乃木希典から考える真のリーダー像、評価も分かれる名将の人格とは

乃木希典とはどんな人?

こんにちは!Jimmyです。

リーダーシリーズ、今回は明治時代に活躍した軍人乃木希典(のぎまれすけ)についてです。

 

「乃木大将」、「乃木将軍」などの呼び方で知っている人も多いのではないかと思います。

「乃木神社」や「乃木坂」も、この乃木希典にちなんでつけられた名前です。

 

最近では乃木坂46の方が有名なのかもしれませんが、乃木希典から学ぶことは非常に多くあります。

今回、改めて振り返ってみたいと思います。

まずは、参考までに、簡単な経歴を以下に記載します。

 

1849年長州藩の支藩である長府藩の藩士の三男として誕生。
11歳頃から漢文、漢詩に加え、軍事や剣術についても学び始め、文武両道に励んだ。
1865年第二次長州征討開始。対幕府軍の戦闘に参加し、山縣有朋指揮下で武功をあげた。
一時学者を目指すも、軍人としての人生を決意、以後秋月の乱(士族の反乱)を鎮めるなどの功績をあげた。
1877年西南戦争勃発。ここで、乃木軍は、連隊旗(錦の御旗)を西郷軍に奪われるという失態を犯す。自害を決意するも、児玉源太郎に見つかり、説得され思いとどまる。
1878年結婚。結婚後も、西南戦争での失態を悔やみ続け、半ば自暴自棄の状態で酒浸りの生活を送る。
1887年ドイツ留学。軍紀、軍人教育はじめ、ドイツ陸軍の全容を学んだ。これを機に、帰国後は以前の豪遊生活は一切止め、質素な暮らしをするようになり、ドイツで学んだ理想の軍人を自ら体現するかのように振る舞った。
1894年日清戦争勃発。乃木率いる歩兵第一旅団は、中国に上陸するや、一日で旅順要塞を陥落させるという功績をあげた。
1904年日露戦争勃発。第三軍司令官として再び旅順要塞へ挑む。約半年かけて、難攻不落と呼ばれた要塞を陥落させることに成功。戦争の局面を大きく前進させる功績をあげるも、日本軍の犠牲者も相当に出し、一部からは乃木への批判も巻き起こった。この戦争で息子2人が戦死。
日露戦争に勝利するも、多くの犠牲者を出した責任を感じパレードや勝利イベントへは一切参加せず。自害を申し出るも、明治天皇から、どうしても自害するなら、せめて自分が世を去ってからにしてほしい旨釘をさされる。
1907年学習院長に就任、教鞭を執る。
1912年明治天皇崩御。自宅にて妻と自刃して亡くなった。

 

簡単に、事実だけを見てみると、軍人のリーダーとして特筆すべき功績は、日清戦争、日露戦争における旅順攻略でしょう。

しかし、日露戦争の旅順攻略については、批判の声も少なくありません。

評価が分かれるところです。

 

日露戦争での功績は、世界でも知られるところとなっていますが、同じ陸軍での功績を見ても、

実際には、乃木の第三軍よりも活躍し、功績が大きいのは第一軍の黒木為楨の方ではないかと個人的には思います。

 

多くの人から神格化されている存在にしては、他の歴史に名を残した戦の名手と比べ、少し疑問に思うところもあるでしょう。

次にもう少し詳しく、乃木希典について見ていきたいと思います。

乃木希典は愚将だったのか

日露戦争で、乃木希典率いる第三軍の旅順要塞攻略について、批判の声も少なくありません。

短期での攻略を求められていたものの、実際には半年近くの時間を費やし、乃木軍だけで死傷者6万人超を出したと言われています。

 

事実、長期化するにつれて、政府からも乃木の更迭を求める声が上がりました。

自宅には抗議文書が二千通ほど届いたようです。

 

そして、乃木希典愚将説を決定づけたのは、やはり司馬遼太郎の「坂の上の雲」でしょう。

乃木を戦下手だと断言しています。

 

強大な旅順要塞を前にして、ひたすら正面突破にこだわり続けて、無意味な死傷者を出したこと、

業を煮やした満州軍参謀長の児玉源太郎が旅順に駆けつけ指揮をとり、作戦を変えて(203高地を攻める)一気に陥落させたという趣旨の書きっぷりです。

児玉源太郎と乃木希典を対照的に描いています。

 

ちなみに余談ですが、司馬遼太郎が本当にこきおろしているのは、作戦を立てる責任者である第三軍参謀長、伊地知幸介です。

これでもかというくらい無能扱いされています。

坂の上の雲の登場人物での酷評されている人をランキングにするなら、断トツでトップは伊地知幸介です。

 

乃木は作戦屋ではない。

伊地知を信頼して、伊地知の立てた作戦を拒否しなかったというように書いてある箇所もありました。

 

その後、坂の上の雲に異を唱える形で、乃木希典、伊地知幸介の作戦遂行を擁護する意見も出ています。

いくつかの本を読み、なるほどと思えるような箇所もあります。

 

実際はどうだったのか、はっきり結論づけることは難しいのですが、乃木の指揮が作戦という面では疑問が残るということは一理あるのかもしれません。

 

しかし、司馬遼太郎も、乃木の人格については、全く批判をしていません。

それどころか、乃木だからこそ、部下はどんな厳しい命令にもついてきたことに言及しており、人徳の高さは認めているのです。

 

司馬遼太郎により、乃木希典は愚将と描かれたとされる考えが多いようですが、私の感想としては、司馬遼太郎も、乃木希典を愚将とは位置付けていないように感じます。

作戦面では足りないところがあるものの、人を惹きつける力、振る舞い、人徳には賛辞が込められています。

そうでなかったら、伊地知幸介と同様の書き方をされているはずです。

 

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乃木希典

世界から賞賛された男、乃木希典

ここからは、実際に乃木希典が賞賛されている「人徳」について見ていきます。

これこそが乃木希典の魅力でありリーダーシップの源泉です。

 

敵将への配慮

苦労の末、日露戦争で旅順要塞の敵軍をなんとか降伏させた乃木軍。

ロシア軍の旅順要塞司令官(トップ)であったステッセルへの対応が世界から賞賛されました。

 

通常、降伏した敵将に対して情けがかけられるようなことはありません。

しかし、乃木は、敵将ステッセルに対して、要塞のトップとして国のために、最後まで立派に戦ったことに敬意を表しています。

 

対等に、且つ紳士的に振る舞い、敗戦側にも関わらず帯刀を許し、名誉を守ることに配慮しています。

対等な立場で撮影された写真は、世界中の記事に採り上げられ賞賛を得たのでした。

 

その後ロシアでは、敗将としてステッセルの死刑が確定しますが、乃木はわざわざロシアに書簡を送り、ステッセルがいかに立派に戦ったかを説き、死刑の撤回を訴えました。

最終的にステッセルは減刑(流刑)になり、死刑を免れました。

 

さらに、残されたステッセル家族のために、自分が亡くなるまで援助のための送金をし続けたということです。

こういった行動の背景にあるのが、日本の武士道なのでしょう。

 

ちなみに、ロシアとの戦争で、実の息子を二人亡くしています。

本当であれば、日本軍の将としても、そして親としても、憎き相手であるはずです。

 

このような、普通では考えられないような紳士的な対応が、世界の多くの国から賞賛され、日露戦争を代表する名将として評価されたのでした。

 

第三国の外国人記者への配慮

日露戦争において、乃木軍に従軍していたアメリカの記者ウォッシュバーンが、後に現地での乃木の振る舞いを振り返っています。

 

旅順は日露戦争で最も熾烈な戦いの場であったにも関わらず、記者たちへの対応はいつも紳士的で優しい、しかも武功を誇ることもなく、相手を批判することもなかったと振り返っています。

 

当初は、記者たちも、野蛮な東洋人の武将程度にしか認識していなかったのですが、気がつけば、多くがすっかり乃木のファンになってしまうという具合だったようです。

 

昭和の第二次世界大戦における日本のほとんどの軍人が世界から酷評ばかりされているのに対し、これほど他国の人から賛辞を送られた軍人はなかなかいないと思います。

戦争が終わり、記者との別れの際にも、お別れパーティーを開催し、詩が得意であった乃木は、見事な別れのスピーチを披露し、記者たちを感動させたと言われています。

 

部下への思い

乃木希典

日露戦争の舞台は、中国の東北地方です。

真冬は極寒の地となります。

私も、以前中国の東北地方に勤務した経験がありますが、真冬の夜などは、完璧な防寒具を着ていても、バスを待つのに10分もじっとしていられないほどの寒さです。

 

そんな中で、乃木は、将軍だけに届けられた専用の厚手の上着の着用を拒否し、さらに、食事も部下たちと同じものを食べていたと言います。

1日だけではなく、いつもそうしていたようです。

 

先ほど触れたように、日露戦争では、実の息子二人が戦死しています。

当初、乃木への配慮から、危険な前線から離れたところに息子が配置転換されました。

 

息子が自ら前線への再配置を申し出たところ、一番に許可したのが乃木自身だったと言われています。

 

結果として戦死してしまうのですが、他の部下たちがそのような姿を見て感銘を受けたのは言うまでもありません。

多くの部下が、乃木希典のためなら命を投げ打っても構わない状況だったと後年振り返っています。

先述の外国人記者も、部下の乃木への信頼と、忠誠心は目を見張るものがあったと振り返っています。

リーダー乃木希典の真髄

これまで見てきたように、乃木希典の人徳は誰もが認めているところです。

人がついてくるという意味において、疑いようもなく素晴らしいリーダーです。

 

エピソードからわかる、リーダー乃木希典の真髄は、無私無欲、覚悟、思いやり(誠意)の3つに表されると思います。

 

ステッセルに対して寛大な処置を取るように命令を下したのは明治天皇です。

第三国からの早期仲裁を前提に始まった戦争です。

外国人記者に対して印象操作という狙いもあったのかもしれません。

 

しかし、極限状態の戦争という状況下、部下のことや外国人記者のことを思いやったり、ましてや敵国の将軍に対してまでも思いやるということは、付け焼き刃の行動ではできません。

 

人間性がそのまま出るような状況下で、このような立派な言動ができるということに乃木のすごさがあります。

つまり、本性としての無私無欲、強い覚悟、思いやりなのです。

 

これらを感じた人たち、

部下であれば乃木に命を預ける思いでついていきました。

記者や第三国の人たちにも深い感銘を与えました。

そして、敵国からも英雄の扱いを受けました。

 

軍の作戦という面では、司馬遼太郎の指摘するような不足する部分もあったのかもしれません。

しかし、事実として、部下たちは厳しい状況下、乃木の元で団結を崩しませんでした。

そして絶対に攻略されないと言われていた旅順要塞を陥落させるに至りました。

 

乃木のリーダーとしての姿は、現代でも通じる大事な資質が詰まってるように感じます。

 

極限の状態でも人がついてくる、それを可能にするのは何なのか、真のリーダー像を考える良いお手本です。

 

最後に、明治天皇が崩御され、自刃した時に残した辞世の詩が大変印象的です。

日露戦争直後に、明治天皇から、どうしても自ら死ぬのであれば、自分がこの世を去ってからにしなさいと言われて思いとどまった約束を果たしたということでしょう。

 

「うつし世を 神去りましゝ 大君の みあと志たひて 我はゆくなり」

 

「天皇が崩御されたから、それを追って私も去くとしよう」という意味になりますが、

乃木希典の生き様を考えながら、不思議と何度も繰り返して詠んでしまうような印象的な和歌です。

 

無私無欲、覚悟、思いやりに加え、このような詩的センスも乃木の魅力を更に高める要因になっているように思います。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

乃木希典についての書籍はこちらを参考にしてみてください。

意見はわかれるところですが、様々な見方を理解することで気づくこともあります。

注目すべき歴史上の人物について、以下の記事も参考にしてみてください。

リーダー像、生き様から多くの学びがあります。

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