ダメな上司が組織に与える影響
こんにちは!Jimmyです。
素晴らしいリーダーが素晴らしい人間を育てるように、ダメな上司は、部下にマイナスの影響を及ぼします。
今回は、ダメな上司の特徴と、組織に与える悪影響の大きさについて書いていきます。
フランチェスカ・ジーノというハーバードビジネススクールの教授が、
数多くの経営者やリーダーに対して講義を実施し、研究してきた数々の結果をもとにまとめられた「イヤなやつほど仕事がデキる」という著書を参考にしています。
著書では、抜群に仕事がデキる人たちを「反逆者」と呼び、なぜ大きな成果を生み出せるのかについて書いてありますが、
これは裏を返して考えると、仕事ができない人、ダメな上司の特徴をそのまま言い当てることができると感じました。
仕事がデキる人たち、成功者、リーダーの特徴は実に様々です。
本書で述べられていることに限らない成功者やリーダーもいるように感じますが、
ダメな上司については、本書で書かれているデキる人の真逆の性質が見事に当てはまります。
本書の内容を参考にしながら、ダメな上司の決定的な特徴について紹介します。
会社を辞めた社員の7割は上司で説明がつく
人が、持っている能力を存分に発揮し、高い効率性と成果を発揮するためには、「意欲」という要素が欠かせません。
数多くの著書やセミナー等でも、モチベーション管理の重要性が叫ばれています。
後で紹介する、仕事がデキる人が持っていて、ダメな上司に欠けている5つの資質も、全てこの「意欲」に繋がる道筋と言えます。
リーダーとして、上司として、部下の意欲を高めることは、組織を成功に導くためには不可欠です。
とりわけ、上司の言動が部下に与える影響は非常に大きいウェイトを占めます。
「ダメな上司なんて気にしなければいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、実際には大きな影響を受けざるを得ません。
アメリカの世論調査や人材コンサルティングで有名な、ギャラップ社の研究によると、社員の意欲は上司によるところが大きく、
「会社を辞めた社員の原因を説明するのに、70%以上は上司で説明がつく」と報告しています。
もちろん、上司が原因だと正直に言って辞めていく人は少ないため、上司も気づかないのです。
同社の調査によると、意欲のある社員の割合は、アメリカでは32%という結果です。
7割近くもの社員は意欲が乏しいか、全くない社員ということになります。
各社それぞれ、様々な施策を実施し、社員の意欲向上に努めているはずですが、それだけ、意欲を高めることは難しいことなのだとわかります。
さらに衝撃的なのは、日本では、意欲の高い社員の割合は、なんと6%という結果です。
日本では、世界から賞賛されるような素晴らしいリーダーが非常に少ないと言われていますが、
まさにこの結果の通り、社員の意欲を高めることができないリーダーが多い、
つまり、ダメな上司になってしまう人が多いと考えられます。
仕事がデキる人が持つ特徴
ここでは、参考図書「イヤなやつほど仕事がデキる」の中で紹介されている、仕事がデキる人間、イノベーションを起こすことができる人たちが備えている資質を列挙します。
- 新奇性
- 好奇心
- 客観性
- 多様性
- 偽りのなさ
先ほども書いた通り、これらの資質は、全て意欲へと繋がる道筋となります。
これらを兼ね備えている人は、自分自身の意欲も、そして周りの人の意欲も高めて組織としてフルに力を発揮できるように動ける人です。
本書では、「反逆者」と呼んでいますが、常識や、旧習に疑いを持ち、真に効果的な方法や新しい方法を生み出していくことから、このように例えられています。
ダメな上司の特徴
真のリーダーは自分だけではなく、周りをモチベートして、組織としてプラスの方向に導くことで、大きな力を発揮します。
上に挙げた5つのデキる人の資質と真逆の性質を考えると、組織にマイナスの影響を与え、部下の意欲を低下させるダメな上司に当てはまる特徴になります。
以下に詳細を解説します。
新奇性が無い
デキる人は、新奇性に注目し、挑戦することに対して積極的です。
新奇性のあることをすると、満足度も自信も高まり、創造性とパフォーマンス向上を促すことがわかっています。
つまり、自他ともに意欲を高めるためには、意識して新奇性のあることに挑戦した方がよいということです。
仕事のデキるリーダーは、新奇性に挑戦する効果を知っています。
あるファーストフードチェーン店では、新奇性の対極である、「決められた単純反復作業」をなくすために、
敢えて、毎日持ち場を変えて、更にその日の担当作業を直前まで教えないようにしています。
離職率の低さや、利益率、効率性に関する指標は同業界の大手を上回る水準になっているようです。
人は誰でも、赤ちゃんの頃は、新しい発見があれば、それに大変興味を示し、新しいことをどんどん取り入れようとします。
二つの選択肢があれば、必ず新奇性のある方を好んで選びます。
これは、人間が成長していくための本能です。
しかし、年を重ねるごとに、このような行動をしなくなります。
大人になるに従い、新しいものに挑戦しなくなる傾向があります。
新奇性への挑戦の大敵になるのが、伝統や、決められたルール、安定を好む心理です。
成功する確率が50:50なら、利益(メリット)が今の2倍になるくらいインパクトがなければ動かないのが普通です。
昔からあったやり方は、先人たちが見つけてきた一定のメリットがあるはずなので、それを敢えて捨てることはしないのです。
こんな実験があります。
2つのグループに対して、人が服を畳む映像を見せます。
一方は無駄のない正しい畳み方、もう一方は意図的に無駄な動きを織り交ぜた畳み方です。
服の畳み方を映像で見てから、2つのグループは、実際に畳むことを求められるのですが、
無駄な動きがある映像を見たグループは、それをそのまま真似をする人が一定数はいたのです。
つまり、非効率的な畳み方をして時間を無駄にしてしまったのです。
デキるリーダーは、常に新奇性を求め、常識にとらわれずに挑戦し、自分と部下の意欲を高める効果を享受しています。
一方、ダメな上司は、まさに既存のルールや、慣習を疑うこともなければ、それを敢えて変えることにリスクを冒そうとはしません。
非効率な服の畳み方を、疑うことなくずっと続けさせるタイプです。
リスクがあるような新奇性に富んだことを部下が提案しようものなら、激しい拒否反応を示します。
好奇心が無い
好奇心が旺盛な人が、イノベーションを起こし、大きな成功を収めてきた例を私たちは数多く知っています。
様々なことに好奇心を持つべきということを、疑う人はいないでしょう。
好奇心を解放すれば、状況をポジティブに捉えやすくなります。
好奇心はストレスへの防御反応を弱め、挑発への攻撃反応も弱めます。
こんな実験があります。
様々な被験者に、4週間、日常で起こったことを日記につけてもらい行動を調べました。
結果、不確実な要素を受け入れやすい人ほど、
友人と対立が少なく、
不満や怒りを直接示さず、
相手の無礼を進んで許す傾向があることがわかりました。
好奇心によって、探究心が刺激され、他人と積極的に関わろうとする意識が強いため、他の重要ではないことは気にしないのです。
仕事で、部下の好奇心を引き出すような環境を作るためにはリーダー、上司の言動が肝要です。
ほんの少しの言動で、成果、パフォーマンスは変わります。
再度実験の例を示します。
化学の先生を集め、
「ある化学液に、レーズンを入れた際の反応を観察する」というテーマで子供たちに授業を行ってもらいました。
先生のグループを2つに分け、1つのグループには、
「授業の目的は化学の面白さ伝えること」と話し、
もう一方の先生のグループには、
「実験結果のワークシートを完成させることが目的」だと伝えました。
なお、生徒にはあらかじめ、指示通りにレーズンを入れた後は、指示に無い、あめ玉を化学液に入れるよう指示しています。
指示していないことをした生徒を発見した先生の反応が、2つのグループで全く異なっていました。
化学の面白さを伝えることが目的と指示された先生たちは、
「では、あめ玉ではどうなるか見てみよう」と、実験を続けさせ、生徒の好奇心を支持しました。
ワークシートを完成させることが目的だと指示された先生たちは、
「今はそんなことをする時間ではありませんよ」とやめさせました。
この実験における先生は、経営層から指示を受ける部下(中間管理職)にあたり、子供たちは現場で働く社員と考えればよいでしょう。
好奇心を持てるように組織を動かすことができるか否かは、リーダーの言動一つで大きく変わります。ダメな上司は、意欲を高めるための好奇心を育てることができません。
客観性が無い
プレッシャーがかかったり、追い込まれたりすると、視野が狭くなり、考えの選択肢も少なくなります。
広い視野で考えることが大事になりますが、
そのためには、「何をするべきか」を考えるよりも、「何ができるか」を考えると視野は広くなります。
学生に対して行われた実験があります。
ある問題が発生した状況を説明した後、学生を3つのグループに分け、それぞれ、
「どうするべきか?」、「あなたならどうする?」、「何ができるか?」
と問いかけたところ、斬新で効果的なアイデアは「何ができるか?」と問われた学生のグループに多く生まれたという結果があります。
客観的な視点に立ち、広い視野を持つことができれば、「何ができるか?」に集中し、集団の議論も活発化します。
しかし、問題は、権力意識です。
権力意識を持つと、集団内で自分の意見や方針を積極的に発言するだけでなく、他人の視点や意見、貢献を軽んじる傾向があることが研究から明らかになっています。
人は組織で出世の階段をのぼるうちにエゴが肥大化し、自分の誤りを裏付けするような情報に脅威を感じるようになります。
権力意識を持つと、部下の考えを受け入れにくくなります。
その代わり、上の人の意見は無条件に従ってしまいます。
客観性に欠け、判断基準が本来の目的から大きく逸脱します。
多くのダメな上司の判断軸は「保身」に落ち着くのです。
大学の授業でも、経験豊富で偉いとされている教授の方が、学生からの意見を聞こうとしない傾向にあるそうです。
ダイエット中、体重計に乗ったとき、思ったよりも重かったら、体重計が壊れているのではないか、片足に体重をかけ過ぎたのではないかと疑うのに対し、望んだ通りの結果が出たら、気分良くシャワーに行くことでしょう。
望んでいない状況を拒否したがるのは、多くの人に共通します。
意見を軽んじられた部下からすれば、当然士気は落ちます。
優れたリーダーは、権力を誇示したりしがみついたりせず、客観的に見て目的を達成しようとする意識が強くあります。
意識的に広い視野を持ち、目的に集中します。
客観性と広い視野を持つことが訓練されていれば、問題解決力も上昇します。
賞金を出して新しいアイデアを募集したところ、専門外の人から画期的なアイデアが出ることは珍しいことではありません。
「高分子化学」という難しそうな分野で、アイデアを募集したところ、5件が採用(賞金獲得)されました。
専門分野の領域である工業化学者は一人だけで、あとは、獣医、農業経営者、輸送システムの専門家、天体物理学者だったようです。
専門外の人は既存の見解や常識に固執せず、誰かの論理を守る必要もないため自由な発想ができるのでしょう。
ダメな上司は、判断基準の背景に保身があり、客観性に欠け、目的に集中しません。
部下の士気を下げ、組織の問題解決能力も奪ってしまいます。
多様性が無い
デキるリーダーは多様性がもたらす効果を理解しているのに対し、ダメな上司は多様性を受け入れられません。
多様性を受け入れられないのは、同じ感覚の人が周りにいる方が心地がよく、意思疎通がスムーズで、生産性も高いと考えられるからです。
しかし実際は逆です。
多様性が組織や国、地域社会、集団にもたらすメリットは研究により明らかになっています。
506社のデータを分析した2009年の研究によると、性別多様性、人種多様性の高い企業は利益水準が高いことがわかっています。
別の研究では、職歴と学歴が多様な経営チームほど、革新的な商品を考案したという結果を発表しています。
ある実験で、帰属意識、類似感が強い、ある会員制の組織の中で殺人ミステリーの推理を実施しました。
初めは自分で考え、その後3人チームを組み議論します。
一定時間後、新たに一人が加わるのですが、半数のチームには、その会員組織のメンバーが、
もう半分は全く別の組織の人(つまり帰属意識も類似感もない人)が加わります。
後で調査を行ったところ、同じ組織のメンバー同士のグループの方が、効果的な推理ができたと答える人が多くいました。
しかし、実際の正解率は、別の組織のメンバーを入れた場合の方が2倍も良かったのです。
意思疎通や、やりにくさはあっても、新しい視点や視野で考えざるを得ないため、発想が広がるのです。
感覚的には、難しい、有効的ではないと感じますが、その難しさこそ、効果と成長を生みます。
優れたリーダーは、多様性を積極的に受け入れます。
対立が成長を生み、不一致は集団の欠陥ではなく、広い視野を与えてくれることを理解しています。
多様性は、人の考えに建設的な方法で疑問を投げかけます。
実際に話し合う前から、多様な人たちとのセッションだとわかった時点で、多様な視点を考慮するように促され、より入念な準備をし、独創性を発揮し、深く考えるようになります。
ダメな上司は、居心地の良い環境を重視し、Yesマンを重用し、多様性と対極の状況を作り出します。
同じような感覚の人以外は排除し、有効に人材を活用できません。独創性も、生産性も改善することはありません。
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正直さが無い
自己開示をしっかりできるのが優れたリーダーの特徴です。
例えば、経営陣が弱さや、本音をさらけ出したほうが共感を得ることができます。
従業員からの好感度も上がり、意欲も上がります。
名経営者の多くは、自分の至らぬ所をはっきりと周りに伝え、アドバイスを求めます。
役職問わず、現場にも耳を傾けます。
それを見て意欲を掻き立てられた社員こそ、組織の力であり、競争の源泉になります。
しかし、弱さにつけこまれたくないと考えるダメな上司は、自分を偽り、正直な自己開示ができません。
自己開示をしないばかりか、責任や問題の所在を全て他人に押し付けようとします。
自分を偽るとモチベーションが低下するという研究結果もあります。
レッドソックスファンの被験者に、ヤンキースとレッドソックスのリストバンドをつけてもらいました。
(この2つのチームは、伝統的にライバル視されているメジャーリーグの名門球団です。)
氷水に長く手をつけていれば賞金が出ることを伝え、我慢大会をしてもらいました。
結果は、不本意にも敵視するライバル球団のリストバンドを付けさせられた人たちの方が、水につけていられる時間は短かったという結果が出ました。
自分に正直に、弱さもしっかり開示できるリーダーは、意欲も高く、組織全体の意欲を高めることができます。
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最後に
これまで書いてきた通り、ダメな上司の特徴は、優れたリーダーが持っている5つの資質の真逆をいくケースが多く当てはまります。
一方で、これら5つの資質(新奇性、好奇心、客観性、多様性、偽りのなさ)を身につけ、日常で実践することは簡単なことではありません。
そのため、意識的にこれらの資質の効果を理解し、強い意志で実践を繰り返す必要があります。
今回、参考図書の力を借り、多くの実験結果を記しているのも、これらの資質を持つことの効果を強調するためです。
難しい資質だからこそ、世の中には、これだけ多くのダメな上司と言われる人が存在し、
ネット掲示板や居酒屋さんでは、嘆き合戦、愚痴合戦になっているのです。
私たち現役世代に求められていることは、時間をかけてでも、これらの資質を習得すべく実践を繰り返し、組織を活性化し、幸福感のある職場を作るリーダーになることではないでしょうか。
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