくられています。
当然、全てが正しい情報とは思えないのですが、中国人が学んだ歴史に触れることができました。
731部隊をご存知でしょうか。
918博物館の一画にも731部隊のことが展示されています。
731部隊 (コトバンクより)
旧日本軍の特殊部隊で、正式名は「関東軍防疫給水部」。旧満州(現中国東北部)ハルビン近郊の平房に設置された。ペストやコレラによる細菌兵器の開発にかかわり、実際に使用したとされる。「マルタ」と呼んだ中国人やロシア人の捕虜らに、伝染病感染や凍傷などの人体実験を繰り返し、多くの犠牲者を出したと言われている。
身の毛もよだつ話ですが、当時日本軍による人体実験が中国人、ロシア人捕虜を対象に行われていたとされるものです。
生きたまま実験し、感染し、死んでいく様子を観察したとされています。
これについては、人体実験をしていた有効な証拠が確認されなかったことが、アメリカの調査で明らかになっているとして、人体実験自体がでっち上げだったと主張する説もあります。
当時、人体実験をした事実を証言した日本人がいたのですが、戦後、ソ連に何年も抑留されてからの証言である等の理由で、信憑性に欠けるとするのが、でっち上げ派の意見です。
本当のところはどうだったのか、考えることしかできませんが、でっち上げ説の方が無理があると私は考えています。
いずれにせよ、この話を学校で習ったという人は少ないようです。
真偽はわかりませんが、日本ではあまり知らされていないことが、外国ではみんな知っているようなことだったりします。
日本の歴史が、海外ではどのように認識されているのかを知ることは、視野を広げる意味でも、海外の人を理解する上でも大変有効です。
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なぜ広い視野が必要なのか 世界地図で考える
広い視点で歴史を見ることをしないと、いつか同じ過ちを繰り返すことになります。
戦争は絶対に繰り返してはならないと思っているだけでは不十分です。
緊迫した情勢で、人は集団心理に陥り、普段ではしない決断をしてしまうこともあるかもしれません。
日本は被害者であり、悪いことはしないと思っていては、いつか同じ過ちを繰り返すのではないかと思います。
偏った考えは、自分にとってもマイナスです。
外国の人や異なった背景を持った人の考え方、価値観を理解する上で弊害になるからです。
昔、私が銀行員になったばかりの頃、当時の頭取からの訓示で「世界地図で考えろ」と言われたことを思い出します。
会社にいた頃、偉い人の話で唯一記憶に残っている言葉です。
今や、世界との関わりの中で生きていかなくてはならないと仰っていたのだと思います。
日本だけのことを考えているだけでは不十分です。
公平な目で世界を見ることが大事です。
日本人とだけ付き合っていくわけにはいきません。
やろうと思えば可能なのかもしれませんが、自分の可能性を大きく縮めてしまうでしょう。
より広い視点に立ち、背景にある考え方を理解することが必要です。
日本の過ちや間違っている点、改善していくべき点を考えることができる人は、世の中の本質を見ることができる人です。
歴史から学ぶというのは、そういうことだと思います。
反省をするというより、歴史から学んだことを生かすことの意義が大きいのです。
幸いにも日本は言論の自由があり、色々な立場で意見を主張をしている人がいます。
主体的に情報をとり、自ら考えることで、そのような公平な視点を養っていくことが肝要ではないでしょうか。
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おまけ: スポーツと文化の偉大さ
他国の人が持っている歴史的背景を学ぶことは、国際的なコミュニケーションの機会が増えている現代では大変重要です。
その人の考え方、価値観、日本人に対する見方等は歴史認識が大きく影響を与えるからです。
しかし、そういった歴史認識の壁を感じさせないのがスポーツと文化です。
少し地元の話になり恐縮ですが、1999年、中日ドラゴンズが優勝した年、韓国三銃士と呼ばれた選手がいました。
リードオフマン李鍾範(リ・ジョンボム)、先発ローテーションの一角サムソン・リー、あとは任せた宣銅烈(ソン・ドンヨル)。
この韓国人3人が大いに活躍をしました。
ドラゴンズを優勝に導いた立役者です。
当時の少年にとって、彼らは間違いなくヒーローでした。
日韓関係、日中関係が悪くなっても、イボミ、セキユウティン(ともにゴルフ選手)は人気ですね。
また、文化面で言えば、日本のことを侵略者として教育を受けた中国人の中にも、日本のアニメの影響で日本を大好きになった人も多くいます。
武士道に魅せられて、海外から学びに来る欧米人もたくさんいます。
スポーツと文化は国の軋轢をも超える、ものすごい力があるのだと思う一幕でした。
スポーツと文化から、外国に興味を持ち、そのルーツや考え方を理解していくことも、素晴らしい方法です。
以上、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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